絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『モンスター一家のモン太くん』土屋富士夫さんインタビュー

デザイン科から彫金科、そして絵本へ

───装丁が素敵! いつもはページをめくるとカラフルな色が目に飛び込んでくるんですが、今回は2色の挿絵ですね。モノクロの絵に、アクセント色が1色入っています。土屋さんの2色の絵は、はじめて見るような・・・・。


ページの隅々にも遊び心が満載!

自作の絵本で、モノクロの絵ははじめてです。やってみたら意外と自分に合っているなと思いました。

───ガイコツの目の中にページ数が入っているのは、土屋さんのアイディア?

はい。でもガイコツの目の中にぴったり数字を置くのは手間がかかったみたいで、申し訳なかったなと・・・。

───見返しにガイコツが並んでいますが、一体だけ色がブルー。これがモン太くんの親友の「ガイコツくん」ですね?

そうです。たくさんガイコツがいて見分けがつかないけど、モン太くんには親友がすぐわかるというエピソードがお話の中にあるので、ガイコツを並べてみました。カバーをはがした表紙もガイコツ柄なんですよ。


カバーをとると・・・。 

一体だけブルーの「ガイコツくん」

───本当ですね。カラフルなカバーをとると、中の表紙が落ち着いた緑色なのもかっこいい!
土屋さんはデザイナーのお仕事もなさるんですか?

いいえ、デザイナーさんはちゃんといらっしゃるので、あまりあれこれお願いするのも申し訳ないなと思っているんですが、グラフィックデザインが好きで、つい細かいところが気になっちゃうんですよ。
実は多摩美術大学のデザイン科に一年いたんですが、デザイン科は合わなかった・・・(笑)。
当時はポスターカラーで彩色するんですよね。こなさなきゃいけない課題がものすごく多くて、毎週一度は徹夜する生活。それなのに均一に塗る、いわゆる「ベタ塗り」がどうしても苦手で、デザインのおもしろさにたどり着く前に挫折しました。
今だったら、パソコンの塗りつぶし機能でぱっと彩色できますから、挫折せずにすんだかもしれませんけど。

───そうだったんですか! その後、別の大学の彫金科に進まれて。彫金は合っていましたか?

彫金も合っていなかったです(笑)。削ったり溶接したり、ヤスリをかけたり、細かい作業が苦手で・・・。糸鋸の歯を何本折ったか数えきれない。だから、銅版を裏から松脂で固定して、タガネと金槌でがんがん打ち出して作るレリーフとか、大きな作品ばかり作っていました。

───では、絵本はいつ頃からやってみようと思われたんですか。

多摩美術大学時代に、何かサークルに入らなきゃと、とりあえず友人に誘われた絵本研究会に入りました。そのとき1冊絵本を作りましたけれど、今思えば「形にした」だけで、そのとき絵本に目覚めたわけではありません。
後になって『もっちゃうもっちゃう もうもっちゃう』を描くんですが、その前までは、月刊誌の仕事中心で、「こどものとも」で『てじな』という絵本を作ったり・・・その頃から、絵本のおもしろさを実感できるようになりました。

旅好き、音楽好き

───土屋さんが描くお話は、どうしようどうしよう、という子どものドキドキや葛藤がテーマになることが多いですが、お話自体が明るくて、カラッとしていますよね。
トイレを探しに行くこと。つみきを高く高く積み上げていくこと。おつかいに行くこと。大人になるとさりげない日常だけど、子どもにとってみたら大仕事。だから不安も大きく、でも好奇心も強くて。
土屋さんご自身のプロフィールを見ると、「好きなもの」がたくさん書いてありますね。世界各地を飛び回っていらっしゃるのかなあ、「ドキドキ」と「好奇心」が作品に何かパワーを与えているのかな、と共通点を探してしまいます。

旅は好きです。先日、フィリピンのパラワン諸島に行きました。ずっと前から、パラワン諸島のエルニドという場所の美しい写真を見て、行きたいなあと思っていました。ここ数年治安がよくなったと聞いて、思いきって行ってみました。無人島や、海をくぐっていかないとたどりつけないプライベートビーチや、海にそびえる奇岩が見応えがありました。自分の中の冒険魂、探検魂がリフレッシュされました。

