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この絵本、しみじみと読みました
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投稿日:2025/11/16 |
絵本作家・飯野和好さんは1947年に埼玉県の秩父の山間で生まれました。
そこはたった3軒だけの集落でしたが、とても自然豊かなところでもありました。
そんな少年時代の思い出を、飯野さんは絵本『ぼくとお山と羊のセーター』(2022年)で描いています。
この『ぼくのおじいさん』はその姉妹編で、
先の作品と同じ、飯野さんの少年時代一緒に暮らしたおじいさんの姿が
とても生き生きと描かれています。
明治生まれのおじいさんは、マムシをつかまえるのがうまかったり、
きのこがたくさん生えている秘密の場所を知っていたり、
山の空気で天気がわかったりする、すごい人なのです。
木刀のつくり方を教えてくれたりするやさしい人でもありますが、
いたずらが過ぎると「このバチアタリがあ!!」とすごい顔で怒る人でもあります。
この時におじいさんの怒った顔が、絵本見開きいっぱいに描かれていて、
おっかないのに、どこか笑えてくるのは、飯野ワールドの魅力でしょう。
おじいさんが暮らしのいたるところにいる神様をとても大事にして暮らしていて、
そういえば昔は「カマドの神様」みたいな身の周りの神様をみんなが大事にしている、
そんな暮らしが普通にあったことを思い出しました。
決して豊かではないけれど、幸福であったこと。
いつの間にか、そういうものをなくしてしまっていることを、この絵本は思い出させてくれることでしょう。
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甲斐信枝さんならではの小宇宙
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投稿日:2025/11/09 |
甲斐信枝さんが描く絵本のファンは多い。
2023年11月30日、93歳で亡くなった甲斐さんは、
その晩年の2016年には里山で植物や虫たちと向き合う姿がドキュメント番組になるなど、
「足元の小宇宙」を見つめる絵本作家として評価が高い。
じっと見つめることで、世界の真実が見えてくる。
そんな絵本作家だろう。
そんな甲斐さんが描いた『きゃべつばたけのぴょこり』は、2003年に発表され、
2017年に「幼児絵本ふしぎなたね」シリーズの一冊として絵本になった作品。
「ぴょこり」というのは、きゃべつの葉の裏についている不思議な形のもの。
アリだとかかめむしとかがたたくと、ぴょこりと動く、変なもの。
さあて、これは何だろう。
実は、そのヒントが絵本の最初にちゃんと描かれている。
「きゃべつばたけにちょうちょがたくさんいる。」
そう、ぴょこりはちょうちょのさなぎ。
甲斐さんはさなぎからちょうちょが羽化するさまもちゃんと描いていて、
羽化したてのちょうちょがそれでもなかなか飛び立たないことも描いている。
おそらく実際その様子を観察しないと描けない世界だ。
子どもたちは甲斐さんの絵本から、土の匂いとか虫たちのささやきとかを体験できるはず。
私たちの世界はそんな生き生きとしたものたちと共にある。
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ひぐまのことをもっと知ろう
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投稿日:2025/10/26 |
最近クマによる被害をたくさん目にします。
人が襲われ亡くなることもあったりして、猟銃による駆除も行われたりします。
あべ弘士さんの『ひぐま』という絵本には、
ひぐまをもっと知るための、「ひぐましつもん箱」という挟みこみリーフレットがついていて、
その中にこんな一文があります。
「母子グマや若いクマは町の近くにやってきて、ときどき事故になったりします。
クマにとっても、人間にとってもむずかしい問題です。」
クマの生態をよく知ることも、「むずかしい問題」を解決する糸口になるように思います。
あべさんの絵本『ひぐま』は、北海道に生育するひぐまの、
秋から冬にかけての母グマの様子を描いた作品です。
母グマは秋になるといっぱい栄養を摂って冬眠にはいります。
何故栄養をたくさん摂るかというと、冬眠中に出産し、穴倉の中で小さい子グマを育てるからです。
静かな冬の、暗い穴倉で母グマと子グマの会話のなんと微笑ましいことか。
春を待ちわびる気持ちが伝わってきます。
そして、春。
子グマたちが初めて目にする地上の世界の、なんていう美しさでしょう。
やはりこういう絵本を読んでみると、
人間とクマの関係が「むずかしい問題」であればこそ、
なんとかそれを解決できることを願うしかありません。
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ノーベル文学書受賞以前の童話
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投稿日:2025/10/22 |
ハン・ガンさんは2024年にノーベル文学賞を受賞した作家で
韓国人で初めてで、アジア人女性初めてで、1970年代生まれで初めてと初めて尽くしで、
受賞後その作品は日本でもベストセラーになった。
そして、この『涙の箱』は、そんなハン・ガンが描いた大人のための童話として
2025年8月に刊行された美しい一冊だが、
韓国で出版されたのが2008年ということだから彼女にとっては初期の作品になるだろうか。
そういう意味では、ハン・ガンの入門書として入りやすいかもしれない。
