ワニが しごとに でかけます
- 出版社:
- BL出版
絵本紹介
2025.10.03
朝の支度をして、街のなかへ歩き出す。いつもの人、いつもの雑踏をぬけて、ワニが仕事にでかけます。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『ワニが しごとに でかけます』。子どもはもちろん、大人も楽しい、イタリア発の文字なし絵本。いったいどんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
朝目が覚めると、今日もワニの一日が始まります。身支度をし、朝食をとり、帽子をかぶって……
満員の地下鉄に乗って、仕事場へ向かいます。
コマ割りを中心とした表現で、すみずみまで細かく描き込まれた絵には文字がなく、目で追っていくだけでストーリーが浮かびあがってくるこの絵本。
穏やかに過ぎていく日常の風景をじっくり味わっていると、ふいにやってくる皮肉の効いた驚きの展開。あまりにも当たり前な振る舞いを見せるワニや登場人物たちの様子に思わず笑ってしまうのです。
絵を描いているのは、前作『まよなかのゆうえんち』でケイト・グリーナウェイ賞の中でも子どもたちによって選ばれるシャドワーズ・チョイス賞2022に輝くなど、いま世界でも注目の作家マリアキアラ・ディ・ジョルジョさん。ワニの部屋の家具や食卓、服装から、その趣味や生活が見えてきます。街の様子からは、あらゆる人々の一日の始まりが見えてきます。さらに詳しく絵を読んでいくと、最初には気が付かなかった誰かさんのサイドストーリーも見えてきます。
子どもはもちろん、大人も楽しい、イタリア発の文字なし絵本。時にはうっとり、時にはじっくり。想像力を働かせながら何度でも読み返してみてくださいね。
どちらがワニらしいワニ?
人々が生活する街の中で、いかにも充実した暮らしを送っているように見えるワニ。気になるお店をチェックし、顔なじみとあいさつを交わし、満員電車をなんなくやり過ごす。一方で、仕事場でのワニはどうだろう。途端に雰囲気は変わり、細かな一切のことを気にせず、のびのび堂々とした姿を見せるのです。うーん、どちらがワニらしいワニ? いえいえ、どちらも魅力的。誇りを持った生き方をしているようで……というのは、私の勝手な解釈。さて、あなたはどう読むのでしょう。
この書籍を作った人
ミラノで児童書専門の出版社Topipittoriを設立し、編集者、作家、アートディレクターとして活躍。子どもを対象とした文化に関する研究も行っており、雑誌への寄稿や講演会などを通じて発表している。絵本に『グーグー スースー』(そうえん社)『かぞくのいちにち』(いのちのことば社)などがある。ミラノ在住。
この書籍を作った人
ローマのヨーロッパ・デザイン学院とパリの国立高等装飾美術学校でイラストレーションを学び、在学中から、映画や広告の絵コンテ・コンセプトデザイナーとして働きはじめる。絵本に『どれもみーんなアントニオ!』(山烋)、“Professione coccodrillo”“La zuppa Lepron”などがある。イタリア・アンデルセン賞2022の最優秀イラストレーターに選出。ローマ在住。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。