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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『うさぎのルーピースー』 どいかやさんインタビュー

「朝おきると、机のしたで うさぎが死んでいました。」

ハッとする一文からはじまる絵本『うさぎのルーピースー』。作者は自然の中で生き物と一緒に暮らし、そこから受け取った物語の種を「チリとチリリ」シリーズのようなあたたかくやさしい絵本として私たちに届けてくれる、絵本作家のどいかやさんです。『うさぎのルーピースー』は2006年に一度出版され、当時の読者に驚きと多くの気づきを与えました。そしてこの度、新装版として一回り大きくなって発売されることとなりました。どいかやさんに『うさぎのルーピースー』新装版発売について、お話しを伺いました。

  • うさぎのルーピースー(新装版)

    出版社からの内容紹介

    朝起きると、私の家の机の下でうさぎがしんでいました。埋めてあげようと外に出ると、うさぎの体が輝いて見えました。まるで「鹿皮色(ルーピースー)みたい」。私はルーピースーの絵を描いて、庭に埋めてあげました。1年後に土にかえったルーピースーで野菜をつくって、みんなでいただこう。そう考えるとわたしは心からルーピースーがうらやましいと思いました。自然のなかにある死と再生を、静かに鮮やかに描いた1冊。2006年小学館より刊行された絵本を、新たな表紙で判型を一回り大きくしした新装版。巻末に書き下ろしの「小さなうさぎの物語」を掲載。

この人にインタビューしました

どい かや

どい かや (どいかや)

1969年、東京都生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。絵本の作品に『パンちゃんのおさんぽ』『いたずらコヨーテキュウ』『やまねのネンネ』(BL出版)、『みけねこキャラコ』『こねこのポカリナ』『おはなのすきなトラリーヌ』『トラリーヌとあおむしさん』『ふゆのひのトラリーヌ』(偕成社)、『チップとチョコのおでかけ』『チップとチョコのおつかい』『チップとチョコのおるすばん』(文溪堂)、『くりちゃんとひまわりのたね』『くりちゃんとピーとナーとツー』(ポプラ社)、『チリとチリリ』『チリとチリリ うみのおはなし』『チリとチリリ まちのおはなし』(アリス館)、『ねずみちゃんとりすちゃん おしゃべりの巻』(学習研究社)、『カロンとコロン はるなつあきふゆ4つのおはなし』(主婦と生活社)、『ねこのかあさんのあさごはん』(小学館)など多数。千葉県在住。

「好き度が高い」人の熱い思いに支えられ続ける『うさぎのルーピースー』

───新装版『うさぎのルーピースー』発売、おめでとうございます。今回、ほるぷ出版さんから復刊のご提案があったそうですが、最初に『うさぎのルーピースー』を復刊したいと聞いたときはどのように思いましたか?

『うさぎのルーピースー』は、もともと個展で発表した作品でした。「これを絵本に!」と言ってくださる編集者さんの熱い思いがあって出版された本だと思っています。出版後すぐに絶版になってしまったものの、知り合いに「すごく好き」と言ってくれる人もいて、私も思い入れのある一冊でしたので、最近になり自費出版しました。 それを知ったほるぷ出版の編集者さんが、やはり「ルーピースー」が大好きだと熱心に復刊の想いを伝えてくださいました。本当にありがたかったです。この作品は、数は少ないけれど「好き度が高い」人の熱い思いに支えられているんだなと思いました(笑)。

───私も「好き度が高い」人間のひとりでしたので、この作品の復刊はとても嬉しいです。今回、絵本を拝見したとき、新装版は元の絵本のサイズよりもひと回り大きくなっていることに気づきました。表紙もガラッと変わっていて、より印象的に感じました。

表紙の変更は、担当編集者さんのアイデアです。『うさぎのルーピースー』の物語を深く理解してくださった上でのお考えと、より子どもたちに届きやすい形にという判断だったと思います。 私も今回のデザインを見たとき、「とってもいい!」と思いました。表紙・裏表紙と本文との関係に、深い森の中に閉じ込められた静かなルーピースーの物語が表現されていると思いました。