彼女がノーベル文学賞を受賞した際の受賞理由に、
「人間の命のもろさを浮き彫りにする詩的散文」という一節があったようだが、
この作品こそその「詩的散文」の力が遺憾なく発揮されているといえる。
登場してくるのが、まわりの人たちから「涙つぼ」とからかわれるほど涙がとまらない女の子。
この子の涙がとても貴重だと、彼女の前に現れるのが「涙を集めている」おじさん。
おじさんが探しているのは「純粋な涙」。
女の子の流す涙はきれいだけれど、本当の「純粋な涙」ではないとおじさんはいう。
彼女の涙が「純粋な涙」になるには、もっと時間が必要だと、おじさんは教える。
もしかしたら、ハン・ガン自身この童話を書いた時、
彼女自身がそう思っていたのではないだろうか。
もっと自分を鍛える、時間が必要だと。
この童話から10年以上の時を経て、ハン・ガンはノーベル賞作家となったのだから。
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納豆はネバネバがいい
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投稿日:2025/10/19 |
昭和30年代の頃、まだ納豆は関西ではなじみがありませんでした。
関西で納豆といえば、ほとんどの人が「甘なっとう」を思い浮かべたものです。
初めてあのネバネバの納豆を口にしたのは小学六年の頃で、昭和40年代のはじめでした。
なんだ? この食べ物は?! 子供心ではありましたが、ぶ然としたものです。
それが今ではどうでしょう。
こんなにおいしいとまではいいませんが、食べ物としての万能力を感じるまでになりました。
納豆、イケます。
そんな納豆を絵本にしたのが、わたなべあやさんの『なっとうぼうや』。
わたなべあやさんは埼玉県出身の絵本作家で、
食べ物を主人公にしたユーモアのある作品を数多く描いている人気作家。
実はこの『なっとうぼうや』は2004年に出した単行本デビュー作で、
今回(2025年9月)その新装版として刊行されました。
キリンののったくんが朝ごはんのしたくをしていると、
納豆のパックから歌が聞こえてくる。
♪ネバネバ ネバネバ なっとうぼうや おてて つないで ネバネバよ
そして、なっとうぼうやたちが家から町へ飛び出して、大騒ぎ。
でも、なっとうぼうやたちの歌に合わせて、みんなが笑顔になるから不思議です。
単行本デビュー作が20年ぶりに新装版として刊行されるのですから、
絵本の人気もネバネバ、ネバネバ。
みんなを笑顔にしてくれる、そんな絵本です。
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結局気になるのはお父さんの働くところ
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投稿日:2025/10/12 |
もう随分以前のことになりますが、ほとんど家にいないお父さんの職場を見ようみたいな試みがありました。
子供たちがお父さんの職場を訪れ、働いているお父さん素敵! みたいな。
ああいうことは今でもされているのだろうか。
最近ではお母さんだって、外で仕事をしていることも多いから、
見るんだったらお母さんも職場も見ないといけない。
中川ひろたかさんが文を書き、村上康成さんが絵を描くという
絵本界のゴールデンコンビによる『おまわりさんのきゅうじつ』は、
そんなお父さんの職場見学とは真逆のお話。
自分たちの身近のいる人、例えばおまわりさんとか消防士さん、お医者さんに園長先生といった人たちが、
休日をどんなふうにして過ごしているか、こっそりのぞいてみる、面白い発想の絵本。
真面目なおまわりさんが休みの日には家族でレストランに行ってチョコレートパフェを食べていたり、
園長先生の休みの日はお孫さんの世話でてんてこまいだったり、
消防士さんは休みの日にはキャンプ場でたきびをして楽しんでいたり、
思わずふふふとなってしみます。
そして、おしまいはやっぱりお父さん。
休みの日は遊んでくれるけど、いつも疲れたといってすぐ寝転がってしまうそんなお父さんだけど、
仕事の時は何をしているのかな。
そして、わかる、かっこよく働いているお父さんのこと。
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若い人ときちんと向き合える大人になっただろうか
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投稿日:2025/10/09 |
2021年に刊行された伊集院静さんの人気エッセイ「大人の流儀」の10巻め、『ひとりをたのしむ』の中で、
自身の短編が絵本となって多くの読者を得たことを喜んでいる一節があった。
その本が『親方と神様』で、絵本や児童書の出版で定評のあるあすなろ書房から2020年に刊行された。
よく目にする単行本の判型ではないが、絵本というよりも児童書と呼んだ方がすっきりする。
もちろん、折々に入る木内達朗さんの挿絵も魅力ではあるから。それも楽しめる。
物語は「まだ町や村のどこかに鍛冶屋があった時代の話である」という文章から始まる。
最近では鍛冶屋といってもドラマや映画で見かけることはあっても
なかなか実際目にすることはない。
鋼と火を相手の職業に後継者も見つからないということであろうか、
それはこの物語の時代でもそうだった。
鍛冶職人として人生の大半を過ごしてきた六郎の前に、鍛冶職人になりたいという少年が現れる。
そんな少年の先行きを案じる母親が六郎のところを訪れ、
その夢をあきらめさせて欲しいと頼みに来る。
六郎は悩む。悩みながらも、この年になって純粋な目をした少年に会えたことに感謝している。
