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【連載】第3回 鈴木出版 編集部インタビュー
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【連載】せなけいこさん 絵本作家デビュー50周年おめでとう! せなさんを囲む人たちインタビュー2019/08/01 【連載】第3回 鈴木出版 編集部インタビュー
せなけいこさんと鈴木出版さんとの出会いは、1974年。「いやだいやだのえほん」シリーズ(福音館書店)でデビューされて5年後のことでした。
それから約30年に渡り、せなさんは鈴木出版の月刊絵本「こどものくに チューリップ版」の編集委員を務められ、そこで30冊以上の絵本を生み出しました。 今回、その中から特に人気の4冊が「せなけいこコレクション」として装丁も新たによみがえります。 そこで、せなさんのことをよく知る、鈴木出版編集部の波賀編集長、座馬さん、榊原さんにおはなしを伺いました。
●イチオシの絵本が「せなけいこコレクション」となって読者の元へ!
―― 今回、7月に『わたしゃ ほんとうに うんが いい』と『まほうつかいと ねこ』が、8月に『うさぎのまじっく』と『たぬきちの ともだち』が「せなけいこコレクション」として出版されます。
どのような経緯でこの4冊の出版が決まったのでしょうか?
波賀:鈴木出版は、毎月保育園や幼稚園に届く月刊絵本「こどものくに」を出版しています。
その中の3〜4歳児向けの「こどものくに チューリップ版」で、毎年1作品、せなけいこ先生の作品を出版してきました。 月刊絵本で人気の作品は、ハードカバーにして書店にも流通させています。 しかし、中にはハードカバーになったまま、残念ながら書店に並ばなくなったものもあり、読者から「再版してほしい」という声を多くいただいていました。 私としてももう一度、たくさんの人にせな先生の絵本を読んでほしいという思いがあり、今回、「こどものくに チューリップ版」で出版したせな先生の作品の中から、特に人気の高いものを「せなけいこコレクション」としてまとめることにしました。 ![]() 編集長の波賀さん。
―― 「せなけいこコレクション」を出版するにあたり、過去に出ていたハードカバーの絵本と変えたところはありますか?
波賀:まず大きさを今までのハードカバーよりもコンパクトにして、かわいらしさを強調しました。また、シリーズに統一感が出るよう、表紙のデザインも変えています。
―― 縁の部分に作品をイメージさせる色がついているのが印象的です。
波賀:「せなカラー」といって、せな先生の作品に多く使われる色を選んで、表紙のデザインと合わせました。
榊原:絵本の中に関しても、原画の色に忠実になるよう、今回、新たに原画をスキャニングして、色を調整しています。
―― どのページもとても美しい色ですね。原画もきれいな状態で残っていたのですか?
座馬:原画はトレーシングペーパーがかけられ、きれいに保管されていましたが、どんなに丁寧に保管していても、経年劣化が進んでいる部分がありました。
榊原:ほかのページとのバランスを比べたり、旧版の色と比較してより原画に近づけるように印刷会社と話し合い、作業を進めていきました。
―― 色の調整作業で特に大変だったところはどこですか?
榊原:例えば『うさぎのまじっく』のうさぎの毛、これは和紙のような素材で作られているんです。紙の切れ端の繊維でうさぎのほわんほわんとした毛が表現されています。
印刷でその雰囲気を再現するのが難しかったです。 ![]() うさぎのふわふわな毛も、原画に忠実に再現されています。
―― 「せなけいこコレクション」の作品について、それぞれ魅力を伺えたらと思います。まず、『わたしゃ ほんとに うんがいい』ですが、これは本当にポジティブで明るいおはなしですよね。
にこにこばあちゃんの口ぐせは「わたしゃほんとにうんがいい」。
波賀:ぼくはこの作品が大好きです。
何があっても「わたしゃ ほんとに うんがいい」って、究極のプラス思考ですよね。 人生を乗り切る知恵なんじゃないかと。ぼくもこういう気持ちで生きたいなって思います。
―― たしかに、読んでいるときは「次どうなるんだろう…」と思うのですが、読み終わった後は「気持ちいい!」ってスッキリした気分になれます。
波賀:これは、イギリスの昔話が元にあるおはなしなんです。
せな先生はいろいろな本を読むのがお好きで、その中から、絵本にしたいテーマを見つけてくるのがとても上手。 せな先生の絵と文章で、作品がさらに魅力的になるんですよ。
―― おばあさんの底抜けの明るさやポジティブ思考が、全体からあふれ出ているように思います。『まほうつかいと ねこ』も外国が舞台ののおはなしですが、これも元になった作品があるのでしょうか?
