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ミキハウス「宮沢賢治の絵本」シリーズ『銀河鉄道の夜』 編集者 松田素子さんインタビュー

数ある宮沢賢治作品のなかでも、圧倒的な磁力をもつ『銀河鉄道の夜』。幻想的な表現、純度の高い文体から宮沢賢治の代表作と言われます。アニメーション、映画、演劇など、多くの作品に影響を与えてきたその力ははかりしれません。
そんな作品を「絵本」にまとめあげた編集者の松田素子さんは、フリー編集者として、これまでもたくさんの絵本作家の誕生に立ち会ってきた、影の立役者さんでもあります。
松田さんを、「銀河鉄道の夜」の絵本化にかきたてたのは、金井一郎さんの「翳(かげ)り絵」との出会いでした。
本来「翳り絵」は、暗闇のなかで見る光のインスタレーション。それを印刷し、絵本化するという試みはもちろん史上初です。
ミキハウスの宮沢賢治の絵本シリーズはこれまで23作目が刊行されていますが、なかでも一番のボリュームと言えばこちら『銀河鉄道の夜』。ご自宅をたずね、出版にかけた思いと、出版までの長い道のりをうかがいました。

宮沢賢治の絵本 銀河鉄道の夜
作:宮沢 賢治
絵:金井 一郎
出版社:三起商行(ミキハウス)

賢治童話を代表する作品。 そしてその絵画化に 50年の時をかけて挑み続けた金井一郎。 その幻想的な独自の画法は、 見る者を銀河へと誘い込む不思議な力を持っている。 まさに決定版!ともいえる傑作が誕生した。 独特の世界観で人気の宮沢賢治の作品。 こどもたちには新鮮な感動を、 大人には一味違う読みごたえのある物語絵本です。

金井さんの絵は、光の粒でできています。 “銀河”のように。

───ミキハウスの宮沢賢治の絵本シリーズを、編集者として手がけて10年以上になりますよね。
なかでも宮沢賢治の代表作と言われる『銀河鉄道の夜』は、松田さん個人にとっても、特別な思い入れがあったと前回のインタビューでうかがっています。(こちら>>>
数々のすばらしく個性的な絵描きさんたちとお仕事をされていらっしゃいますが、『銀河鉄道の夜』の絵は、造形作家である金井一郎さんの「翳(かげ)り絵」でした。なぜ金井さんだったのですか?


それは……、出会ってしまったからです。金井さんの「翳り絵」に。
いまから約20年以上前、一枚の展覧会のチラシが目にとまりました。それが金井一郎さんの「銀河鉄道の夜」の作品との出会いでした。そのチラシに惹かれて、私は池袋の西武百貨店にあった美術館に出かけました……。
入ると館内が真っ暗で、かなり広い空間が、光の作品で埋め尽くされていました。暗闇のなか、絵だけが光って浮かび上がり、壁面に天の川のように連なっている……。その幻想的な美しさに、息をのみました。

その会場に金井一郎さんがいらしたんです。私は挨拶もそこそこに、感動のあまりつい「いつか、私が本にします!」と口走ってしまった(笑)。
私はそのとき出版社をやめた後で、フリーランスでしたから、出版するといったって何のあてもないし、後ろ盾もない立場なのに、そんなことを言ってしまった(笑)。とにかく「本にしたい!」という強い思いだけでした。

───「翳り絵」という言葉を聞いたとき、はじめて聞く言葉だと思いました。どんなものだろう?と想像できなかったです。

「翳り絵」とは、金井さんが独自にたどりついた画法で、その呼び名も金井さんがつけられたものです。ですから聞いたことがないのも当然。「絵」と言うか、それは、暗闇のなかで見る光のインスタレーションと言った方がいいかもしれない作品です。

───紙に描かれたのではないものを、どうやって絵本にするかについては、不安はなかったのですか。
松田さんには「本にできる」と確信があったのでしょうか。

いいえ、確信なんて何もないです。具体的なことはもうぜんぶ頭から飛んじゃっているの。だって、作品を目の前にしたとき、「すごい!! こんなスゴイ作品を、人に見せずにはいられない、誰かに伝えずにはいられない」そんな気持ちしかありませんでした。編集者の性(さが)ですかね。どうやったらこの光の集積を紙上に表現できるのかとか、技術的なことを冷静に考えたのはずーっと後です(笑)。

───松田さんをそこまで感動させた「翳り絵」。実物を見てみたいです!

そう言われると思ってました(笑)。じゃあちょっと部屋を移動しましょうか……。
実物を見るには、真っ暗でなければいけないので。きょうのために、金井さんから一枚だけお借りしてきましたから。


実物を見せていただきました!

