お金の使い方と大切さがわかる おかねのれんしゅうちょう 改訂新版 (Gakken)
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『ねえ、おぼえてる?』は、ケイト・グリーナウェイ賞を受賞した『この まちの どこかに』(評論社)に続いて、シドニーさんご自身の作絵による作品としては第2作になります。もともと「記憶」をテーマにした絵本をつくるというアイデアから始まったのだとお聞きしましたが、そのテーマを思いつかれたきっかけが何かあったのですか?
以前、ある友人に『この まちの どこかに』を読んでもらったとき、その友人はいくつかの絵をさして、こういうタッチは記憶の中の情景を描くのにむいているのではないか、と言ったのです。どれもわたしの気に入っている絵で、なにかを思いおこさせるような、そして、まわりの絵とは明らかにちがうタッチの絵でした。どこか危うげで、でも心がはずむような小さな絵だったのです。
そう言われてわたしは、記憶というものが人の心の中でどう感じられ、どう見えているのか考えました。記憶はだれもがもっているのに、とても個人的なものです。人はみな記憶をかかえ、海辺で見つけた宝石のように大切にしまっています。でも、それを映像として見せるのはとても難しくて、もしできるとしたら、おそらく絵本という形を借りるほかないでしょう。
この絵本を読んで、思い出というのは、匂いや音や光の感じ、その場にあった布の柄や、人の手のぬくもりといった、感覚的な断片とともによみがえるのだなあ、ということをあらためて感じました。シドニーさんの絵には、それらを呼び起こすものがあります。
親子がふりかえる思い出は、シドニーさんご自身のものだそうですね。実体験をもとにした絵本をつくるにあたっての難しさはありましたか?
この本の制作はほんとうにたいへんでした。記憶というものは、その扉をあけたとたん、中にひそんでいたどの記憶が現われるのか、自分ではコントロールできません。このテーマで行くと決めて、二人の登場人物が思い出を語りあう構成を考えたあと、その思い出にリアリティをもたせ、ほんとうにあったことのように読者に感じてもらうには、わたし自身の記憶を生かすしかないと思いました。そして、いったんそう決めると、自分の記憶を編集したり、作りなおしたりして、別の物語や別の人物を描くことはできないと気づいたのです。
つまり、それまであまり人に話してこなかった自分の過去を語るほかなくなったのです。おかげで、この絵本の制作はとても難しくて苦しい作業になりました。今のわたしを作っているのに、今まで35年間向きあってこなかったできごとを語るのですから。