───新装版の後ろの見返しには新しく「もうひとつの うさぎの話」が掲載されていますね。

新装版の出版にあたり、読者に向けて何か新しいものを取り入れたいという提案が担当編集者さんからありました。その時に、過去に実際に起きた、別のうさぎのエピソードが真っ先に浮かんだので、それを小さなおはなしにしてみました。『うさぎのルーピースー』も実話が元になっているんですよ。

───机の下に子ウサギが死んでいたという絵本の冒頭のエピソードは、やはり実体験をもとに生まれたんですね。

はい。『うさぎのルーピースー』は実際におきたこと、それについて感じたことをそのまま描いた作品です。ある朝起きると机の下で子うさぎが死んでいて、うちの猫たちの誰かがやったに違いないのです。

───絵本では「わたしじゃないわよ そんな大きいの もってこれない」と言っているねこですが、やはり現実では立派な狩人ですから……。

その後はほぼ絵本と同じです。

埋葬したルーピースーを「心からうらやましい」と思った理由は?

───絵本と同じというのは、抱き上げたウサギの毛の色がとてもきれいな「鹿皮色(ルーピースー)」だったこと。うさぎの絵を何枚も描いたこと。植物でルーピースーを飾りつけしたことですね。
埋葬したルーピースーがこれから庭の一部となり、野菜を育てる栄養となることを思いながら、主人公である女性は「心からうらやましい」と言います。「うらやましい」という感情に、すこしドキッとしました。

「うらやましい」については、動物が死ぬといつも庭に埋めていたので、死後に他者の栄養となりながら消えて無くなれるのはいいなあと、兼ねてから憧れを抱いていたので、その気持ちを素直につづっただけなのです。

───2006年当時、『うさぎのルーピースー』のように生き物の死を絵本で描くことはとても珍しかったように思います。この絵本が発売されたとき、周りからどんな反応があったか覚えていますか?

反響は……当時私が感じたのは「全く反響なし」あるいは、むしろ批判的な意見を耳にしたかなあ。でもとにかく「すごく好き!」という友人は少数いたし(笑)、私の思いを美しい本にしてもらってとても嬉しかったし、感謝していました。そして短く静かに消えていく本でいいと思っていました。

───短く静かに消えていくと思われていた絵本が、どいかやさんの手で自費出版され、さらに今回新装版として発売されるなんて、すごく不思議な魅力を持つ作品なんだと思います。今回、新装版の制作が進む段階で、当時の原画を眺める機会も多かったのではないですか? 当時の原画を今、改めて見た感想をお聞かせください。

展覧会で販売してしまったので原画はほとんど残っていないんです。でも、今回新装版を作るにあたり、あらためてどれもすごく大好きな絵だなあと思いました。今はもう描けません。

───もし今後、『うさぎのルーピースー』のような、「生と死」を描く作品を描くきっかけがあったとき、ご自身の「生と死」に対する考えは最初に『うさぎのルーピースー』を出版した時と変化があると思いますか?

自然の多い場所にいると植物、虫、小動物など生まれてくるもの死んでいくものを多く目にします。その美しさ、不思議さにいつもどきどきくわくわく感動していました。それが絵本を作るパワーになっていたと思います。ルーピースーを作った30代の頃にくらべて50代の今はさらに多くの生と死と出会って、自分もちょっと死に近づいてきて……どうかなあ、でも「生と死」に対する考え方はあのころとほとんど変わってはいないですね。
ただ『うさぎのルーピースー』は「生と死」について描いた作品という感覚はなくて、他の絵本と同じ、私の日常からふと生まれたおはなしだと思っています。

───これからもどいかやさんの日常からふと生まれた絵本が、私たちの手に届くことを楽しみにしています。今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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