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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「ともだちって かぜがうつっても へいきだっていってくれるひと」『ともだち』 谷川俊太郎さんインタビュー

ともだちがいてよかったな

───私自身が、大人のこの年齢になって「ともだちがいてよかったな」と思うのはどんなときだろうと考えたとき、自分の頭に浮かんだくだらないことや、とるに足らない話を、ともだちが聞いてくれるときだな、と思ったのですが……すごく独りよがりですよね(笑)。

いやいや、すごく大事なことじゃない!? くだらないことを聞いてもらえるっていうのはともだちの基本条件の一つですよ。

───谷川さんはどんなときにともだちがいてよかったなと思いますか? 今は。

うーん。抽象的な話ではなくて、別個に、それぞれ、相手との人間関係のなかであれこれと思いますね。たとえば、さっき電話がかかってきた山田馨さん。彼はもと岩波書店の編集者で、『ぼくはこうやって詩を書いてきた』(ナナロク社)という分厚い本を、僕と酒飲みながら作ってくれた人ですけどね、もう20年近いつきあいかな。山田さんとずっとつきあってきてよかったな、とかさ。
他の人で、たとえば「ちょっと会ってないけどあいつ今どうしてるかな」とか。「もうあいつには会わなくていいや」って奴もいるし、「ハガキくらいよこせばいいのに」とこっちが思うのもいるわけ。一人一人、つきあい方や深さが違いますよね。ともだちとしゃべりたくて電話するってこと、僕はあんまりないんだけど、ごくまれに、気になってこっちから電話しようかなということもありますね。はい(笑)。

───谷川さんのお話をうかがっていると、「ともだちがいない」と言いながら、たくさんの方々とのおつきあいがありますね(笑)。谷川さんにとっては、お母様でも、妻でも、たとえば義理の息子さんであっても、みんなすべてともだちになる可能性があるみたい。「ともだち」の意味が逆に広いのではないかと思ったりするのですが。

そうかもしれないね。人と人とのつきあいのなかで、友情という要素がけっこうあるんだということでしょうね。どんな相手であっても。
友情でないと思っていても、実際は友情だったりするし、ともだちじゃないと思っていても、ともだち関係だったりすることはあると思います。

───おじいちゃんと孫くらいの子で、「としがちがってても ともだちはともだち」。夫婦でも「おかあさんとおとうさんも ときどき ともだちみたい」。そう考えると「ともだち」の範囲が広がりますね。

ええ、広げて考えたほうがいいでしょうね。

───たとえば部活やクラブチームでよく会う子は、「仲間」か「ともだち」か。相手にとって自分は「ともだち」かな?とモヤモヤしてしまったり……。親としてはつい、子どものともだちが気になってしまうこともあります。でも広く見れば、同世代のともだちだけが、ともだちじゃないですよね。

もちろんですよ。それに僕は、相手にとって「ともだち」かどうかは関係ない。たとえば、恋愛であっても、相手に愛されているかどうかよりも、自分が愛しているかどうかのほうがずっと大事だと思ってきました。
今の時代、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発達もあって、相手にとってどうかを気にする状況が増えているだろうというのは、想像できますけどね。でももし裏切られても、自分がその人を「ともだち」と思っているかどうかのほうがずっと大事ですよ。

───「ともだちってなんだろう」と思っていたモヤモヤがすっきりしてきました!
「ともだち」を広げて考えたら、毎日の見え方が変わっちゃいそう(笑)。ぜひ親子や学校で『ともだち』を読んで、語り合ってみてほしいです! きょうはありがとうございました。



Q:中学時代から仲が良い異性のともだちがいます。このまま関係がつづけばいいなと思っていますが、周囲には「つきあっちゃえば」とすぐ言われます。



男女の友情は成立すると思いますよ。でも、人間は変化するからね。友情が恋愛感情に変わることだって大ありですよ。
僕は男女間のともだち関係が成立するかどうかは、知性にかかっていると思う。感情だけではなく、どれだけ、知性でもって相手との関係を築けるかということもあると思います。

Q:小さい頃、転校が多く、思い出を共有できるともだちがいません。

僕にも幼なじみがいました。岸田今日子さんという女優さんは幼なじみで、幼い頃の記憶を共有しています。そんな存在が貴重なんだと感じるようになったのは年をとってからですね。でももう岸田さんも亡くなってしまったし……。
若い頃は全然貴重だとかは思いませんでしたけどね。幼なじみまでいかなくても、もし、それに近いともだちが一人でもいたら大切にしたほうがいいだろうと思います。

Q:留学して帰ってきたあと、同学年のクラスメイトのなかに入りづらいです。どうやったら関係を深めていけるでしょうか。

ともだちっていうのは、自然にともだちになったらそれは理想だけど、なかなかそうもいかないじゃない。じゃあどうするかというと、やっぱり「つくる」もんだと思うんですよね。飲みにいこうよとか、もっと話そうよとか、授業の後にやってみたらいいんじゃないでしょうか。もしともだちが欲しいならね。

Q:大人になってから、ともだちとのつきあい方はかわりましたか?

今のほうがはるかにともだちをちゃんと大事にしていると思います。やっぱり大人になってから、人とのケンカや別れを経験したあとで、自分にとって「ともだち」って大事なんだとわかってきたから、ともだちを大事にするようになりました。

Q:子どものときを振り返って、もっとともだちをたくさんつくっておけばよかったなあと後悔したことはありますか。

全然ないです。僕は「一対一」が基本だと思ってるんですよ、人間のつきあいは。だからたくさんともだちがいたら、混乱すると思うね。僕、血液型がO型でわりと気をつかうほうだから(笑)。

<編集後記>

たくさんの学生さんたちを前に緊張気味にインタビューははじまりました。でも谷川俊太郎さんのまったく構えることがない話しぶりと率直な言葉にどんどんひきこまれ、いつのまにか凝り固まった頭のなかをほぐされ溶かされるような、あっという間の2時間でした。
「ともだちがいない」と何度も繰り返しながら、インタビュー中に携帯に電話がかかってきたり(「入院してるともだちがけっこういるからさ」と言いつつ電話に出る谷川さん)、聞けば聞くほどともだちのエピソードが出てくるのは、一対一の関係のなかで谷川さんが個々に友情を築いてきたあかしなのでしょう。


記念にパチリ。玉川大学「教育学術情報図書館」にて。

35年以上前に書かれた『ともだち』が今なお輝いて見えるのも、人間への姿勢が一貫して、筋のとおったものだからなのだとあらためて感じました。ともだちは、自分がともだちと思えばともだち。自分と違っていても、家族でも、ともだちは、ともだち。そして「どんなきもちかな」と相手のことを考える大事さを、本から教えてもらった気がします!

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インタビューの模様の動画が紹介されています!

インタビューの模様を、玉川大学出版部のHPで紹介されています。

こちらも合わせてご覧になると、雰囲気が伝わるかもしれませんね。

■谷川俊太郎さん公開インタビュー開催
http://www.tamagawa-up.jp/news/n11513.html

インタビュー:磯崎園子(絵本ナビ編集長)
文・構成:大和田佳世(絵本ナビライター)
撮影:所靖子

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谷川 俊太郎(たにかわしゅんたろう)

  • 1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。

作品紹介

ともだち
作:谷川 俊太郎
絵:和田 誠
出版社:玉川大学出版部
A friend(ともだち 英語版)
作:谷川 俊太郎
絵:和田 誠
訳:アーサー・ビナード
出版社:玉川大学出版部
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