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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  大反響! 子どもが育つ、はみがき・おきがえの絵本『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』『パジャマでぽん!』くぼまちこさんインタビュー

新人作家さんの絵本でありながら、異例の売行きを見せている『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』。出版後約2年で16刷を重ねています。いったいどんな方が作ったのでしょうか? 第2作目となる『パジャマでぽん!』が出版されるにあたり、作者のくぼまちこさんにインタビューしました。

デビュー作『はみがきれっしゃ しゅぱつしんこう!』が発売後すぐに重版!

  • はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!

    みどころ

    歯磨きがきらいなたっくん。でも、「しゅっしゅっぽー!」と、はみがきれっしゃがやってくれば、どんな子の口もあーんと開きます!前の歯についたにんじん、奥の歯にはさまったおにく、
    つぎつぎきれいにしていきます。歯への興味も深めます。

この人にインタビューしました

くぼ まちこ

くぼ まちこ (くぼまちこ)

1977 年、埼玉県生まれ。印刷会社でデザイナーとして勤務した後、出版社にて幼児向け教材の商品開発を担当したのち、絵本の制作に取り組む。『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』がデビュー作。

───「『ぼく はみがき だいきらい』たっくんがいいました。」最初の一文で子どもたちの心をぐっとつかんでしまいます(笑)。デビュー作『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』(以下、『はみがきれっしゃ』と表記)が大好評ですが、この絵本を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

くぼまちこさん

甥っ子が食事どきに「ごはん、たべない!」とぐずっていたことがありました。「たっくん」よりちょっと小さいくらいの年齢のときです。私の姉(甥っ子のお母さん)が「はやく食べなさい」というのですが、なかなか食べなくて。
そのとき、甥っ子のお父さんが、スプーンを大好きな新幹線に見立てて「びゅーーん!」といいながら口に近づけたら、それまでまったく食べようとしなかったのに、笑い声をあげながら食べはじめて、お茶碗一杯くらいのごはんを食べ終えてしまいました。

そばで見ていて、ちょっとした工夫で子どもの気持ちは明るくなるんだなと思いました。本当にごはんが食べたくなかったわけじゃなく、気持ちをほぐしてあげれば、できなかったことができるんだ、と。それが記憶に残っていて、『はみがきれっしゃ』のアイディアは生まれました。

───「ごはん、たべない!」「はみがきしない!」というときの子どもって、なかなか頑固で大変ですよね。甥っ子さんのお父さん、すごいですね!

甥っ子が、電車が大好きだったのもあると思います。おんぶして線路ぎわを歩くと、寝るような子でしたから。
子どもが楽しい気持ちになれるように…と、子どものことだけを考えて作ったので、出来上がった絵本がお母さんたちに好評だと知ったときは驚きました。

───今までもいわゆる「はみがき絵本」はありましたが、歯ブラシがこんなにかわいい列車になる絵本ははじめてです! 絵本ナビにお母さんたちから寄せられたレビューをいくつかご紹介します。

これはいいですね! シュシュシュシュと言いながら、まるで機関車が走るように歯磨きができること間違いなしです。
(りおらんらんさん 東京都 女の子6歳、男の子2歳)

ゴロンと膝に寝転ぶまでは良いんだけど、ゴシゴシされるのが嫌な3歳の娘。でも、びっくり。この絵本を読んであげたら、ゴシゴシされるのが大好きになりました。ゴシゴシするたび、娘がにっこりするんです。「大好きな列車が、自分の口の中を旅している!」って思っているのかな? パパッと歯磨きを終わろうとしたら、「お母さん、はみがきれっしゃ、まだ通ってないよ」ですって。
(ゆかこ@3人ママさん 石川県 女の子5歳、女の子3歳、男の子0歳)

はみがきれっしゃが歯磨きして食べかすが取れていく場面は,食べかすがキラキラしてて,キラキラのきれいなものを見るのが好きな息子がうれしそうでした。
(てつじんこさん 愛知県 男の子6歳、男の子3歳)

食べかすを奇麗に磨いていく様子がとてもうまく描かれているなぁと思います。絵本を読んだ後、歯磨きをする際に「はみがきれっしゃ!」と言って歯磨きをしていました。
(いちこうさん ママ 兵庫県)

歯の絵が詳細なので、どのように食べ物が歯に付着しているのか、子供も理解できそう。はみがきの大切さを知ってもらえる絵本だと思いました。
(そよかぜはなさん ママ 茨城県)

制作にあたっては、歯科医院に取材をしたり、歯医者さんに内容をチェックしていただいたりしています。お母さんお父さんをはじめ、保育士さんや幼稚園の先生など、子どもの日常にかかわる方々に読んでいただけるのはとても嬉しいです。

2作目のテーマはおきがえ。『パジャマでぽん!』

  • パジャマでぽん!

