●子どもを本嫌いにしないための、モン太くんシリーズ
───『モンスター一家のモン太くん』はハードカバーの読み物ですが、かなり絵が多いですよね。
幼稚園や保育園で絵本に親しんだ子どもたちが、小学生になって読み物に移行するときに、1冊を読み通せなくて、挫折するという話を聞きます。
『モンスター一家のモン太くん』は、読み物にはじめて挑戦する小学校低学年の子どもたちにちょうどいい本になるといいなと思って作りました。
文字が大きく絵が多いですが、「お話の本を1冊最後まで読んだ!」という達成感や体験は、子どもたちが本嫌いにならない第一歩だと思います。
本は、ゲームや漫画よりほんの少し根気が必要です。でも、進んでいけば、すごくおもしろい世界です。読む前にあきらめてしまうのはもったいない。
本嫌いの子どもたちを作らないために、おもしろいお話を描きたいなと思っています。
───土屋さんにとって、子どもとはどんなものですか。
ものすごく力のある、生命力のある存在ですよね。よく行く図書館のとなりに幼稚園があるんですが、感心するくらい大声をあげて騒いでいる。パワーのある子どもたちにおもしろがってもらえる話を作るには、こちらも対等になれるくらいリミッターを外さなきゃいけないのかなと思います(笑)。
以前『もっちゃうもっちゃう もうもっちゃう』を読んだ感想を、幼稚園の先生が1クラス分まとめて送ってくださったことがあるんですが、「へえ、こんなところ見てるんだな」と発見があって興味深かったです。「つちやさんは、えがうまいですね」と書いてくれた子もいましたよ(笑)。
絵を描くのは苦しいこともあるけれど、読者のお便りは、やる気が出ます(笑)。
───(笑)『モンスター一家のモン太くん』も、描いている間は、苦しかったですか?
いいえ、これは楽しかったです! 逆に、楽しすぎて、絵に時間がかかっちゃいました。下描きをパソコンに取り込んでデータにして、パソコン上で描いていくんですけど、「拡大」ができるから、どこまでも拡大して細部を描きこんじゃう(笑)。やりすぎはいけないと思ってるんですけど、つい描きこんで、逆にどこで止めるかが難しかったです。
───人間だったモン太くん、最後にはグラグラの歯がとれて・・・!?
今後の展開を期待したくなる終わり方でしたが、シリーズ続編はありますか?
続編、いま描いていますよ。今日持ってきたんですけど、ラフを見ますか?
ほら、柱の彫刻とか、ヒエログリフみたいなもようとかね・・・どこまでも拡大して描きこんじゃって・・・。

お先に大笑いさせていただいちゃいました!───わー、本当に絵のもようが細かい! これから原画制作に入られるということで、ラフをお見せできないのが残念ですが・・・。
あっ、これ、かわいい。新キャラクターですか?
はい、「ミイラくん」です。どんなお話になるのかは乞うご期待です。
───これから本にするようなアイディアは、まだたくさんあるんですか?
あります。でも形にするにはまだ何か足りないというアイディアも多いです。「モンスタータウンへようこそ」のモン太くんは、けっこう自然にアイディアが出てくるし、お話を考えるのも楽しいので、シリーズとして何冊か続けていけるんじゃないかな、続けていけたらいいなと自分でも楽しみにしています。
ちなみに、次は「マトリョーシカくん」なんてどう?と編集者に話したんですが、この案は微妙な反応で・・・(笑)。
───(笑)モンスタータウンにどんなキャラクターが登場するのか、お話はどんな展開になっていくのか、これから楽しみにしています! ありがとうございました。

記念にパチリ!
<編集後記>
世界各国への旅行のお話になると、目を輝かせて語っていらした土屋富士夫さん(笑)。あの『もっちゃうもっちゃう もうもっちゃう』を生み出した作家さんは、予想通りに少年のような雰囲気をかもし出されている方でした。
「とにかくおもしろいものを作りたい」とおっしゃっていた土屋さん。「モンスタータウンへようこそ」も、長いシリーズになりそうな予感がしてワクワクしちゃいますね!
インタビュー: 磯崎園子 (絵本ナビ編集長)
文・構成: 大和田佳世 (絵本ナビライター)