池袋の駅前で派手に転んで、右手を痛めた。病院では骨を褒められたけれど、本当はその上の皮膚を褒めてほしい。大学の新入生には「うちのお祖母ちゃんがファンなんです」と言われ、思わずうなだれる。
70歳を迎える頃の林真理子には、こんな出来事が増えてきた。
とはいえ、台湾では屋台料理を楽しみ、パリではおいしいランチを堪能。大好きな相撲を観に行き、美しい女優に見とれ、友人たちの美容整形も気になる。日大理事長として忙しく働きながら、昔の仲間とのお喋りも欠かせない。
一方で、101歳で亡くなった母の言葉が、以前より身にしみるようになった。「週刊朝日」の休刊や山の上ホテルの休館には、若かった頃を思い出す。
年をとるのは、寂しいこともある。それでも、今日も面白いことはたくさんある。
「週刊文春」連載40周年、そして古希を迎えた頃の人気エッセイ集。
巻末には、美智子さまへの思いを綴った特別編と、皇室小説『皇后は闘うことにした』の創作を語る文庫版特別付録を収録。
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