絵本作家・飯野和好さんは1947年に埼玉県の秩父の山間で生まれました。
そこはたった3軒だけの集落でしたが、とても自然豊かなところでもありました。
そんな少年時代の思い出を、飯野さんは絵本『ぼくとお山と羊のセーター』(2022年)で描いています。
この『ぼくのおじいさん』はその姉妹編で、
先の作品と同じ、飯野さんの少年時代一緒に暮らしたおじいさんの姿が
とても生き生きと描かれています。
明治生まれのおじいさんは、マムシをつかまえるのがうまかったり、
きのこがたくさん生えている秘密の場所を知っていたり、
山の空気で天気がわかったりする、すごい人なのです。
木刀のつくり方を教えてくれたりするやさしい人でもありますが、
いたずらが過ぎると「このバチアタリがあ!!」とすごい顔で怒る人でもあります。
この時におじいさんの怒った顔が、絵本見開きいっぱいに描かれていて、
おっかないのに、どこか笑えてくるのは、飯野ワールドの魅力でしょう。
おじいさんが暮らしのいたるところにいる神様をとても大事にして暮らしていて、
そういえば昔は「カマドの神様」みたいな身の周りの神様をみんなが大事にしている、
そんな暮らしが普通にあったことを思い出しました。
決して豊かではないけれど、幸福であったこと。
いつの間にか、そういうものをなくしてしまっていることを、この絵本は思い出させてくれることでしょう。