赤や黄色に染まり輝く秋の山で、木の実や果物をもくもくと食べ続けているのは、ひぐま。沢山食べておかなくてはならない理由があるのです。
やがて雪がふりはじめ、森がすっかり銀色の世界になった頃。ひぐまの姿がありません。どこへ消えたのでしょう。
すると、雪の下から声が聞こえてきます。ひぐまの赤ちゃんです。雪の下にある暗い巣穴の中で、おかあさんのおっぱいをたくさん飲み、どんどん大きくなっていきます。
「かあさん、はるって なに?」
「はるって おいしいの?」
ようやく春がやってくると、こぐまは光あふれる世界へと飛び出していき……。
旭山動物園の飼育係として25年間働いた経験を持つ絵本作家・あべ弘士さんが、野生のひぐま親子の濃密な時間を描いたこのお話。ひぐまのお母さんが、冬眠中に小さな赤ちゃんを産み、飲まず食わずで6か月間、巣穴の中で赤ちゃんを育てていく様子を、北海道の美しく豊かな自然を背景に、愛嬌たっぷりに見せてくれます。
長く共存してきたからこそ、ひぐまに対する尊敬や畏怖の念を持っているというあべさん。知ってもらいたいのは、ひぐまがどのように生き、次の世代に命をつないでいるのかという事実。絵本だからこそ、伝えられるその姿。印象的な場面の数々から、子どもたちにもあらゆる生きものの命と向き合ってほしいという真摯な願いを感じることができるのです。
付録についているリーフレットは「ひぐま しつもん箱」。子どもたちの質問に答える形で、ひぐまについての生態を、さらに詳しくわかりやすく知ることが出来ます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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