
大正から昭和にかけて230を超える著作を残した、佐賀県神埼市出身の文学者・吉田絃二郎の童話絵本シリーズ。主人公は、高い山の上にそびえる、大きなクスノキです。 クスノキのかげに生える小さな木や草花たちは、クスの手に守られ、嵐が来ても枝や茎を折られることはありません。しかしヒイラギやノギクは「星の光だって見ることもできない」「お月さまだってろくに拝めもしない」とクスを疎み、クスはその悪口をただ悲しそうに黙って聞いているだけでした。 ある日、山の麓からたくさんの木こりがやってきます。お殿様に献上しようと、斧を振り上げクスを切り始めてしまい……
自分に心ない言葉を投げる草花にも、斧を振り上げる木こりたちにも、分け隔てなく惜しみない優しさを注ぐクスノキ。居なくなって初めてその存在の大きさに気づかされる結末は、やるせなさを残します。それでも無償の献身の根は枯れ果てることなく、新たな芽へと命をつないでいきます。人を思いやること、人からの優しさに感謝することの大切さをそっと伝える一冊です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)

高い山の上に一本の大きなクスの木がそびえていました。クスのかげになっている小さな木や草花は、どんなあらしがきても枝一つ、くき一つ折られたことはありませんでした。けれどもヒイラギは「大きなクスのじいさんのせいで、星の光だって見ることもできない。」ノギクは「お月さまだってろくに拝めもしない。」と言いました。クスは草花の悪口を悲しそうにだまって聞いていました。
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