新刊
うごく! しゃべる! ぬりえーしょん 海のいきもの

うごく! しゃべる! ぬりえーしょん 海のいきもの (小学館集英社プロダクション)

お子さまの塗ったぬりえが、アニメーションになる!フランス生まれの画期的なぬりえシリーズ!

  • かわいい
  • 盛り上がる
新刊
ふるかな ふるかな?

ふるかな ふるかな?(評論社)

雨はふるかな ふるかな? まだかな まだかな?

  • かわいい
  • ギフト
絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「ヤマメのピンク」シリーズ村上康成さんインタビュー

《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2013.03.28

「ヤマメのピンク」シリーズ
村上康成さんインタビュー

一覧を見る

ピンクとスノーじいさん
作:村上 康成
出版社:徳間書店

●ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞 ヤマメのピンクが迎える初めての冬。それは、動物も魚もおなかをすかせる厳しい季節だった。ある日、イタチに襲われたピンクを助けようと、大イワナのスノーじいさんは…。暗くて寒い冬から、光あふれる春への場面展開が感動的な絵本です。

───そういう編集者とのやり取りで、特に印象に残っているページはありますか?

2時間バトルしたのは、2作目の『ピンクとスノーじいさん』。スノーじいさんが手前にいて、上からイタチが顔を出してピンクを食べようとしているシーン。3匹を同じ構図に収めるなんて、そんな難しいシーン描けないよ…って。でも最終的にはこの構図に落ちつけて、良かったと思ったね。

───『ピンクとスノーじいさん』は、春に生まれたピンクが夏を過ごして、厳しい冬を迎えるお話ですが、1作目を描いたときに2作目の構想はあったんですか?

全くなかったね。1作目で完結したと思っていたら、編集者から「夏もあれば冬もあるよね」と言われて続編が決まりました。この作品には映画的な手法を多く入れたんだよね。スノーじいさんの白い斑点が次のページでバックの雪になる。しめしめと思ったね(笑)。


スノーじいさんの体の斑点が…

雪景色に!

───非常にグラフィック的な描き方ですよね。村上さんはこの作品でボローニャ国際児童図書展のグラフィック賞を受賞されています。受賞の連絡を受けたときはどう思いましたか?

『ピンクとスノーじいさん』は白をどこまで表現できるか…ということをチャレンジした作品で、前作は水色にしていた川の色を、冬の冷たさを表現するためにあえて白にしたり、雪や背景もモノトーンを意識して描いた。ボローニャでも「白が素晴らしい絵本」と評価されて、すごい嬉しかった。でも一番嬉しかったのは、日本のヤマメが世界に認められたってこと。「やった!ヤマメ、メジャーになったぞ!」って(笑)。

───3作目『ピンク!パール!』ですが、魚に詳しくない私は、表紙を見て、「あれ?主人公が変わった…?」と思いました(笑)。ピンクが海に下って、サクラマスになると見た目もすごく変わるんですね。この作品は一見、今までと同じ自然の厳しさを伝えているように思ったんですが、痛烈な批判が込められていますよね。

ピンク! パール!
作:村上 康成
出版社:徳間書店

●ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌受賞 大人になったヤマメのピンク。恋人のパールをつれ、海から故郷の川にもどってきたが、川はすっかり汚れ、おまけにダムが2匹の行く手をはばんでいた。どうしよう、卵を生むためには上流に行かなければ! 追いつめられた2匹はついに…?

この作品は長良川河口堰のダム反対の絵本として作ったんです。でも、ダム反対のために絵本を作るのは釈然としなかったんで、ダムを飛び越えてしまう自然の強さを絵本に込めた。横長の絵本で、飛び越える場面をどうやって描こうか考えて、縦に構図を変えてダムの高さを出した。2匹が飛んでからは、2匹の位置を動かさずに背景をどんどん下に下げていく描き方で、縦に描いたダムの高さを乗り越えていく。読者が2匹に乗り移る気持ちになってもらいたかったので、文字もなくした構成にしたんだ。


───最後のページもそうですが、見返しにいるサクラマスの稚魚を見たとき、すごくホッとしました。文章では「子どもが この川で およぎまわります。」と描いてあるんですけど、絵で生まれた子どもの姿を見て改めて実感した気がしました。そして4作目の『ピンクのいる山』。3部作を読んで4作目を読むと、「あ、日常だ」という安心と感動がありました。

僕が人間として、自然とどう折り合いをつけていけば良いだろう…ということを描きたくなって描いたのがこの『ピンクのいる山』。自然と人間の視点を、俯瞰にして描いてみせることで、人も動物も自然も一緒なんだよということを伝えたかった。

ピンクのいる山
作:村上 康成
出版社:徳間書店

春にうまれたヤマメのピンク。おなかはいつも、ぺこぺこ。でもピンクがすむゆたかな山に、人間もあそびにやってきて…。自然のなかでくりひろげられる「生」のドラマをみずみずしく描いた絵本。自然のかなでるハーモニーに耳をすましてください。〈ヤマメのピンク〉シリーズ完結編。