魔法使いは、集会に参加するために、相棒になる黒猫を募集中。
座馬:これはせな先生のオリジナルです。
私はこの作品に出てくる登場人物がみんなかわいくて、大好きなんです。 特に魔法使い。絵本では意地悪だったり嫌われ者だったりすることが多いキャラクターですが、このおはなしの魔法使いはおひとよしでとても優しい。
―― 「ほうきに乗れるくろねこ」を募集していたのに、やってきたのは真っ白いねこ。
でもだんだん情が移っていって、魔女パーティーに黒い毛糸で編んだセーターを着せて参加させるという……。
座馬:それでばれて、怒られるのではなくて「なにいろだって ねこは ねこ。」と周りも認めてしまう大らかな展開が良いですよね。
あと、最後のページが大好きなんです。 せな先生もきっとこの場面が描きたくて、この絵本を作られたんじゃないかなって思うくらい、ユーモアがあって楽しい場面です。
―― セーターを着せているだけでなく、黒猫じゃない猫もいる……(笑)。
何でもありの気持ちいいラストですね。
座馬:少し大人の見方をすると、このおはなしのラストは既成概念に捉われずに、良いものは良いと認めているという話と考えることもできると思うんです。
多様性を求める今の時代に向けてのせな先生からのメッセージのようにも感じています。
波賀:先生のすごいところは、そういうメッセージをご本人はほとんど意図して作っていないところなんです。
せな先生はとにかく「子どもが喜ぶかどうか」ということを一番に考えて、いつも作品を作られている方なんですよ。
―― なるほど。それとせなさんは、動物や人間に関わらず、絵本に出てくるキャラクターすべてに愛情をもって接しているように思います。
座馬:先生に絵本の相談をしていると、「うさぎが“良いよ”って言ったらね」「こっちのほうがうさぎが喜んでいるわ」と言われることがあるんです。
そう言えるのは、絵本の登場者になりきっているからなんだと思います。
―― せなさんには、うさぎが生き生きと話したり飛んだりしている姿がきっと見えているんですね。
「せなけいこコレクション」には『うさぎのまじっく』という作品も入っていますが、この絵本についてもお伺いできればと思います。
手品師のおじさんの帽子から耳をつかんで引っ張り出されるのはもうまっぴら。
榊原:動物好きなせな先生の中でも、うさぎは特に大好きなキャラクター。
この『うさぎのまじっく』は手品師とうさぎの掛け合いが特に楽しいおはなしです。
波賀:この絵本の中で、うさぎがマジックの本を読む場面があるんだけど、そこに書かれている文字が話題になったことがあったよね。
―― どういうことですか?
榊原:横須賀美術館の学芸員さんと『うさぎのまじっく』の原画を確認していたときに、マジックの本に使われている紙に印刷されているアラビア語を見て、「なんて書いてあるんだろう?」と話題になったんです。
その数日後、学芸員さんが資料の中から、当時の新聞にせな先生がこのことについて触れている記事を見つけてくださったんです。 『海外旅行先で渡されたアラビア語のパンフレットは、「ひらめいて」持ち帰り、絵本の中で魔術書に”化けた”。』とのこと。 せな先生はいろいろな素材の紙を使って作品を作られていますが、常に素材を探していらっしゃったのだなと感動しました。 ![]() うさぎが読んでいる本の文字は、ホテルのパンフレットを使っているのだそう。
―― 文字が読めなくても、どこで使われていた紙か分かると、ちょっと安心しますね。
最後に『たぬきちの ともだち』ですが、これもせなさんの得意なおばけが出てくるおはなしですね。
波賀:そうです。この作品はおばけのおはなしであるとともに、せな先生ならではの落語的な要素も魅力の作品だと思います。
うまくおばけに化けることのできないたぬきのたぬきちが、おばけに化ける練習をしている。上手に化けられるようになって外に出たら、向こうからかさおばけがやってくる。 自分と同じようにたぬきが化けているんだろうと思ったら実は……という、割と単純な設定なんです。 でも、そこにせな先生独特の物語のセンスが加わって、抜群に面白い絵本になっています。
たぬきのたぬきちは、きょうも化け方のおけいこ。
●「もりひさし先生は厳しかったけれど、鍛えられた。感謝しているわ」
―― せなさんは、30年以上「こどものくに チューリップ版」に絵本を発表していますが、そのきっかけはなんだったのでしょうか?
