しょんぼり歩いているメガネ姿の男の子。
塾の帰り、スマホをどこかに落としたらしい。
「どこにおとしたんだろう……。あれがないと……ぼくはこまるんだ」
「なにしてるの?」1匹のこぎつねに声をかけられてふりかえったぼく。
「あっ、きつねくん!」と言ったら、「なにいってるんだい? きみもきつねだろう?」と言われて……あれれ、びっくり。ぼくもいつのまにか、きつねになっています。
こぎつねに引っ張られ、着いたところは……きつねのがっこう!
「時間はまもりましょう」と先生からお小言をもらい、みんなで歌をうたいます。
その後、きつねの先生が「みなさんにかんがえてもらいたいことがあります」と言いました。
先生の手にある、見覚えのあるちいさな四角の機械は……!?
いもとようこさんの絵に「スマホ」が出てきたのもびっくりですが、この後に出てくる、こぎつねたちのセリフにもびっくりです。
「にんげんたちは、いちにちじゅう そのきかいをみるのに いそがしそうです!」
「じぶんのかわりに なんでもやってくれるきかいがあると、じぶんはいらないということになります。ぼくは、いらないといわれるのがいやです!」
「あたまもからだも つかわないと、ひますぎるとおもいます!」
なんと、題名とかわいい絵からは思いもよらない展開。ぐさぐさと心に刺さります。
元気いっぱい答えるきつねたちにくらべて、ぼくはなんとなく元気がありません。
ぼくが「きつねのがっこう」で学んだことは何だったのでしょうか?
貼り絵でぬくもりあふれる絵本を長年作ってこられた、いもとようこさん。
手や頭、時間をつかってうみだしてきたものの力を、いもとようこさんは知っているにちがいありません。
ほんとうに大切なものは何か、考えさせられる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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