準結晶と呼ばれる、5回回転対称の回折パターンを示す物質が、なぜ筆者を含め多くの研究者を夢中にさせているのだろうか。それには、黄金比という魅力に富んだ無理数が関係していることが大きい。“黄金比病”とも呼ばれ、取り憑かれた人々を夢中にさせる黄金比には、それに関係した規則あるいは性質を詳しく調べれば調べるほど新たな発見があり、人々に留まることのない発見の喜びをもたらしてくれる。…
しかし、黄金比に関係した基本の美しい性質を楽しんでいるうちはよいが、実際の準結晶の構造に触れていくと、やはり現実は夢見ていたほどに美しくはない。これが準結晶研究の本質であるが、また、理想から離れた現実の準結晶の性質にもきらりと心を打つ多くの宝物が隠されている。これらの発見を求めながらほぼ17年が経ってしまったのである。(本文から)
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