出版社のせいか、信仰色の強い『幸福の王子』だと感じました。
ツバメの語る世界は、様々に魅力にあふれています。
王子の語る町には貧しいものと金持ちが全く別の生活をしています。
かつて王子が生きていた時、王子は金持ちの側にいたに違いありません。
暖かい国を目指そうとするツバメを死なせてしまった王子は、どうしても自己犠牲というだけでは語れない存在のように思います。
ツバメの事後犠牲は、キリスト教的なのでしょうか。
自分を飾っている宝石や金箔を貧しいものたちに施して、王子像は息絶えます。
王子像は汚いものということで炉で溶かされてしまいます。
王子像を作って人の心がどこにもないのが、とても悲しく思います。
王子とツバメの自己犠牲をとても清らかなものと感じながら、教訓的な結末には、違和感が残りました。
きっとジェーン・レイの絵が、主人公よりも周りの世界を意識させてしまうからだと思います。