●言葉が出るまでの短い時間を、家族みんなで楽しみながら、ポジティブに。
───ボードブックの26ページの中に、たくさんの言葉とイラストが入っていて、しっかりとした装丁にもこだわりを感じました。
0〜2歳の子どもが絵本を自分で持って開きやすいように、破いてしまったりしないように、合紙という強い紙を使っています。重さも、子どもが持てる程度におさえて、実際に使いやすいように意識しました。しっかりした作りですので、プレゼントにもちょうどいいと思います。
───ハードに使っても、安心ですね。
岡本: 赤ちゃん絵本だと、1ページにイラストが1点という構成が多いですが、『0才からの発語をうながす まねっこ! あかちゃん ことばずかん』は、たくさん言葉があることに意味があるんですよね。物語絵本のように、想像を広げる読み方とは違う役割があるのではと梶川先生におっしゃっていただいて。
梶川: そうなんです。この絵本を使ってコミュニケーションを取ったり、いろいろな言葉にふれるための道具のように使うといいですよ、ということをお話ししました。1つ1つの言葉を印象的に覚えてもらうツールとして、すごくいいですよね。
───完成した絵本を見て、どう思いましたか?
梶川: とても素敵で、立派な本になりました。色もきれいで、赤ちゃんの目を引くような色合いも良いと思います。
岡本: 表紙も、男の子にも女の子にも手にとってもらえるように、中性的な色を選びました。
───最後に、おふたりのお気に入りのジェスチャーを教えてください!
うちの子は「ワニ」が大好きです。よく私の頭を食べて、満足気にしていますね。肉食系女子なのかな(笑)?
ワニが大きな口で「がぶっ」とかみつく様子が伝わる、岡本さんお気に入りのジェスチャー。
梶川:やっぱり子どもは、ダイナミックな動きがあると楽しいかもしれませんね。
岡本: たぶん、食べられた私が、「きゃー!」と言ってリアクションするのが、楽しいんだと思います。
梶川: うちは、子どもが小さい頃はあまり意識していませんでしたが、今思い出すと、「ちょうだい」や「おいしい」、「うれしい」はけっこうやっていましたね。そういう真似から始まって、だんだんコミュニケーションができるようになったので、やっぱりうちの子もそういう時期を経てきたんだなと感じます。
梶川先生のお家でもやっていた、「おいしい」のジェスチャー。
───絵本ナビ読者に向けて、メッセージをお願いします。
梶川: 「言葉を話す」ことは、すごく個人差が大きいんです。音が出るというのは、発達という意味ですごくわかりやすい現象なので、同い年くらいの他のお子さんがしゃべっているのを見聞きすると、「うちの子はまだ……」と焦ってしまう気持ちもあると思います。でも、話し出すとあっという間に追いつくということはよくあります。そこで、言葉が出るまでの間、お子さんが表現していることの意味がわかったり、ジェスチャーでやり取りができたりしたらいいなと思っています。 1歳前のお子さんと2人きりになったとき、親御さんは「何をしゃべろうかな?」と考えて、絵本を出して読むことがあるんじゃないのかなと、自分の経験から思うことがあります。いっしょに絵本を読んで、「これは○○だよ」と言うと、子どもがちょっぴり笑ってくれたり、指差しをしていくうちに楽しめたりということも。何気ない日常の行動ですが、難しく考えると、それも「言葉のインプット」になっていると思いますので、『0才からの発語をうながす まねっこ! あかちゃん ことばずかん』をそういった時期に役立てていただければと思います。
岡本: 梶川先生の言葉で印象的だったのが、「子どもが今しゃべらなかったとしても、周りの言葉を聞いて日々それらを蓄えている。だから子どもの反応を見ながら言葉を伝えることはとても大切」ということでした。やきもきして「どうしてしゃべらないんだろう」という気持ちになってしまったときは、「この読み聞かせにも意味があるんだ」と気持ちを切り替えて、絵本を開いて思い切って「パオーン!(ゾウのジェスチャー)」とやってみてもらいたいです。赤ちゃんの言葉が出るまでは本当に短い時間です。家族のみんなが楽しみながら、ポジティブに過ごすお手伝いができるような、家族のコミュニケーションを生む1冊になればいいなと思います。
───ご家庭だけでなく、保育園や幼稚園のみんなでやっても、楽しそうですね。ありがとうございました!
インタビュー:掛川晶子(絵本ナビ)
文:中村美奈子(絵本ナビ)
写真:所靖子(絵本ナビ)