誰にでも年に1回訪れる「誕生日」。そんな誕生日に贈りたい、すてきな絵本をご紹介します。「せんろはつづく」シリーズ(金の星社)や『ピン・ポン・バス』など「はたらくのりもの」シリーズ(偕成社)で人気の絵本作家、鈴木まもるさんの新刊『たんじょうび おめでとう』(ポプラ社)。この絵本は鈴木さんのご家族と、とっても深〜い関係がある作品なのだそう。絵本に込められたおはなしを伺いに、鈴木さんのアトリエのある伊豆を訪れました。
- たんじょうび おめでとう
- 作:鈴木 まもる
- 出版社:ポプラ社
一年に一度、誰にでもやってくる誕生日。 毎日が誰かの誕生日。 待ちわびてやっとあなたに会えた日。 大きくなっていくことが、誕生日を毎回迎えられることが、どれだけ嬉しいか! 「おめでとう」の日でもあり「ありがとう」の日でもある、特別な日。 生まれてきてくれて育ってくれて、そこにいてくれて、ありがとう! 感謝とお祝いがぎゅっとつまった、愛あふれるメッセージ絵本です。 そばにいてもいなくても、嬉しい日、誕生日。 おめでとう、ありがとう。
●結婚した息子さんへの最後の誕生日プレゼント?
───『たんじょうび おめでとう』とってもシンプルなタイトルですが、メッセージがたっぷり入った絵本だと感じました。
ちょうど1年前、息子の誕生日に、なにかプレゼントをあげようかなあと思ったとき、フッと「たんじょうび おめでとう」の絵本をあげようとイメージが湧いたものだからでしょうね。ダミーができたら「あなたが だいすき」の続編になると思って編集の人に見ていただきました。
───『あなたが だいすき』(ポプラ社)は2002年に発売された絵本ですよね。小さいお子さんが両手で持ってぴったりのサイズと、色々な動物たちが「大好き」という感情を伝えている、とっても温かい絵本です。
その続編の依頼をもらって、何度かおはなしを考えたんだけど、うまくまとまらなくて……。もう続編はできないかも……と思ったときに生まれたのが『たんじょうび おめでとう』でした。
───何年もかかって出なかった作品が、一気に生まれたのですね。
ぼくは、家族の誕生日に手作りの品をプレゼントしているんだけど、息子は一昨年結婚して家も出たし、もういいかと思ったんだけど、「たんじょうびおめでとう」の絵本なんてビックリするかと思って今年の誕生日に向けて内緒で作り出したんです。
───息子さんは『みんな赤ちゃんだった』(小峰書店)にも登場する方ですよね。絵本ではずっと小さいままなので、ご結婚されるほど大きくなられているなんて、ビックリしました。この絵本は息子さんへのプレゼントでもあるんですね。
編集の方も、その辺を理解してくれて、今年の誕生日に間に合わせるために、逆算して制作スケジュールを立ててくれ、それに沿って秘密裏にニヤニヤして制作しました。
───『あなたがだいすき』に比べると、より言葉がストレートで、具体的に感じられたのは、贈る相手がイメージできていたからなのですね。
最初は続編であることを意識して、『あなたがだいすき』のようにいろいろな動物を登場させたのですが、より個人的な内容になり、登場するのは奥さんや、その当時飼っていたイヌ君やネコさんになりました。
───では、このイヌとネコを見れば、息子さんはすぐに自分のことが描かれている絵本だと分かるんですね。
あかちゃんの頃のことだから覚えているかな〜(笑)
───実際にお子さんをお持ちのお父さんお母さんは、赤ちゃんの手の小ささや、目が開いたときの感動をこの作品で再び体験できますし、お子さんは自分が生まれたときのことをお父さんお母さんに聞きたくなると思います。赤ちゃんの表情や仕草は、息子さんの小さい頃を参考にされたんですか?
当時撮っていた写真をかなり参考にしました。でも、生まれてはじめて目が開いたところとか、すごく微妙な瞬間を描くのはむずかしかったです。読んでいる人たちが感じてくれればいいなァ……と思います。
───写真を見返すと、お子さんが生まれたときのことなど思い出したりしたのではないですか?
色々思い出しますね(笑)。息子が生まれたのは海辺の町に一軒だけ残っていた産婦人科だったんですが、古い病院で当日ぼくたちの他には妊婦さんは誰もいなくて暗い廊下で一人動物園のクマのようにウロウロしていました。息子が生まれてから1週間、朝洗濯に家に帰って、夜は病室の簡易ベッドに寝泊まりして奥さんと息子と一緒に過ごしました。
───それはすごく良い思い出ですね。