    みどころ

    「きょうはひとりでパジャマきるよ」というみーちゃん。でも、頭の出口も、手足の出口も、わかりにくくて大変!ねずみくんに「でぐちはこっちだよ」と案内してもらいながら、ひとつひとつ、ぽん!とぬけだしていきます。

───このたび第2作が出版されるそうですね。

はい。『パジャマでぽん!』のテーマは「おきがえ」です。はみがきは子どもにとって身近な生活がテーマでした。次の作品も子どもに身近なテーマで、ちょっとした転換で子どもが楽しくできることって何だろう、と考えることからはじまりました。私自身に子どもはいませんが、子育て中の方に「何が大変ですか?」「子どもが(自分でできなくて)困っていたことは何ですか?」とうかがったりしました。
『パジャマでぽん!』は、1人できがえられるようになった子の「できた!」という嬉しさが感じられる絵本にしたいと思って作りました。

───ご自身の小さい頃のおきがえで、覚えていらっしゃることはありますか?

私自身は何をするのにも一つ一つの行動に時間がかかるほうで、「はやくきがえなさい」といわれることが多かった気がします。でも母に、そで口から手を入れて、自分の手をひっぱってもらったのは嬉しかったことを覚えています。

───『パジャマでぽん!』は、絵本にはおきがえを手伝ってくれる、かわいいねずみくんが登場しますね。

はい。ねずみくんが、「みーちゃん」を見守る案内役として登場します。
『はみがきれっしゃ』にも、『パジャマでぽん!』にも、大人は登場しません。『はみがきれっしゃ』では、たっくんのお母さんのラフ絵を描いたこともあったのですが、シンプルに、「自分でやりたい!」という子どもの気持ちに近づけて絵本にしていくと、大人の場面はなくなりました。

───『はみがきれっしゃ』はたっくんと歯ブラシだけ、『パジャマでぽん!』はみーちゃんとねずみくんだけ。シンプルな中に、「しゅっしゅっ」や「ぽん!」の音がくりかえし出てくるのが、読みやすく、心地いいです。絵本制作以前はどんなお仕事をなさっていたのですか?

印刷会社でデザイナーとして働いたあと、出版社で幼稚園・保育園の幼児向けの教材を開発する仕事をしていました。コップや園児服やクレヨンなど、子どもの生活用具を、デザインしたり作ったりする仕事です。11年間続けました。最後の2年間は、週の半分は会社に行き、残りの半分は、絵本のワークショップ「チャブックス」に通いながら絵本作りをする日々でした。

左は、くぼまちこさんの作品を出版社に持ち込み、デビューのきっかけを作ったフリーの編集者、松田素子さん

───「チャブックス」とは…?

絵本編集者の松田素子さんが開催されているワークショップです。もともとは、三重県四日市市の子どもの本専門店「メリーゴーランド」の絵本塾に応募したとき、講評会で選考委員だった松田さんにお会いしました。最初は松田さんがどんな方なのか、どんな絵本作家さんのどの作品を手がけた方なのか(*)まったく知りませんでした。ただ、子どもや絵本について、真摯に向き合っていらっしゃることがとても伝わってきました。そのとき、松田さんに声をかけていただいたことが「チャブックス」へ参加するきっかけになりました。

(*松田素子さんは、ミキハウスの「宮沢賢治絵本シリーズ」をはじめ、なかやみわさん、長谷川義史さん、はたこうしろうさん、ひがしちからさんなど多くの作家の絵本を手がけています)

───そのときの松田さんとのお話の中で、印象に残っている言葉がありましたら教えてください。

「シンプルに」「リズムを大事に」「読者といっしょに歩んでいける絵本を作りなさい、作者だけが先走ってもダメ。読者と同じテンポで歩んでいけるように」とか…絵本を作っていて、今でも「そうだな」と立ち返るような言葉です。

───松田さんは、最初にくぼまちこさんの作品を見たときはどのように思いましたか?

松田:作品も描き手も、きっともっと伸びるな、と感じました。くぼさんが「チャブックス」に通いはじめてから、『はみがきれっしゃ』の出版が決まるまで1年くらいだったと思いますが、通常はもっと、1年以上かかるんです。くぼさんは出版までが短かったですね。

「やったー! とれたぞ!」かわいらしさの裏の緻密な取材

───『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』(以下、『はみがきれっしゃ』と表記)制作についてもう少し聞かせてください。もってきてくださったダミー絵本を数えると…21冊もあります! 1年間でこんなに作ったのですか?

