小学校4年生のアゲハは、昆虫が大好きな女の子。昆虫YouTuberの動画に夢中で、夏休みも半ば、そろそろ自由研究のテーマを考えなくちゃいけないのに腰の重い日々です。
そんなある日、ふとしたきっかけで出会ったのは『昆虫レストランななほし』。昆虫専用のレストラン?ドキドキしながら店長の天道さんに聞いてみると……
「うちはね、昆虫を料理して、おいしく食べるレストランなんだ」
さまざまな昆虫の料理を味わい、なりたちを教えてもらううち、すっかり昆虫食のとりこになったアゲハ。自由研究のテーマは昆虫食に、その魅力をたくさんの人に伝えたいと天道さんやお父さんに協力してもらいYouTuberアゲハとして動画で紹介することにしたのです……!
さぁ食べてみて!と言われてもアゲハのように気軽に食するにはハードルが高い昆虫食。そんな抵抗感が薄れていくのは、天道さんが昆虫をみんなの大好きなメニューに変身させてくれるから。天ぷら、チリソース、クリームソーダ……サクサク!甘い!ビールにも合う!アゲハや常連客・秋さんの感想に、香りだけでもかいでみたいという気持ちがむくむくっと湧き立ちます。
さらに昆虫食は地球の限りある資源や環境を守る役割も果たしていること。日本にも世界にも昔から食文化として根づいている地域がたくさんあること。天道さんの話を通して、理解も深まっていくのです。
一方で小学生YouTuberとしてテレビでも話題となったアゲハは、クラスメイトの悪質ないじめを受けるように。驚きや感動をたくさんの人たちに伝えたい、投稿への思いは純粋でも、受け止めてもらえないことが必ずある。「デジタルタトゥー」という言葉で語られているアゲハが体験したSNSの負の側面は、投稿動画が生活の一部になっている今の子どもたちにも自分ごととして真っ直ぐに向き合ってもらいたい問題です。
昆虫食の魅力を伝えるためのチャレンジでぶつかった壁。周りの大人たちの力を借りながらアゲハは一つ一つ、解決していきます。その気持ちの揺れや変化まで丁寧に描かれた等身大の物語は、きっと子どもたちの心をとらえることでしょう。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
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