波賀:ぼくが編集長になる前のことなので、聞いた話なのですが、せな先生が「こどものくに チューリップ版」にはじめて絵本を掲載したのが1974年。
そこからずっと、「こどものくに チューリップ版」の編集委員をやってくださっていています。 そういうご縁もあり、年に一冊は、せな先生の本を「チューリップ版」でお願いしていたようです。
―― 編集委員とはどのようなことをするのでしょうか?
波賀:絵本になる前のラフを編集委員の皆さんが読んで、意見を出し合い、作品がより良くなるよう話し合う会議です。
せな先生以外にも、作家さんに編集委員をお願いしています。 せな先生が編集委員をされていたころは、もりひさし(※)先生にもお願いしていまして、とにかくもり先生が厳しかったんですよね……。 ※もりひさし……教師生活のなかで児童文学にかかわり、絵本作家となる。 「こぐまちゃんえほんシリーズ」(こぐま社刊)などの絵本作品、「はらぺこあおむし」「パパ、お月さまとって!」(以上偕成社刊)などの翻訳作品がある。
―― それはせなさんに対してですか?
波賀:どの作品に対しても厳しい方なのですが、特にせな先生は編集委員でもあり、絵本を会議にかけられる側でもあったので、もり先生にいろいろ意見を言われて、実を言うとすごく打ちひしがれていらっしゃることも少なくありませんでした。
―― かなり過酷な会議ですね……。
波賀:もり先生は論理的に詰めていく方で、せな先生は割と感性で作品を作られる方。
なので、もり先生に論理的に詰められると説明に窮することも多いんです。 でも、それを受け入れてしまうと絵本としての面白みがなくなるっていうのが、せな先生の意見で……。 未だに当時を振り返って「もり先生は厳しかったけれど、鍛えられた。感謝しているわ」っておっしゃっていますね。
―― もりひさしさんの厳しい理論を潜り抜けて、いくつもの名作が誕生したんですね。
●お散歩のとき、せな先生はいつもラムネを持っていました。
―― 波賀さんは30年以上、座馬さんと榊原さんは直接の担当者として、せなさんとお会いしていると思います。
みなさんから見たせなけいこさんはどんな方ですか?
波賀:鈴木出版では基本的に「こどものくに チューリップ版」の担当者がせな先生の担当になるのですが、新入社員が「チューリップ版」を受け持つことが多いんです。
座馬:編集長と一緒にせな先生のお宅にご挨拶に伺うときはとにかく緊張しました。
榊原:でも、先生はとてもユーモアのある方なので、すぐに緊張もほぐれて、お家に伺うのも楽しみになるんです。
―― みなさんが知っているせなさんの秘密は何かありますか?
座馬:そうですね…。お出かけのとき、先生はいつもベレー帽をかぶっていらっしゃいます。
あと、お散歩のときはラムネを持っているんです。
波賀:歩くのがとにかくお好きで、月に1回の編集会議の前は古本屋を回って、リュックに古本を詰めていらっしゃることが多かったです。
それと、根がとてもまじめな方で、あれほど厳しい意見が出される編集会議にも欠席されることはほとんどなかったですね。
―― 今日はいろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
最後に絵本ナビユーザーへ「せなけいこコレクション」のオススメメッセージをいただけますか。
波賀:せなけいこ先生の絵本は「おばけ」以外も名作ぞろいです。
「せなけいこコレクション」では今、お子さんと楽しんでほしい、次の世代に伝えていきたいせな先生の作品をラインナップしています。 ぜひ、もっともっとたくさんのせな先生の絵本を、読者に読んでほしいです。
座馬:私は9年くらい「こどものくに チューリップ版」の担当としてせな先生の作品に携わってきたのですが、せな先生の絵本は創作であるけれど、血が通っているというか、キャラクターひとりひとり、言葉ひとつひとつが本当に生き生きとしているんです。
せな先生が30年以上に渡り作ってきた作品の中でも特にオススメの4冊が「せなけいこコレクション」です。 多くの方に読んでもらえたら嬉しいです。
榊原:今回、「せなけいこコレクション」にラインナップされている4冊は、どれもおはなしの展開が読めない。次のページ、次のページへと読み進めたくなる絵本ばかりだと思います。
この4冊以外にも鈴木出版で発表したせな先生の作品の中には、まだまだオススメしたいものがたくさんあるので、第2弾、第3弾と「せなけいこコレクション」を続けて出していきたいと思います。
―― ありがとうございました。
せなけいこコレクション鈴木出版 せなけいこ作品※掲載している情報は連載当時のものです。 |
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