───『よりみちエレベーター』ではハワイが登場しますが(笑)、旅行が作品に影響することはありますか。

どうなんでしょう(笑)。旅行中ってやっぱり緊張しているみたいで、絵を描いたりお話を考えたりはできないですね。リラックスしていないとなかなか制作する集中力が続かないんです。
旅行中にスケッチするのもかっこいいなと思って、やってみたことがありますけど、うまくいかなかったですね。
アイディアは、机に座っていて出てくるものじゃありませんから、どこかで影響しているかもしれませんけど。
とにかく旅は暖かいところがいいです。寒いところは暗い気分になってしまうので苦手です(笑)。

───「好きなものは、エレキギターの音、シタールの音、ボサノバ、ジミ・ヘンドリックス・・・」他にもたくさん書いてありますが(笑)、音楽もお好きなんですね。
「モン太くんのグラグラな日」ではガイコツダンサーズの歌「グラグラ ロケンロール」が登場します!
ご自分で歌を作って楽しむことはありますか?

自分で曲を書けたらいいなと思ったことはありますけど、そういう才能はありません(笑)。聴く専門です。ただ、音楽は好きですね。
絵本の文章を書くときでも、言葉のリズムがわるいと、気になります。リズムがよくなるまで何度も推敲します。この推敲していく作業は、けっこう好きです。

───ほかに印象的な旅はありますか。

南アメリカ大陸北部のギアナ高地に行きました。アーサー・コナン・ドイルの小説『失われた世界』の舞台になったテーブルマウンテンの1つ、ロライマ山の頂上にヘリコプターで降りました。雨が降ってもダメ、風が強くてもダメで、ヘリが飛べないんですよ。2日間くらい滞在する予定にして、飛べるタイミングを待ちました。
結局山の上には30分しかいられなかったですけど「おぉ、これか・・・」と(笑)。残念ながら、コナン・ドイルの小説に出てきた巨大恐竜はいなかったので、持って行った小さな恐竜の模型を地面に置いて、記念写真を撮りました。

───「モン太くんのグラグラな日」にも、絵本の他の作品にも、恐竜が出てきますね。恐竜、好きですか?

好きですね(笑)。


腕輪に大きなキーホルダー!

───ふだんはどのように過ごしていますか。

家ではリラックスしています。都内はだいたい自転車で行きます。ちょっと遠いところはスクーターです。鍵を、大きなキーホルダーで体のどこかにぶら下げていないと、すぐあっちこっちに忘れてきてしまうんです。

───電車を待ったりせずに、自由に動き回っていらっしゃるんですね(笑)。

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土屋 富士夫(つちやふじお)

  • 1953年東京都生まれ。東京芸術大学大学院彫金科修了。第三回サンリオいちご絵本童話と絵本グランプリ優秀賞などを受賞。絵本に『もっちゃう もっちゃう もうもっちゃう』(第18回ブラティスラバ世界絵本原画展入選)、『よりみちエレベーター』『つみきつんでもっとつんで』『それいけ!おもちゃだいさくせん』(以上徳間書店)、『てじな』(福音館書店)、『たっくんのおしろ』(ひさかたチャイルド)など。

作品紹介

もっちゃう もっちゃう もうもっちゃう
もっちゃう もっちゃう もうもっちゃうの試し読みができます!
作・絵:土屋 富士夫
出版社:徳間書店
よりみちエレベーター
よりみちエレベーターの試し読みができます!
作・絵:土屋 富士夫
出版社:徳間書店
つみき つんで もっと つんで
つみき つんで もっと つんでの試し読みができます!
作・絵:土屋 富士夫
出版社:徳間書店
それいけ! おもちゃだいさくせん
それいけ! おもちゃだいさくせんの試し読みができます!
作・絵:土屋 富士夫
出版社:徳間書店
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