『はみがきれっしゃ』ダミー絵本がこんなにたくさん!
色を検討したダミー

ダミーはぜんぶで…30冊くらい作ったと思います。最初は口の中のシーンが少なかったんですけど、だんだん、たっくんの口の中をはみがきれっしゃが走っていく場面を増やしていきました。
出版社の編集者さんに、後半にドラマがほしいといわれたことから、お肉がはさまって「あれれ とれないぞ」、「やったー! とれたぞ!」の場面が生まれました。

「まえのはえきにとうちゃーく」(『はみがきれっしゃ』より)

───爽快ですね〜! とれた野菜やお肉が気持ちよさそう(笑)。

松田:振り返ると、たくさん作ったな…とびっくりしますね。完成した『はみがきれっしゃ』を見て、まさに“魔法の絵本”だなと思うのは、よく大人が子どもに「はみがきしないと虫歯になるよ!」という「おどし」が全くなくて、「しゅっしゅっ」と読むだけで子どもが思わず口をあけちゃうのよね(笑)。

───大人にとっても、子どもを叱らなくてよいので“魔法の絵本”です! くぼまちこさんがはじめて絵本のラフを作ったのは、いつでしょうか。『はみがきれっしゃ』以前にラフを制作されましたか?

ちゃんとしたラフを作ったのは『はみがきれっしゃ』がはじめてです。幼児教材を作りながら、いつか独立して子どものための物作りをしていきたい、自分にできることはなんだろうと考えたとき、絵を描くことが好きだし、絵本を作ってみたらどうだろうかと考えました。「メリーゴーランド」のお店に興味があって、ホームページを見たことから、絵本塾があることを知りました。絵本を作る何かきっかけにつながればと「はみがきれっしゃ」のラフを応募したんです。

松田:応募作を見て、くぼさんのことが気になっていたので、講評会でお会いしたときに「チャブックスに参加してみない?」と私からお誘いしました。

───具体的にはどんなことをするワークショップですか?

松田:私が開催しているといわれますが、本当は、私が「やるぞ!」といって続けているワークショップではないんですよ。私は場所を提供し、出てきたラフを見て意見をいいますが、参加者があれこれ互いに意見をいいあう場でもあります。和室のちゃぶ台を使っているからと「チャブックス」と命名したのは参加者です。

───参加者は、絵本作家志望の方々ですか?

松田:そうです。中には元保育士さんもいるし、子育て中の主婦もいます。編集者が参加することもあります。
あるとき『はみがきれっしゃ』のダミー絵本を見た参加者が、「あのう…、子どもの歯ってこんなにきれいに並んでなくて、もうちょっと隙間だらけなんです」というんですね。しまった、それは盲点だったと思って、あわててくぼさんと歯医者さんに取材に行きました。

編集者・松田素子さん

───そういえば…小さい子の乳歯は、けっこう隙間だらけですね。

歯医者さんで、子どもの歯の形や数について教えてもらいました。上下奥歯2本を同じ形で描いていたら、上奥から2本目はやや三角形、下奥から2本目は外側に少しふくらみがあるのが、乳歯の特徴だよ、とか…。歯ブラシの当て方も教えてもらいました。
むし歯予防教室などもされている、市役所保健センターの歯科衛生士さんにもお話をうかがったのですが、ダミーの絵もていねいに見てくださって、アドバイスをたくさんもらいました。

───歯の場面がリアルなのはそういうわけだったのですね!

くぼさんが制作した歯の模型。人参、ハムなど食事の食べかすに見立てたものも制作し、実際に歯間にはめ込んで…
はみがきれっしゃの模型も! かわいいですよね

じつは、たっくんがみがいた箇所は、子どもが虫歯になりやすいところなのです。前歯の裏側や、上の歯や、歯と歯茎の際、奥歯の隙間や、内側など、歯ブラシが届きにくくて、よくみがき残しのあるところに歯ブラシをあてています。

───なるほど、たしかに磨きにくい場所かも…。

カバー袖には、たっくんが食べたハンバーグやおみそ汁を描いています。前の歯の人参とわかめ、奥の歯のとうもろこしとお肉、ブロッコリーやハムやいちご…。食べたものと、たっくんの口の中の食べかすがリンクするように。小さいところですが、気づいた子に楽しんでもらえたらと思って描きました。

───他に絵を描くとき、気をつけたことはありますか?

