よだかはみにくい鳥でした。美しいカワセミや蜂すずめの兄弟にもかかわらず、彼だけがみにくいのです。鳥の仲間からは嫌われ、鷹からは「たか」の名前を使うなと言われます。鷹に名前を改めないと殺すと脅されたよだかは、自分も虫を殺して(食べて)生きていることを思い、このような悲しみの関係から逃れたいと涙するのです。
宮沢賢治の名作『よだかの星』は弱い者いじめや外見の美醜による差別の否定に加え、権力や食物連鎖など、宮沢賢治が抱えていた問題も含んだ作品です。その解釈は尽きませんが、こちらの作品は人気画家である三永ワヲさんの手によって、新しい物語世界が立ち上がりました。三永さんは『それは、君が見た青だった』『木陰でハイタッチ』などの代表作を持つ若者に大人気の漫画家さん。文豪の古き良きテキストに寄り添いつつ、若者の心を掴むイラストで物語に引き込んでいきます。少し手に取りにくい名作も身近なものに感じられ、共感するはずです。
文研出版の「エコトバ」シリーズの第1作目。こちらのシリーズでは、新進気鋭のイラストレーターたちが文豪の作品を新しい感性によりビジュアル化していきます。「故きを温ねて新しきを知る」をテーマに、小学校高学年から中高生、また大人までもが楽しめる内容になっていますので、今後の作品も合わせてチェックしてくださいね。
(出合聡美 絵本ナビライター)
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