この本は昆虫図鑑ではありません。
昆虫「生きざま」図鑑です。帯には「昆虫の生態を道徳的に超解説!」とあり、思わず「?」が浮かびますが、読めばきっと「そういうことね!」となるでしょう。
例えばアリジゴク。「一匹で巣を作り、エサが来るのを待つ」と言われれば、ただ「ふーん」で終わってしまいそうなところ。でも「ひとりぼっちで何日待っても、一匹もつかまえられないこともある。」と言われたとたん、かわいそう、さみしそうだと思ってしまいますよね。
現実では、アリジゴクがどんなことを思っているのかを知る術はありませんが、相手の気持ちがわからないのは人間同士でも同じこと。自分以外の人間が何を考えているかなんて、正確に知ることは不可能です。
でも相手の気持ちを想像してみることは、自分の行動や考え方を見つめるきっかけになるのではないでしょうか。
作者は児童文学作家でプチ生物研究家の谷本雄治さん。監修は昆虫学者の三田村敏正さんが担当しており、虫への愛と知識がいっぱい詰まっているだけでなく、子どもたちが社会で生きていくための心のヒントが散りばめられています。
昆虫たちの「生きざま」に注目したこの図鑑。これまでと違った視点で昆虫たちを見つめることで、たくさんの発見がありそうです!
(近野明日花 絵本ナビライター)
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