「いろいろ ばあ!」のかけ声と共に、絵の具から「いろくん」達が元気に飛び出す、ニュータイプのファーストブック『いろいろ ばあ』。発売と同時期に絵本ナビでもレビューコンテストが行われ、「子どもと一緒に読むと何だか元気になる。」「明るい色に気持ちまで明るくなる」とお母さんたちから高い支持をいただいた人気作品です。そんな『いろいろ ばあ』の新作がついに完成!作者の新井洋行さんに制作秘話を伺いました。
前作『いろいろ ばあ』発売時のインタビュー記事はこちら >>
- もっと いろいろ ばあ
- 作:新井 洋行
- 出版社:えほんの杜
ちゃいろ、ピンク、みずいろ、きみどり…。いろんな いろが やってきて、いろんな どうぶつに だいへんしん!なにに なるのか わかるかな?
いろの なまえも まなべちゃうニュータイプの いないないばあ絵本です。
※全ページためしよみ公開中!
●「色×動物」のシリーズパート2!
─── 前回の『いろいろ ばあ』でインタビューをさせていただいたとき、ほんの少しですが、2作目の構想についてもお伺いしていたんですよね。そのとき進行中のラフも見せていただいたのですが、それから内容などは変わりましたか?
そうですね。たしかそのとき作っていたのは、白くんと黒くんが登場する、シックな路線だったと思うんです。でも、『もっと いろいろ ばあ』はそれからほぼ180度変わって…。ポップな絵本になりました(笑)。
─── ピンクに水色、きみどり色…と登場する「いろくん」達もカラフルですよね。
今回の作品で僕がこだわったのは、絵本を読んでくれる子ども達が知っている色を登場させること。茶色、ピンク、きみどり色、水色、黒…。これに前作『いろいろ ばあ』の赤、青、黄色、むらさき色、緑色、オレンジ色。
絵本2冊そろえると基本色といわれる色が分かるようにしたいと思っていたんです。
─── それと今回のチャームポイントはやはり「動物」ですよね。
ですね(笑)。
─── ネコの「ぶにゃっ!」や、ブタの「ぶっぶっぶっ…」など、動物と絵の具の広がり方、そこに付いている言葉が本当にピッタリで、何度読んでも笑ってしまうんですが、動物を登場させることは最初から決めていたのですか?
絵の具の飛び出し方と似ている形は何かな…と考えて、不自然にならない形になるのは動物だと思ったんです。最初は乗り物や植物なんかも候補にあがったのですが、形が角ばっていたり、複雑すぎるとチューブから出る形から離れすぎてしまうという理由でボツになりました。
ピンク色がブタになって飛び散っている様子や、黄緑色がにょろーんと出てきている形は、実際に絵の具でやっても、ブタやヘビに見えそうな形ですよね。でも色にあった動物を考えたり、気持ちのいい飛び出し方を考えるのは結構大変でした。
─── 特に難しかった色はありますか?
水色と黒…かな。水色はイルカかな…クジラも良いな…と結構悩みましたね。黒はネコということは早い段階から決まっていたんですが、「飛び出し方が甘い!」って言われてやり直しました(笑)。
子ども達は本当にすごくて、絵の具からチラッと顔をのぞかせているいろくん達の表情から、動物を当ててくるんですよ。自分達の知っている色、知っている動物が出てくる! それを当てられるのがすごく嬉しいっていう盛り上がりを読んでいて感じますね。それと、途中で「いーれーて!」と前作のいろくん達が登場するところがあって、そこで一緒に「いーいーよ」って言ってくれる。ときどき、「だーめ」って言う子もいるんだけど…(笑)。面白いですよ。
─── 前作もそうでしたが、飛び出す勢いや絵の具の質感が見ていてすごく気持ちよかったです。実際に絵の具のチューブを使って飛び出し方を観察したりしたんでしょうか?
僕、高校の頃、美術部で油絵をやってたんです。そのときのチューブから色を出す感覚を思い出しながら描きました。
─── なるほど。だからいろくんが飛び出した後のチューブの空っぽ感が、とてもリアルなんですね(笑)。本物の絵の具は、使い終わったら捨てられて、手元には残らないけれど、絵本ではそれがまたチューブに戻って(笑)、何度も楽しめるのが良いですよね。
実は、試行錯誤を繰り返している段階で、2作目は年齢層をあげた内容にしようと思った時期もあったんです。
そのときは、色と形の変化にこだわって作っていたんですが、何度やってもなかなかしっくり来るものがなくて、行き詰ってしまったんです。
そのとき、この絵本のポイントは「色がわかる」ことよりも、絵の具が「ブシュ!」って飛び出るときの気持ちよさなんだって気づいたんです。
─── 色も大切だけど、感覚も必要だったんですね。
そうなんです。先ほど、『いろいろ ばあ』をお母さん達が気持ちよく感じてくれるとおっしゃっていましたが、それは多分、いろくん達の飛び出し方に何かを生み出す気持ちよさと同じ快感を感じるからじゃないか…と思うんです。あたかもわが子を出産するような…ね(笑)。
─── 『もっと いろいろ ばあ』は表紙がプクプクしている加工が施されているんですよね。
バーコ印刷という特殊加工なんです。いろくんの質感を出せるようにと出版社さんが考えてくれました。ちょっと豪華ですよね(笑)。
─── さわり心地が良くて、ずっとさわっていたくなっちゃいます。2作目を作っているとき、特に大変だったことはありましたか?
1作目があるってことが大変でしたね。前作よりも良いものを作らなければいけませんから。結果的には動物を登場させることで1作目と違った面白さを出せたと思っています。
─── 2冊続くと、『いろいろ ばあ』は実は色だけの絵本じゃないんだって分かるのも嬉しい発見ですね。
そうなんです。僕の作品はシリーズが多いのですが、それは意識的にシリーズにしている部分もあります。1冊でも十分楽しんでもらえるけれど、シリーズにすることで作品に込めたぼくのコンセプトが1冊のときよりもさらに分かりやすく、読者の方に伝わると思うからなんです。