町の楽団でセロを弾くゴーシュ。
「セロがおくれた。やり直し。」「だめだ。まるでなっていない。」
あまり上手くないゴーシュは、いつも楽長に怒鳴られてばかり。
家に帰り、一人でセロをごうごう弾き続けていると、夜中に扉をたたく音。
やってきたのは三毛猫。ゴーシュの音楽をきかないと眠れないと言うのです。
生意気なもの言いに腹を立てたゴーシュが「印度の虎狩」という曲を激しく演奏し始めると、あまりの勢いに猫の眼や額からぱちぱち火花が出て!?
その次の晩にはかっこう、次の次の晩にはたぬき、ゴーシュの元に毎晩動物たちが訪れて、演奏を要求しながら色々と注文をつけるのです。そのうちにゴーシュの演奏は・・・。
子どもの頃に読んで、そのインパクトの大きさでずっと頭から離れることのなかった物語。賢治の晩年の作品ですが、今改めて読んでみると、ゴーシュの音楽に対する情熱が垣間見えてくるのです。様々な画家によって絵本になっていますが、それだけ懐の深いお話だということなのかもしれません。
「画本 宮澤賢治」は、画家小林敏也さんが装丁から造本まで含め、賢治の物語を表現するためにこだわりぬいた絵本シリーズ。幻想的であり強く心に引っかかる場面がいくつも存在する賢治の世界を、様々な技法を用いて見事に視覚化しています。『セロ弾きのゴーシュ』も待望の復刊となりました。
版画による大胆な構図と色彩、迫力ある表現、動物たちの印象的な表情。
その独自な世界に、また新たなゴーシュの物語に出会ったような気持ちになります。
コレクションしたくなるほど質の高いこのシリーズ。他の作品も合わせてご覧になってみてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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