ある日、お留守番をしていたアッちゃんに、デパート帰りのお母さんが買ってきたお土産。
それはバイオリンでした。
その不思議な音が大好きになったアッちゃんはレッスンに通い、メキメキと頭角をあらわしていきます。月日が経ち、憧れの「東京芸術大学」に入学したあっちゃん。しかし大学の先生は、生徒たちに強い口調で言いました。
「音楽は頭で考えるものじゃない! ヴァイオリンはハート心で弾くんだ!」
わからなかったら大学の隣にある動物園へ行き、オランウータンと仲よくなってみなさいとアドバイスをうけたアッちゃんは、生まれて初めてオランウータンの親子と対面をしたのです。
赤ちゃんに厳しいしつけをしたり、こちらが睨むと睨み返し微笑めばじっと見つめ返したりと、はだかのままの素の姿。
「生きている」
聞こえてきたのは、彼らの心臓の音、命の音でした??。
世界で活躍するヴァイオリニスト・天満敦子さんの歩みが描かれる自伝的絵本。ヴァイオリニストを目指す原点にオランウータンがいたとは、誰もが驚くエピソードではないでしょうか。人間と生きもの、本来は言葉も意志も通じるはずありませんが、彼らの生命のダイナミズムを受け止めたアッちゃん。その感動が源泉となり、湧き出るように響かせる音色を、いま改めて聴いてみたいと感じました。
アジアからヨーロッパを駆け巡ってきた天満さんのコンサートの思い出、闘病から復帰された現在までが、懐かしい写真やご本人の力強いメッセージと共に綴られています。その姿がいきいき、生命力に満ち溢れているのは、やはりオランウータンとの出会いがあってこそ。天満さんのファンの皆さんも、音楽の道の入り口に立つ子どもたちにも読んでほしい一冊です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
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