物語の舞台は、歴史ファンの間でも注目度の高い清代末期の光緒
25 年(1899 年)。中国大陸に進出したイギリス、ドイツ、フラン
スをはじめとする西洋列強は、中国各地で分割支配を強めていた。
そんな列強諸国に対抗すべく、「扶清滅洋(清を扶け西洋を滅ぼす)」
のスローガンを掲げた「義和団」を名乗る集団が、山東省での暴動
をきっかけに各地に広がり、社会は不安定な状況であった。そんな
なか、杭州・西湖のほとりにある孤山に暮らす数え年で二十一歳の
丁仁は、金石学者である父・丁立誠の後を継ぎ、学究に勤しんでい
た。ある日、生薬である「竜骨」に神秘的な図形や文字のようなも
のが刻まれていて、北京で騒動になっていることを耳にした丁仁は、
丁家にかねてから出入りする北京在住の雑貨商人・元突聘に、その
子細を尋ねようとする──。
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