───うわ〜〜〜〜〜っ。ほんとうに……星があつまっているみたい。

ね、すごいでしょう。で、(明るい部屋へもどってきて……)こちらがさっきみなさんが見ていたものです。

───えっ、まっしろ! 何もない!!


明るいところでは、ただの箱。

ね、こうなると何も見えないでしょう? さっきは下にライトボックスをあてていたんです。
つまり、この箱の中にセットされている原画の下から光が通過してきた。その結果として、一番上のこの白い紙がスクリーンになって、そこに光の絵が現れたわけです。明るいところでは何も見えない……。
『銀河鉄道の夜』に収録した絵とは、このようなものなんです……、すべて。


「二人がその白い道を、肩をならべて行きますと(中略)、間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原に来ました。」

───驚きました。いったいどのような仕組みになっているのですか。

原画は、黒い紙(ラシャ紙)が2枚です。その2枚の紙に、それぞれ針で穴があけられているんです。たくさんのたくさんの穴です。そして下から光をあてると、絵が見える。それだけじゃなくて、いま、不思議な奥ゆき感があったでしょう? 1枚の絵に穴をあけただけだったら、あの奥ゆき感は出ないんです。
描き方というか、制作の手順を説明すると、まず、ライトテーブルの上に黒い紙を置く。そして木綿針でひたすら点を打ち、紙に無数の穴をあけていく。金井さんの作業を映像で見たことがありますが、それこそもう瞑想状態に入っちゃってるんじゃないかというくらいの、黙々とした作業です。
それが終わったら、穴のあいたそれぞれの紙を、アクリル板ではさみます。2枚の紙をぴたっとくっつけたのでは奥ゆきが出ないんです。下から、アクリル板→黒紙→アクリル板→黒紙→アクリル板、そして最後に、一番上に白い紙(トレーシングペーパーのようなもの)といった具合に重ねていく。その半透明の白い紙が、最終的に絵を映し出すための“スクリーン”になります。
2枚の紙と半透明スクリーン、それらの間隔を変えることで、奥ゆき感も変わる。つまり都合3層の複合体でできていると言っていいかもしれません。
金井さんが名づけたこの「翳り絵」という手法は、そうやって複数の層を光が通過してくることで、不思議な奥ゆきとともに浮かび上がる、そんな絵なんです。


ジョバンニが車掌に切符を出す場面。鳥捕りが横からのぞいて「おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上さえ行ける切符だ」と言う。

───先に下描きを描いてから、黒い紙に穴をあけていくのでしょうか。

下絵と言っても、本当にざくっとした大枠だけで、「下描きしない」と言ってもいいくらいだそうです。実際、暗闇のなかでひたすら針で穴をあけていくのですからね。細かいことなどは、もう長年の勘でしょうね。

───下絵なしで描いて重ねるのですか。信じられません!

この絵は、いったい何で描かれているのか? と問われれば、絵の具じゃないし、黒い紙でもないし、穴でもない。それは最終的には、「光の粒」で描かれていると答えることになります。「光の点」のあつまりでできている。それって……まさに「星空」。まさに「銀河」でしょう?
夜空の星も、そしてそれが集まった天の川もすべて、私たちは、ひとつひとつの星が放つ「光」を見ている……。同じことなんです。
そう思うと、「翳り絵」は、『銀河鉄道の夜』を描き出す画法として、これ以上ぴったりの画法があるだろうかと思うくらいの、究極の画法ではないかと感じます。

少年時代から「銀河鉄道の夜」を旅しつづけ、たどりついた金井さんの50年

───『銀河鉄道の夜』は、孤独な少年ジョバンニが、病身の母と暮らし、活版所で働きながら、帰ってこない父親を待っているという設定で物語がはじまりますね。星祭りの夜なのに、ジョバンニは友人とカラスウリの灯りを川へ流しに行くこともできないし、いじめっ子に冷たい言葉をあびせかけられたりする。
逃げるようにかけ上がって行った丘で寝転んでいると、いつのまにか、あたりで「銀河ステーション」という不思議な声がして、ふと気がつくとジョバンニは銀河鉄道の車両のなかにいます。気がつけばそこには親友のカムパネルラもいる。そしてふたりはいっしょに銀河を旅する。北十字星から南十字星へ、生と死をめぐる物語とも言えるこのお話を、多くの人がビジュアル化していますね。金井さんにとって『銀河鉄道の夜』とは何だったのか。絵にしようと思ったきっかけは何だったのか、お聞きしたことはありますか。

金井さんが『銀河鉄道の夜』をはじめて読んだのは、小学4年生のときだったそうです。そのときの衝撃は忘れられないとおっしゃっていました。当時の金井少年は、ジョバンニの心情に我が身を重ねてしまうような状況にあった、ともお聞きしました。それが金井さんを突き動かし、やがてその後の人生を貫くほどの、ビジュアル化への情熱へとつながっていった。……とはいえ、いくらお聞きしたことをここで話しても、そういう衝動の深さと切実さは、私のような他人が説明できることではないだろうと思います。