子どもの歯なので、歯の特徴はきちんとおさえつつも、かわいらしさも表現したい気持ちがありました。子どもの歯って、見てみると本当に小さいんです。だから小さくて可愛くて…というイメージをもちながら、子どもの歯に見えるように描きました。

「ほっぺのあかりをぱちっとつけて…」の場面のラフ。右上が完成した本の場面。食べかすや歯の描き方もよりリアルに

───リアルであり、かつ、子ども目線で描かれ、同時にキャラクターのかわいらしさもある本の魅力は、長年くぼさんが子どもが使う商品を作ってきた経験が根底にあるのでしょうね。制作中、行き詰まったことはありませんでしたか?

「はみがきれっしゃ」のキャラクターは最初からいて、それ自身はもう走り出そうとしているけれど、構成ができていなくてなかなか走り出せないというジレンマを感じた時期はありました。
いろんな方の意見をいただいてはじめて「そうなのか!」とわかったり、自分でも歯医者さんに行って調べて、子どもの歯のことがわかってきて…。一つ一つ確かめながら、構成を練り直し、肉付けしていきました。
行き詰まったところから一気に何かできるというよりは、一つ一つ納得できる絵や構成にしていったのだと思います。

おきがえって気持ちいい! 『パジャマでぽん!』

───パジャマにきがえるみーちゃんの絵に、子どもらしいしぐさがよく描かれていますね。どんな工夫をされたのですか?

『パジャマでぽん!』を描く前に、保育園に取材に行って、2、3歳児の様子を見せてもらいました。原画を描く際は、そのときに撮った写真をなるべく身近に貼って、毎日見ながら、「やわらかくなれー」「まるくなれー」と思いながらみーちゃんを描いていました。

保育園では2歳と3歳のクラスに参加させてもらいました。2歳クラスでは一年かけて、毎日のくりかえしの中で少しずつきがえられるようになって、3歳になると自立して、失敗もしながらやっていくのですね。2歳と3歳ってこんなにできることがちがうのか!と思いました。

「こんどは て!」(『パジャマでぽん!』より)
「さいごは おしり!」(『パジャマでぽん!』より)

───みーちゃんは何歳くらいのイメージですか?

みーちゃんは2歳から3歳になる子どもをイメージしています。ちなみに、『はみがきれっしゃ』のたっくんは、満3歳くらいのイメージです。
取材のときの子どもたちの後ろ姿や、手をあげるときのなにげないしぐさ、そういった姿が絵のヒントになりました。いきなり私の膝にどかっと座って靴下をはきはじめる子がいたのですが、この子おもらししていないかな、大丈夫かな?と心配になるくらいじっとり熱くて…(笑)。子どもってこんなに体が熱いんだ!と実感しました。そういう実感が実際の絵本づくりに生きていると思います。とても貴重な時間でした。

───具体的に絵はどんなふうに描かれるのですか?

ラフは鉛筆で描きます。何度もダミー絵本を作って、ダミーの最終的な完成品が下絵の元になります。原画は、ダミーの完成品をベースに下絵を描いて、その後、アクリル絵の具で塗っていきます。

表紙ラフ。ねずみくんの位置や、手首の描き方など、ちょっとずつ違う細部に注目

───カット割りの場面もおもしろいですね。

ラフでは1ページに1カット、2カットの時期もありましたが、最終的に4カットになっていきました。ぎゅーっとここで詰まって、ぱっと手足が出るというふうになっていったんです。
足を「ぽん!」と突き出す場面は、胴体部分も絵に入れて描いている期間が長くて、思いきって足を大きく描くまでに時間がかかりました。このメリハリは松田さんからのアドバイスも大きかったです。

試行錯誤の末、完成したページは4カットに(右下)
当初はみーちゃんの手やお尻を入れて描いていましたが、思いきって足だけ大きく「ぽん!」と突き出した場面になりました

───すごい勢いですものね! ねずみくんもページから飛び出しています(笑)。

松田:みーちゃんのパジャマの、胴体と、腕と、足の部分と、色がそれぞれちがうことに気づきましたか? これはすごく重要なことなんです。
みーちゃんはまず頭をいれるでしょう。それから腕をとおして、足を入れる。最後にお尻を入れる。いくつもの大きな難関を突破しなくちゃならないの(笑)。仮に、ぜんぶ同じ色のパジャマだったと仮定してみてください。実際にはそういうパジャマが多いんだけど…。絵に描いたとき、どんなふうに見えると思いますか?

