センダックのなかで一番好きな本です。これは飼い犬のジェーンが家出するお話です。ジェーンは自分が、必要なものはなにもかも持っていて、愛してくれる主人がいる事を充分知ってる上で、それらを捨てて自分の目で足で、新しい世界を探しにいくのですが、その節々で出会う豚や猫の牛乳配達、赤ちゃん、ライオンとの会話ややり取りは、かなりシュールでエキセントリック。じっくり読んでも「え・なんで?」と思うような理解不能ワールドは、しかしなぜだかとても切ないのです。
最後ジェニーは自分の新しい居場所を見つけて楽しく暮らすのですが、安泰・家族・持っているもの全てを捨てる勇気と容赦のなさにただ打ちのめされて、最後のシーンで泣いてしまいました。むしろ登場人物はジェニーを含め皆、喜劇のようにユーモラスなのに。安泰を愛してやまない私には、かなり危険な本ですが、また、よほど勇気がない限り普通は体験できないとてつもない贅沢をあくまでもドライに描いた秀作だと思います。