───金井さんが小学生の頃……、いつ頃でしょうか。

金井さんは、戦争が終わってすぐの1946年生まれですから、小学4年生というと、1955、6年頃でしょうか。
実は金井さんの生家は、明治から大正時代にかけての日本絵本創成期に名を残す「金井信生堂」。そこのご子息なのですが、金井さんが小学生のときに廃業することになり、転居などの環境の変化のなかで、ご本人はつらい日々を送っていたということでした。はっきりとはおっしゃらないけれど、いまで言う「いじめ」に近いことがあったのだと思われます。
『銀河鉄道の夜』のなかで、同級生のザネリが、ジョバンニに冷たい言葉を投げつける場面がありますね。金井さんは当時、そこを読んだとき、思わず心のなかで「ジョバンニ、死ぬなよ……」と語りかけたとおっしゃっていました。
そうして金井さんは、13歳の頃からぽつぽつと、その物語を絵にすることをはじめます。10代終わり頃には影絵での制作をはじめ、20代になって「翳り絵」の技法をあみだした。それからひたすら作りつづけていたそうです。私が池袋で出会った時点ですでに30年くらい経っていて、それからさらに20年……、数えれば50年近くの長きにわたって続けてこられた……。

───歳月に目がくらむような気がします……。
金井一郎さんの肩書きは「造形作家」となっていますが、「翳り絵」以外ではどんなものを作っていらっしゃるのでしょうか。

乾燥させた植物のなかに小さな光を仕込んだ灯りや、物語性にあふれるオブジェなども制作されています。でもね、ほら、この植物ライトだって、カラスウリの灯りなの。「翳り絵」に限らず、おそらくずっと金井さんは『銀河鉄道の夜』のなかを旅しているんだと思う。その延長線上に、さまざまな制作物があるのでしょう。まさに、そうであるということを、金井さん自身の口からもお聞きしたことがありますし……。


暗闇のなかでほのかに光る、カラスウリの灯り。息をのむほどきれいです。

あかるいところで見るとこんな感じ。なかにLEDライトが仕込まれています。


さまざまな植物をランプにした金井さんの作品。幻想的な美しさ!

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  • 1955年山口県生まれ。編集者、作家。児童図書出版の偕成社に入社。雑誌「月刊MOE」の創刊メンバーとなり、同誌の編集長を務めた後1989年に退社。その後はフリーランスとして絵本を中心に活動。これまでに約300冊以上の本の誕生にかかわってきた。各地でのワークショップを通して、新人作家の育成にもつとめており、なかやみわ、はたこうしろう、長谷川義史など、多くの絵本作家の誕生にも編集者としてたちあい、詩人まど・みちおの画集なども手がけた。また自然やサイエンスの分野においても、企画編集、および執筆者として活動している。

作品紹介

宮沢賢治の絵本 銀河鉄道の夜
作:宮沢 賢治
絵:金井 一郎
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 猫の事務所
作:宮沢 賢治
絵:植垣 歩子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 虔十公園林
作:宮沢 賢治
絵:伊藤 秀男
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 黄いろのトマト
作:宮沢 賢治
絵:降矢 なな
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 セロ弾きのゴーシュ
作:宮沢 賢治
絵:さとう あや
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 寓話 洞熊学校を卒業した三人
作:宮沢 賢治
絵:大島 妙子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 氷河鼠の毛皮
作:宮沢 賢治
絵:堀川 理万子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 蛙のゴム靴
作:宮沢 賢治
絵:松成 真理子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 山男の四月
作:宮沢 賢治
絵:飯野 和好
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 土神ときつね
作:宮沢 賢治
絵:大畑 いくの
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 気のいい火山弾
作:宮沢 賢治
絵:田中 清代
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 月夜のでんしんばしら
作:宮沢 賢治
絵:竹内 通雅
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 ツェねずみ
作:宮沢 賢治
絵:石井 聖岳
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 よだかの星
作:宮沢 賢治
絵:ささめや ゆき
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 狼森と笊森、盗森
作:宮沢 賢治
絵:片山 健
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 いちょうの実
作:宮沢 賢治
絵:及川 賢治
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 なめとこ山の熊
作:宮沢 賢治
絵:あべ 弘士
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 オツベルと象
作:宮沢 賢治
絵:荒井 良二
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 やまなし
作:宮沢 賢治
絵:川上 和生
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 どんぐりと山猫
作:宮沢 賢治
絵:田島 征三
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 雪わたり
作:宮沢 賢治
絵:方緒 良
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 注文の多い料理店
作:宮沢 賢治
絵:スズキ コージ
出版社:三起商行(ミキハウス)
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