───うーん…。パジャマのどの部分かが、ぱっと見たとき、わかりにくいかもしれませんね。

松田:そうですよね。つまり「難関」ごとに色を変えているんです。「頭(体)」「手」「足」それぞれのステップごとに、色が変わるほうが小さな子どもには伝わりやすい。そういうことをくぼさんは考えている。
『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』も『パジャマでぽん!』も大きな意味では「しつけ絵本」かもしれない。でも私から見ると「しつけ」という言葉がピンとこなくて、むしろくぼさんは、「子どもの力」を信じている作家さんだなあと思うんです。

───「子どもの力」…。たしかに『はみがきれっしゃ』も『パジャマでぽん!』も、子どもが楽しそうにがんばる姿が輝いて見えます。

松田:親って子どもに対してすぐ「(自分が)なんとかしてあげなきゃ」と思っちゃうでしょう。それが「しつけ」につながるんだろうなと思います。でも、たとえば「はみがきしないと虫歯になるよ」「1人でおきがえできないと、幼稚園で困っちゃうよ」とか…そういう言葉や視点が、くぼさんの絵本には一切入っていないんです。

───そうですね。「…しなくちゃいけないから」ではなく、ただ楽しさが伝わってきます。

松田:子どものことを、「大人が教えてあげないといけない」という対象として見ていたら、2冊の絵本は生まれなかったと思います。

『はみがきれっしゃ』に負けず、『パジャマでぽん!』のダミーも多数

最初にお会いしたとき、松田さんから「子どもって、自分でやりたい!という気持ちが強いよね。自分で『あっ』って気がついて、自分が成長したい気持ちをもっているよね」といわれたことがずっと頭にあって、制作中もときどき思い出していました。

───これから『パジャマでぽん!』が出版されて、みなさんの手に届いていくと思います。この絵本をどんなふうに楽しんでほしいですか?

洋服の中をとおるとき、一瞬、トンネルの中をとおるような暗さを感じることがありますよね。そういう一瞬の暗さやドキドキ感を主人公といっしょに体感してもらえたらいいなと思います。そして、なかなか顔や手足が出なくて「うーん」「ひっかかった…」と、ぎゅーっと詰まって、「ぽん!」の大きな音とともに出たときの解放感、爽快感を感じてもらえたらと思います。
「ぽん!」がくりかえし出てくるので、音のひびきを楽しんだり、実際に洋服をきがえるときにも「ぽん!」といって、手足が出たときの気持ちよさをいっしょにあじわってもらえたら嬉しいです。

おきがえは、できるようになれば無意識にできてしまうことですが、みーちゃん、ねずみくんといっしょに、失敗もしながら、毎日のおきがえが少しでも楽しくなったらいいなと思っています。

───ありがとうございました!

くぼまちこさんに もうすこし質問!

Q. 子どもの頃はどんな絵本を読んでいましたか?

『ぐるんぱのようちえん』や『ジオジオのかんむり』などの月刊絵本がうちにあって、1人で没頭して、くりかえし絵を見ていました。カラフルなおひめさま絵本の『シンデレラ』や『いばらひめ』も好きでした。

Q. 趣味はありますか?

仕事と趣味が一緒になってしまっていますが…。出かけると、つい子どもに目がいってしまいます。子どもがやっていることや、何気ないしぐさを見ているのは楽しいです。つい最近、町角で歩道を区切る二脚のスタンドのようなもの(A型バリケードという名前だそうですが)に、はまり込むようによりかかって、それで十分楽しんでいる子を見かけました。この間は、床屋さんをのぞいている子がいて…親はもう行こうとしているんだけれど、お店の中に顔を半分入れて、「みてるだけだよお!」と叫んでいる子を見ました(笑)。ささいなことですが、そういうことがすごくおもしろいです。

Q. 『はみがきれっしゃ』が人気になっている実感はありますか?

ときどき周囲から感想をいただいて、「ほっぺのあかりをぱちっとつけて」のページが気に入って、はみがきするよというと洗面所の電気をつけにいく子どもの話や、「はみがき」と聞くとこの絵本をもってくる小さな子がいるとか、おしゃべりがまだできないような子が色や絵を楽しんでいると聞くと、「ひとりひとりの子に届いているんだな」と実感して嬉しいです。

松田さんから ひとこと!
「制作の過程で、くぼまちこさんの取材の徹底ぶりと、粘り強さに感心することがたくさんありました。おだやか〜に見えて、すごくガッツがある人です(笑)」

おまけ。上野の森親子フェスタや書店イベントで、このはみがきれっしゃくんが出動中。なんと、くぼさんがふわふわ感にこだわって手作りされたそう! 下部分は、ダンボール家具を再利用して、子どもたちが座れる丈夫なイスになっています

インタビュー・構成・文: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所靖子

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