そして、かつて弟子入りしたばかりの六郎を連れて親方が連れていってくれた山間の神社へ少年とともに足を運ぶ。
そこで六郎はこんなことを少年に話す。
「今はすぐにできんでもひとつひとつ丁寧に集めていけばいつか必ずできるようになる」
それは六郎の親方の言葉でもあった。
これから大人への道を歩もうとする若い人へ、何をどう伝えていくか、
それこそ大人の器量だし、大人の流儀が試されるのだろう。
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新しい世代がつなげてくれた
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投稿日:2025/10/05 |
今年(2025年)は「戦後80年」ということで、出版界でも多くの関連本が刊行されています。
それは新書であったり人文系の書籍に限ったわけでもなく、
長田真作さんのこの『赤い日 じいちゃんの見た戦争』のように
絵本でもあの戦争を振り返る作品が出版されたりしています。
長田さんは1989年生まれですから、もちろん先の太平洋戦争のことは知らない世代です。
その戦争を、そして長田さんの出身地である広島・呉市を襲った空襲を経験したのは、
副題にあるように長田さんの祖父です。
あの戦争を体験した世代から、すでに次の、さらに次の世代になっていることに
少し驚きすら感じますが、
そんな若い世代がちゃんと祖父の話を聞き、それを記憶し、こうして絵を描き、文を綴る。
こういう若い人がいることを心強く思います。
長田さんの祖父は病気で入院していた頃、まだ少年だった長田さんに、
「お前が聞かんかったら、話すつもりはなかったんじゃがのう」と言いつつ、
軍港都市であった呉を襲った空襲での悲惨な体験を話し始めます。
おそらく、日本全国であの戦争での話を語ることなく亡くなっていった多くの無名の人たちがいたでしょう。
そういった語られなかった声も含め、もっとあの時代の話に耳を澄ませるべきだと、
この絵本は教えてくれています。
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おとなのあなたに読んで欲しい絵本
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投稿日:2025/09/28 |
読書の普及の推進で文化の向上と社会の進展に寄与する目的で結成された読書推進運動協議会は、
毎年成人の日と敬老の日に合わせて、「読書のすすめ」というリーフレットを作成しています。
2025年の「敬老の日読書のすすめ」の中の一冊として紹介されていたのが、
スージィさんの『さんにんだけのないしょのはなし』。
リーフレットで「関西弁ではずむ三人の会話とファンタジックな絵が魅力」と紹介されていて、
これは第40回日産童話と絵本のグランプリ絵本大賞受賞作品で、つまり絵本ですが、
絵本だといって子供だけが読むものでもなく、
ましてやこの絵本の登場する三人の女性はすっかり老女なのです。
つまり内容は大人の、それもシニアの人の心にぴったりとはまる絵本なのです。
みっこちゃん、トラちゃん、タエちゃんは幼馴染の仲良し。
今はお年寄りのための家で暮らしています。
そんな三人がある日、庭を抜けて竹林の中に入っていきます。
この竹林の絵を「日本画を思わせる」と絵本作家の黒井健さんは評していますが、
竹林だけでなく作者のスージィさんが草花を描く力量はしっかりしていて、
そのあたりも大人の読者を満足させるでしょう。
竹林を抜けると、なんと三人は懐かしい子供の頃に戻っています。
三人が体験したのは夢でしょうか。
もしかしたら、誰もがそんな竹林をもっていて、懐かしい子供時代に戻れることができるのかもしれません。
そんなことを気づかせてくれる、そんな絵本です。
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みんなが好きなアンデルセンってこんな人
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投稿日:2025/09/14 |
アンデルセンは子供の頃には必ず耳にする名前です。
正式には「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」、
1805年デンマークに生れた童話作家です。
日本でいうと江戸時代、徳川家斉が将軍だった頃の人となります。
彼の代表的な作品をあげると、
「みにくいあひるの子」「マッチ売りの少女」「はだかの王さま」、
まだまだあって生涯つくったお話は150話以上。
しかも、アンデルセンはそのほとんどを自身が創作した作家です。
彼の作品は今でも読まれ、愛されていて
その証拠にこの『まるでむかしばなしのような―ハンス・クリスチャン・アンデルセンの一生』のように
彼の生涯がどんなものであったかを描く絵本が生まれています。
しかも、文を書いたジェイン・ヨーレンさんも
絵を描いたブルーク・ボイントン・ヒューズさんもアメリカ在住の人ですから、
いかにアンデルセンが世界中で愛されているかがわかります。
アンデルセンが亡くなるのは1875年。
70年の生涯で愛した女性もいたようですが、結局独身のままでした。
この絵本の巻末に解説にような短い文章が載っていますが、
その最後の一節「ハンスは1875年に自宅で孤独のうちになくなった」とあって、
それこそ、「まるでむかしばなし」のような終わり方です。
この絵本でアンデルセンに興味を持った人は、
もう少し詳しい伝記なりを手にするといいでしょう。
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