最近クマによる被害をたくさん目にします。
 人が襲われ亡くなることもあったりして、猟銃による駆除も行われたりします。
 あべ弘士さんの『ひぐま』という絵本には、
 ひぐまをもっと知るための、「ひぐましつもん箱」という挟みこみリーフレットがついていて、
 その中にこんな一文があります。
 「母子グマや若いクマは町の近くにやってきて、ときどき事故になったりします。
 クマにとっても、人間にとってもむずかしい問題です。」
 クマの生態をよく知ることも、「むずかしい問題」を解決する糸口になるように思います。
 あべさんの絵本『ひぐま』は、北海道に生育するひぐまの、
 秋から冬にかけての母グマの様子を描いた作品です。
 母グマは秋になるといっぱい栄養を摂って冬眠にはいります。
 何故栄養をたくさん摂るかというと、冬眠中に出産し、穴倉の中で小さい子グマを育てるからです。
 静かな冬の、暗い穴倉で母グマと子グマの会話のなんと微笑ましいことか。
 春を待ちわびる気持ちが伝わってきます。
 そして、春。
 子グマたちが初めて目にする地上の世界の、なんていう美しさでしょう。
 やはりこういう絵本を読んでみると、
 人間とクマの関係が「むずかしい問題」であればこそ、
 なんとかそれを解決できることを願うしかありません。