●子どもだけでなく、ご自分の眠りが浅いと感じるすべての方にオススメします。
───『おやすみ、ロジャー』の発売以降、寝かしつけをテーマにした絵本がたくさん出版されていると思います。三橋さんはそのことについてどのように思っていらっしゃるのでしょうか?
『おやすみ、ロジャー』がまだ世に出る前に、編集者さんと話していたのは「この絵本が出ることで、おやすみ絵本というジャンルが知られるようになって、本屋さんでおやすみ絵本コーナーができると良いですね」ということでした。
『おやすみ、ロジャー』を出版した後、すぐにいろいろなメディアに紹介していただき、おやすみ絵本も少しずつですが、数が増えてきたように思います。ただ、まだまだこのジャンルを知っている方は限られていると思うので、多くの方におやすみ絵本について知っていただきたい。ほかの作品と一緒になって、盛り上げていけたら良いなと思っています。
───多くのおやすみ絵本の中でも『おやすみ、ロジャー』は飛びぬけて注目を集めたと思います。その理由は何だと思いますか?
絵本に出てくるエピソードひとつひとつ、言葉のひとつひとつに無駄がないことだと思います。カールさんは元々、行動科学者として、大学で講師を務めていらっしゃるのですが、このおはなしを書くのに心理学と行動科学の知識を十分に組み込んでいらっしゃいます。カールさんが日本に来日したときに、お話を伺ったことがあるのですが、カールさん自身も「ポイントが幾層にも重なっているので、どこがポイントかということは言えない」とおっしゃっていて、その通りだなと納得しました。
─── 『おやすみ、エレン』もそのポイントが幾層にも重なった作品なのですね。
はい。ひとつ『おやすみ、ロジャー』との違いをあげるとしたら、『おやすみ、ロジャー』で寝つけなかった子どもたち向けにちょっと工夫したことがあるということですね。
それは、最後にエレンがお父さんと出会って、お布団に寝かしつけられた場面に出てくる「もしも眠れなかったら、眠ったふりをしててね。」という言葉。まだ眠くない子も、この言葉を聴けば「寝たふりで良いんだ」と目を閉じると思います。そうすると、それまでエレンのおはなしを聴いているでしょうから、スーッと眠ってしまう子も出てくると思います。
───『おやすみ、ロジャー』と『おやすみ、エレン』2冊をお家に置いておけば、子どもが眠らずに困っている親御さんたちも安心ですね。
最後に、絵本ナビユーザーにメッセージをお願いいたします。
今回、『おやすみ、ロジャー』の第2弾『おやすみ、エレン』が発売されました。『おやすみ、ロジャー』を読んでもうちの子は眠らなかったという親御さんに、ぜひ、『おやすみ、エレン』を手に取っていただけたらと思います。すでに『おやすみ、ロジャー』をお持ちのご家庭にも、置いていただき、「今日はエレンにする? ロジャーにする? と日によって楽しむ作品を変えてみて、より楽しい眠りの体験をしていただけたら嬉しいです。
この絵本を読む経験は、子どもにだけ有効なのではありません。大人の方にも十分、効果が実証されています。もし、今眠りが浅い、質のいい睡眠が取れないとお悩みの方がいましたら、『おやすみ、ロジャー CD付き朗読ブック』を聴いていただければと思います。
───子どもだけでなく、大人にも効果のある絵本は珍しいですね。
この2冊の絵本は、物語を楽しむだけでなく、眠り方を体で覚えることができる作品です。眠り方を教わったことがある方はほとんどいらっしゃらないんじゃないかと思います。でも、『おやすみ、ロジャー』と『おやすみ、エレン』を読んで、眠り方を体験することができると、もし、緊張や不安で眠れない夜が来ても、体験した眠り方を思い出し、スッと眠りに入ることができるようになります。そういう意味では、大人も子どもも、そして一生役立つ作品だと思います。
───眠りのプロとして活躍されている三橋さんも寝付けない夜があるのでしょうか?
もちろん、あります。今までは、呼吸法などを実践して、リラックスすることで眠ることができましたが、『おやすみ、ロジャー』が出版されてからは本の中の葉っぱが落ちてくるフレーズをイメージするんです。すると、スーッと眠ることができます。
そうやって、ご自分で眠れるページや、フレーズなどを見つけるだけでも、寝付けないときの不安がひとつ減って、リラックスして眠ることができると思います。
───たしかに、ひとりひとり、眠りにつけるフレーズを探すと、楽しそうです。今日は本当にありがとうございました。
文・編集/木村春子
写真/所靖子