『銀河の図書室』(作 名取佐和子)は、この夏の第71回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」の「高等学校の部」に選ばれた1冊。
「課題図書」に選ばれた「選定理由」によると「先輩の不登校の謎にせまるため、宮沢賢治の作品を読み解く過程に賢治へのオマージュが込められ、登場人物たちそれぞれが抱えている背景から、さまざまな角度の読書感想文が期待できる。」とあります。
主人公は高校2年の高田千樫、通称チカ。彼は友人の石館恭平、通称キョンヘと二人だけの高校のイーハトー部の部員。
入学式のあとの新入生の部活の勧誘の場面から物語は始まります。
すぐさま入部してきたのは、増子耶寿子、自らマスヤスという呼び名を申告するほど活発の女の子。
で、イーハトー部でどんな同好会かというと、宮沢賢治の作品を読んだりするもので主な活動の場は図書室。
実はこの部に3年生の風見君がいるが、チカに「ほんとうの幸いは遠い」というメッセージを最後に不登校になっている。
風見先輩を慕うチカは、先輩がどうして不登校になったのか、そしてあのメッセージの意味はと問い続ける。
といっても、この物語はミステリー、謎解きではない。
主人公たちそれぞれが持っている悩みや秘密が、宮沢賢治の作品を媒介にして明らかになっていくが、それこそ青春を生きる若者たちが多かれ少なかれ持っているものだろう。
だから、彼らに共感し、そして癒されていく。
宮沢賢治の作品だけでなく、中高生に読んでもらいたい本もさりげなく紹介されていたりして、夏の読書のガイドブックとしてもうれしい一冊。