新刊
世界の国からいただきます!

世界の国からいただきます!(徳間書店)

世界26か国の食べものを紹介した、楽しい大判絵本!

連載

2016年 読書感想文・課題図書

絵本ナビ編集部

2016/07/27

『大村智ものがたり 苦しい道こそ楽しい人生』 【小学校高学年の部】

『大村智ものがたり 苦しい道こそ楽しい人生』 【小学校高学年の部】

小学校高学年の部の課題図書は4冊です。
課題図書(読書感想文)に選ばれる作品は、

・発達段階に応じて楽しめる
・深い感動や新しい認識を与えられる
・他者を尊ぶ気持ちが貫かれている
・児童生徒の興味関心をひく内容
・流行りに迎合的になりすぎていない
・ノンフィクションは事実に基づいている
など、安心して子どもたちが読書を楽しめるものになっています。

次にどんな本を読もうかな?読ませようかな?と悩んだ時、ぜひ課題図書(読書感想文)の中から選んでみてくださいね。

■ 小学校高学年の部 『大村智ものがたり 苦しい道こそ楽しい人生』

● 選定理由は…
大村氏の少年時代からノーベル賞受賞までの生い立ちを綴る。やる気と努力とアイディア、そして何事にも誠意をもって臨めば自ずと道が開けることや、身の回りの不思議に目を向けることの大切さが伝わる。

選定コメント:公益社団法人 全国学校図書館協議会

ノーベル賞「生理学・医学賞」を受賞した大村智さんを知っていますか?
受賞会見での「私の仕事は微生物の力を借りているだけ」「微生物がやってくれた仕事を、整理したようなものですから」という控えめなコメントが、印象深かった方も多いのでは。
山梨県の農家に育った大村さんが、どのように研究をつづけ、ノーベル賞受賞に至ったか、本書では小中学生向けにわかりやすく書かれています。

意外だったのは、勉強一筋の子ども時代ではなく、家の手伝いをしてのびのびと過ごしたり、卓球やスキーなどスポーツに打ち込んだりした学生時代であったこと。大学に至っては、たまたま大学名を知ったことと、自宅から通えるというので地元の大学を受験したというのです。でもトレーニングのために大学までの15キロメートルの道のりを、なんと「走って通った」というのですからすごいです。
人との出会いを大事にしてきた大村さんが、節目、節目で心に刻んできた教えの言葉……たとえば母の「教師たる資格は、自分自身が進歩していること」や、「社会に出てからの5年間が勝負。がんばれば学生時代よりもっといい勉強ができる」などの言葉は、読んでいる私たちにも、大村さんの当時の感動と「よし」という気持ちが伝わってきます。

静岡県のゴルフ場のそばで偶然採取した土のなかにいた微生物が、大村さんの研究チームによって培養され、アメリカの研究チームと共同研究され、薬となって年間2億人を感染症から救うことになり、ノーベル賞受賞へとつながっていくのですが、本書はノーベル賞学者誕生の背景をわかりやすい言葉で綴ると同時に、人生はあらゆることが糧になるんだと再確認できる本でもあります。
そして、ふだんから日本のなかだけで成長しようとしないこと、世界を相手にしようと決めたのが大きかったのだと実感します。学者としてエリート育ちではなかった大村さんの歩いてきた道は、これからの時代を生きる子どもたちへの大きなメッセージになるのではないでしょうか。

個人的には、幼い頃から手伝ってきた農作業が研究に役立ったと大村さんが何度も述べているのですが、その基本となるお父さんの教え、そして蚕産業を率先して研究し効率化したお母さんの教えが素敵だと思いました。のちに妻となった文子さんもそろばんの名手、天真爛漫であざやかな存在感があります。大村さんが周囲の人に学ぶ気持ちを忘れずにいた姿勢が伝わってくるような気がします。小中学生の立場で読んでも、親の立場で読んでも、発見が多い本です。

(大和田佳世  絵本ナビライター)

祝・ノーベル賞受賞! 
微生物の中から2億人を救う発見をした化学者の半生。子どもから大人まで幅広い世代の心に響く感動のストーリー!

第1章 「自然が友達」の子ども時代
ウナギとりで知った自然の不思議/甲府盆地の山なみを見ながら育つ/農作業の手伝いで自然現象を学ぶ/馬の背で居眠りしても無事帰宅/養蚕の研究ノートをつけていた母親/おカイコさんのおかげで子どもは全員大学へ/植林の大切さを理解した山仕事/戦争中に英語教育/担任の鈴木先生との思い出/スポーツに明け暮れた中学時代/地元の県立韮崎高校に進学/卓球部とスキー部に入って大活躍/スキーのクロスカントリーに打ち込む/父親の一言で大学進学を決意/山梨大学に合格

第2章 人との出会いで道がひらける
マイスター制度ではじまった大学生活/自宅から大学まで走って通学/「人まねはするな! 」と横山先生から教わる/社会に出てからの5年間が勝負/思いもよらない体育教師への誘い/人は指導ひとつでどんどん向上する/もっと勉強しよう、学び直そう/学び直しはドイツ語から/本格的に化学も学び直す/東京理科大学の大学院に進学/記念式典で祝辞を読む大役を務める/文子さんとお見合い結婚/だったら世界を目指せばいいじゃないか/世界で通用するために英語で論文を書く/夜間高校の先生を辞めてさらに転進/微生物との最初の出合い

第3章 「人の役に立つ仕事をしよう! 」
朝6時に出勤する29歳の新人研究者/「この論文を書いたのは、あなたですか?」/時間も寒さも忘れて研究に没頭/北里研究所を守ろうと決意/そうだ、アメリカに行こう! /ティシュラー教授と運命の出会い/ノーベル賞受賞者とも共同研究/文子さんはキャンパスで人気者/研究費は自分でかせぐ/ アメリカの企業が「大村方式」で協力/起業からの研究費を導入

第4章 ついに発見! 2億人を救う化学物質
「人と違うことをしよう! 」――動物薬の開発/ポケットにはいつもスプーンとビニール 常にチーム全体に目配りをする/研究補助員が見つけた新種の微生物/大村研究室閉鎖のピンチ/世の中を変える微生物を発見! /メルク社で実験がはじまる/ついにエバーメクチンを発見! /エバーメクチンの実験結果/学会をわかせたひとこと/200億円以上の特許料が生まれる/動物に効くなら人間にも! /熱帯地方のオンコセルカ症にも効く/WHOも驚いたイベルメクチンの効き目/蔓延国にイベルメクチンを無料で配布/研究の成果を見にアフリカへ/集落で見たオンコセルカ症の惨状/輝いているガーナの子どもたちに救われる/ストックホルムから1本の電話が!

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