●「本好きの子どもを育てたい」という思いが出版社設立へ繋がった

2018年3月に発売された知育絵本「ろっぺいブックス はじめてのえほん」第1弾。「あひるのあくび」という風に、2語の組み合わせの言葉と文字を50音順で紹介した『あいうえお ことばあそび』。数の数え方を絵で見せる『かぞえてみよう 1・2・3』。パトカーや新幹線など身近な乗り物を紹介した『かっこいい のりもの』。動物園にいる動物が勢ぞろいした『どうぶつえん だいすき』の4冊がラインナップされています。7月には第2弾4冊が発売され、年内に第3弾4冊の刊行が予定されています。
───萬松堂さんは、創業が江戸末期という老舗ですが、元々本屋さんだったのですか?
───出版社名の「島屋六平」(しまやろっぺい)は人の名前のようですが、萬松堂さんに縁のある人物ですか?
中山:「島屋六平」は人物名ではなく、屋号です。創業者の初代六平が、江戸末期に起業したときにつけた名前です。江戸時代から明治時代初期の本屋は、版元(出版社)と販売店の機能を併せ持った店だったことと、「初心にかえる」という意味で、新しく立ち上げた出版社の名前になりました。

JR新潟駅の北側にあるアーケード街の一角にある、萬松堂本店
───老舗の歴史と理念を表す名前だったんですね。では、新しく出版社を作ったのはなぜですか?
───それが、自社出版に繋がったんですね。それにしても、出版社の設立はすごく思い切ったことだと思います。

今回の絵本作りの中心人物、萬松堂本店の店長兼島屋六平の担当課長・中山英さんがお話しをしてくれました。
───出版事業を始めることについて、社内の反応はどうでしたか?
中山:書店で生き残っていくためには、新たな挑戦が必要だという意見で、一致していました。個人的にも、出版を手がけることになり、うれしかったです。今まで本はたくさん売っていましたが、自分たちが作った本を売るという経験は初めてですから。ただ島屋六平は編集者がいませんので、ほかの出版社さんや編集プロダクションさんと協力して今後も本作りをしていきたいと考えています。
───島屋六平は、老舗本屋さんの情熱から誕生した出版社だったんですね。初刊行物となった「ろっぺいブックス」シリーズのコンセプトはなんですか?

───それが2018年3月に発売されたシリーズ第1弾『あいうえお ことばあそび』『かぞえてみよう 1・2・3』『どうぶつえん だいすき』『かっこいい のりもの』の4冊なんですね。
───作り手と売り手、両方の知識と意見を取り入れた本作りをなさったんですね。 絵本ですから、絵ももちろんこだわりがあると思いますが、絵を描く方はどんな風に決めましたか?
中山:画家さんたちは、実際に東京で編集を進める方たちに選定をお願いしました。4冊同時発売ということで、すべて同じタッチの絵にするか、それともそれぞれ別の方にお願いするのかかなり悩んだそうですが、バリエーションがあった方がよいだろうということで、『あいうえお ことばあそび』は、そねえつこさん、『かぞえてみよう 1・2・3』はかいちとおるさん、『かっこいい のりもの』は、にしかたたくしさん、『どうぶつえん だいすき』は、とりごえまりさんに決まりました。
───4人ともいろんな絵本を手がけている方で、ファーストブックにぴったりのかわいい絵ですね。
次のページでは、シリーズ第1弾の4冊について、それぞれこだわりのポイントを紹介します。