ニューヨークのハドソン川べりにたつ小さな赤い灯台は、行き来する船に、休まず光を送る毎日。ところが、巨大なジョージ・ワシントン橋が建設され、橋の放つ力強い標識灯を見たとき、灯台の心は小さくしぼんでしまうのでした……。それぞれが、オンリーワンとして自分の役目をはたすことの素晴らしさがまっすぐに伝わってくる秀作です。
ニューヨークの町を背景に、ハドソン川沿いに立つ、小さな灯台。
丸くて、赤くて、気のいい灯台です。
昼の間は、誰に話し掛けられても返事をしませんが、夜、灯台守のおじさんがやってきてガスの栓を回してくれると、灯台は、近くを遠くを行く船たちに元気に声を掛け始めます。
「ピカッ! ピカッ! ピカッ!
パッとついたよ、パッときえたよ!
きをつけるんだよ! ぼくはここにいるよ!
あぶないよ、あぶないよ、あぶないよ!
ここにいわがあるよ! ちかよっちゃだめだよ!
ピカッ! ピカッ! ピカッ!」
灯台は、みんなの役に立っていることが、とてもうれしくて、得意でした。
どの船も、灯台の光のおかげで、通り道を外れずに旅をすることができました。
そんなある日のこと…。
アメリカに実在する、1880年に建てられた小さな赤い灯台がモデルです。
絵本の最後のページに、この灯台の歴史が紹介されています。
老朽化し競売にかけられそうになった灯台が、ニューヨーク市民の熱望により、市に寄贈されたというエピソードや、さらに、この絵本の出版60周年にあたる2002年、灯台のレンズが新しく取り付けられ、眠ったままだった灯台が、再びハドソン川の水面を照らすようになったという話に、胸が熱くなりました。
この絵本の中で語られる、小さな赤い灯台の表情は、時に頼もしく、時に愛らしく、そして時に切なく、その胸の内がまっすぐ伝わってきました。
大きな橋の完成で、自分はもう必要ないと思い込んでしまった灯台は、その大きな橋から掛けられた言葉により、再び自信を取り戻します。
(この場面、灯台の気持ちが痛いほど伝わってきて、子どもに読みながら泣きそうになりました…。)
必要とされること。誰かの役に立つこと。
それが、生きていく上で、どれだけ心の支えになるか。
擬人化された灯台の、心の変化や表情(絵が素晴らしいです)を通して、教えられました。
実在の灯台のエピソードを置いておいても、この本は、自信を持ってお薦めできる、星5つの絵本です!
久々に出会えた、“いとおしい”一冊です。
訳は、バーバラ・クーニーの「ルピナスさん」の訳者・掛川恭子さんです。
(センスのいい訳をされる方で、ファンになりました^^) (あまたろうさん 40代・ママ 女の子7歳、男の子7歳)
|