本書は、判明している限りの膨大な演奏会の記録データを集計し、さまざまな角度・観点から分析し、フルトヴェングラーの人間性にまで迫ろうというものだ。なぜ、そんな面倒なことをするのか? その答えは、この国のクラシック音楽評論界に対する筆者の「疑問」というか「怒り」にある、ということに尽きる。この国の業界では、特に1960年代から1970年代、演奏家に対しレッテルを貼り、「決めつけ」を行なっていた。たとえば、「フルトヴェングラーはマーラーの交響曲を振ったことがない。」情報に乏しかった我々は、当時これらのレッテルを無条件に信用していた。
しかし、これらの多くが事実と違っていたことは、その後ネット社会の発展とともに次々と証明されている。そうなったのは「レコードのみの情報で演奏家を判断するこの国の業界の体質」が原因である。この体質は現在でもなお続いていると言えよう。もちろん、レッテルを貼ったり決めつけたりしたほうがレコードを売りやすいのだから、営業上致し方なかった面もある。そこは否定しない。でも、時代は変わったのだ。
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