じゅんくんには苦手なことがいろいろあります。でも二年生になってからできることが増えました。「じゅんくん!」ってよばれたらすぐに手をあげられるし、友だちや先生のこともよく観察しています。ある時、すぐにどこかに行ってしまう「かこちゃん」が教室から出て行ったところについていったじゅんくん。探しに来たかおる先生の泣きそうな表情を見て、かこちゃんに勝手にどこかに行くのはよそうねと心の中で言ってみたり、今度は絶対に止めるからね、と思ったり。また、一年生の時にはちゃんといすに座っていられなかった朝の会でも、ちゃんと座っていられるようになりました。さらにプレイルームという部屋に一年生が入ってきて大騒ぎする姿に「まったく……! 一年生は!」なんて思ってみたり。さまざまな場面で、二年生になったじゅんくんの成長が感じられます。
じゅんくんが通っているのは「とくべつしえん学校」。じゅんくんはここで毎日たくさんのことを見て、考え、さまざまなことを感じながら過ごしているのです。
そんなじゅんくんが一番苦手なのは「はしること」、中でもマラソンの練習が大っきらいなのに、「マラソン大会」が来週に迫っています。運動場を走るのがいやでいやで仕方なくて座りこんでしまったり、おねえちゃんとその友だちが練習させようとがんばってくれても、いやなものはいやという気持ちはどうにもなりません。
それでもやってきた「マラソン大会」当日。スタートしてからすぐに「むりむり」って座ろうとしたけれど、「じゅん、がんばって!」というママとパパの声が聞こえて、おねえちゃんが手をひっぱってくれているような気がして……。いちに、いちに。まえに、まえに。すると‥‥‥。
特別支援学校の現役教師として、また『熱風』『ひみつ』『ふたり』など児童文学作家としても活躍される福田隆浩さんが描く、じゅんくんの日常の物語。苦手なことにひとつひとつ立ち向かいながら成長していく姿が丁寧に描かれます。その気持ちの動きがささめやゆきさんのやさしく温かな絵からも伝わってきます。
文章はじゅんくんの語りかけで進んでいくので、とても読みやすく、友だちのおしゃべりを聞いているかのよう。じゅんくんの心の中にある思いをしっかり受け取ることができるでしょう。
「知ることから、すべてははじまる!」本書のオビに書かれている言葉そのままに、サポートが必要な子が目にしている世界や思いをまずは知ってほしい、という作者の温かな眼差しと願いを感じる一冊。低学年から読める易しさですが、子どもから大人まで幅広い年齢の方に手にとってほしい作品です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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