───『ピンク!パール!』が出てから、『ピンクのいる山』が出版されるまでに10年近く間が空いていますよね。

その間にいろんな作品を出すことができたけれど、またヤマメを描きたくなったんだよね。定期的にヤマメは描いていかないとつまらない。自分の中では「スター・ウォーズ」じゃないけれど、「エピソード1」なイメージだった。4作描いて、一応僕の中で「ヤマメと自然」、「ヤマメと人間」そして「人間と自然」の結論をつけた形です。

───村上さんの自然を扱った作品は、直接的に「自然を大切にしよう」とは言わないところも特徴だと感じました。

僕が絵本で森や魚、自然を描き続けているのは、ただ純粋に、こんなにも愛おしいものがあることを表現したいから。すぐ身近にあるすばらしい自然の存在を、知識や理論で説明をするんじゃなくて、子ども達には自然を見たり触ったり感じたり、自然の中で泥だらけになって遊んでほしい、そういうきっかけになってもらえるものを作りたいと思って、絵本を作っているんです。






『のらいぬ』との出会いが絵本作家を目指したきっかけ。

───今年、絵本作家デビュー30周年ということですが、村上さんが絵本作家を目指そうと思ったきっかけはなんですか?

僕は中高と野球少年で、高校2年生のときはキャプテンでした。しかも、ロン毛のキャッチャーだったんだよ。県大会で決勝まで行ったんだけど、僕が暴投してサヨナラ負けをしたんだ。すごく悔しくて、仲間は何も言わなかったけど、ずっと引きずっていた。それが引退試合だったからね。野球部を終えたら、次は進路に向けて本格的に考えなきゃいけない時期がくる。僕は野球と同じくらいドキドキワクワクすることって何だろう…と考えたとき、思い至ったのが絵だったんだ。絵で生計を立てるのは大変だって分かっていたけど、賭けてみたい気持ちがメラメラと湧いて、引退した次の日には美術部に入ってた。

───野球部から美術部へ…すごく意外な展開ですね。

でも、美術部に入ったくらいじゃ絵の道には進めないから、同時に名古屋の美大の予備校に通ったり、美術系の寺子屋のような予備校に通ったりして、何とか一浪して大学に入った。絵本との出会いは浪人時代、この寺子屋のような予備校で長谷川集平と出会って、彼と一緒に『のらいぬ』(作:蔵冨千鶴子、絵:谷内 こうた、出版社:至光社)の原画展に行ったんです。正直、僕はそこでもらえる出版社のカレンダーが目当てだったこともあって、原画を見てもそれほど感動しなかったんだ。でも、絵本を手に取ってめくった瞬間、衝撃を受けた。「絵と文字で、これほど完成された世界が出来上がるのか!」って。それで、残りわずかな生活費をはたいて絵本を買って、家に帰ってスケッチブックに夢中で『のらいぬ』を全部模写していた。文字のレタリングも全部書き写して、出来上がったときは夜明けになっていたね。

───それが絵本作家になろうと思ったきっかけですね。

小学3年生でのヤマメとの出会い、野球の挫折と絵への切り替え、予備校での『のらいぬ』との出会い。それが全部集約されて、絵本を描きたいと思ったんだ。

───ヤマメを追って川に行ったり、野球に青春をかけたりするアクティブな姿と、絵本を描く作業は真逆の感じがするのですが、村上さんの中では共通項があるんでしょうか。

自然にしろ、絵本にしろ原点にあるものは「わぁ、きれい!」と思えるエネルギー。そのエネルギーをストレートに表現することが僕にとって重要で、子ども達に伝えたいこと。一輪の花をどれだけ愛でられるかに近い感覚だね。大好きだから、その思いが絵を描く力になる。

今、あなたにオススメ

出版社おすすめ

  • まめぞうのぼうけん
    まめぞうのぼうけん
    出版社:BL出版 BL出版の特集ページがあります!
    ひとりぼっちの 小さな まめぞうは、大きな海へ とびだしました! 繊細な切り絵の世界は素敵です。


人気作品・注目の新刊をご紹介!絵本ナビプラチナブック
【絵本ナビショッピング】土日・祝日も発送♪

村上 康成(むらかみやすなり)

  • 1955年、岐阜県生まれ。創作絵本をはじめ、ワイルドライフアート、オリジナルグッズなどで独自の世界を展開する、自然派アーティスト。「ピンクとスノーじいさん」(徳間書店)、「プレゼント」(BL出版)、「ようこそ森へ」(徳間書店)で、ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞、「ピンク!パール!」(徳間書店)で、ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌、「なつのいけ」(ひかりのくに)で日本絵本賞大賞、「999ひきのきょうだいのおひっこし」(ひさかたチャイルド)が2012ドイツ児童文学賞にノミネートなど国内外で高く評価されている。主な作品に「星空キャンプ」(講談社)、「さかなつりにいこう!」(理論社)、「石のきもち」「くじらのバース」(ひさかたチャイルド)、新刊「どろんこ!どろんこ!」(講談社)など多数ある。伊豆高原と石垣島に、村上康成絵本ギャラリーがある。

作品紹介

ピンク、ぺっこん
ピンク、ぺっこんの試し読みができます!
作:村上 康成
出版社:徳間書店
ピンクとスノーじいさん
作:村上 康成
出版社:徳間書店
ピンク! パール!
作:村上 康成
出版社:徳間書店
ピンクのいる山
作:村上 康成
出版社:徳間書店
全ページためしよみ
年齢別絵本セット