───repicbookという会社名の、bookは「本」ですよね。「repic」はどのような意味ですか? 何か特別な思いが込められているのでしょうか。

絵本専門出版社「repicbook(リピックブック)」は、
子どもたちが喜ぶ絵本を作りたいという強い思いから設立えがわ:「repicbook」 は、接頭辞によく使われている 「re」 と絵本を意味する 「picture book」 を語源とする造語になります。
「re」にはいろいろな意味があると思いますが、主に re (再び:新しい絵本の形を日々追い求めて)、Relux(リラックス:のんびりと優雅な時間には癒やし系絵本を)、Remember(忘れない:いつまでも記憶に残る絵本)という3つの意味合いを意識しています。
“リピック”という音には、リズミカルでかわいいイメージもあり、気に入っています。多くの方に覚えていただけるとうれしいですね。
───「絵本でゲームができる」と言ってもピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

すわべ:あるサイトのニュースに、【最新技術と「昭和」の世界観がコラボレーション!】と紹介されていました。いまの時代、子どもがスマートフォンを触り、ゲームを覚えていくのは、自然な流れです。『でんしゃで10こ目』のゲームは、シンプルでなつかしく、飽きのこないゲームが多くて、玩具感覚で安心して楽しむことができると思います。
───たしかに、おじいちゃんやおばあちゃんでもわかるようなゲームが多いですよね。
すわべ:オンラインゲームのようにインターネットのサイトにつながって課金される心配もなければ広告もない。また、複雑なゲームにのめり込みすぎて親や祖父母が理解できないということもありません。
『でんしゃで10こ目』の中にあるゲームは、神経衰弱や野球盤ゲーム、15パズルなど、安心して遊べるものばかりです。ちょっとした電車の移動や、お出かけに、この本1冊持っているだけでいろいろ楽しめると思いますよ。
───15パズルって、けっこう難しいんですよね。ゲームの内容は、すわべさん、えがわさんが子どもの頃に遊んだ実体験がもとになっているんですか。
すわべ:そうですね。すごろくや野球盤など、どちらかというとテレビゲームが登場する以前の昭和の玩具の世界観ですよね(笑)。実際に自分が遊んだ玩具もあり、15パズルは、子どもの頃から得意だったんですよ(笑)。

5円玉鉄道ゲーム、やってみました。
ゴールすると快感です!
えがわ:5円玉鉄道ゲームは、5円玉を転がす力加減が微妙にむずかしいんですよね。私は小さい頃、駄菓子屋さんの軒先に置いてあった「10円玉ゲーム」でよく遊んでいましたが、かなり近い形で再現されていると思います。
先日、大学生の子ども二人にやらせてみたら、意外にも取り合いながら夢中になって遊んでいました(笑)。ゲームによっては、幅広い年齢層の方に楽しんでいただけそうです。
───単純なゲームですけどうまくいかないと悔しいし必死になりますね(笑)。野球盤ゲームもやってみましたが、豪速球がくるのでなかなか打てなかったです!
すわべ:野球盤ゲームなどは、スマートフォンやタブレットの種類によって、球の速さが変わるんです。最新機種になると、球が速くなる。いろいろ試してみるとおもしろいかもしれません。弊社は絵本の出版社なので、速さを同じにするまで対応しきれなかった部分もあるんですが(笑)。
───ARのゲーム部分はどなたが作られているんですか?
すわべ:ゲームのプログラマー5名が関わっています。例えばパズルとアクションゲームでは、プログラマーが変わるんです。人によってプログラムの得意分野がちがうので。
───5名! つまりAR部分はすわべさんがディレクションされつつ、プログラマーとして5名の開発者が携っているんですね。
すわべ:はい。読み聞かせムービーのナレーションは、スタジオを借りてプロのナレーターさんにお願いし、効果音は専用のミキサーの方が作業しました。テーマ曲は、RIKOさんという歌手にお願いし、作詞・作曲はえがわが担当しました。絵本に使われているイラストも、「みさき」のキャラクターのイメージから、構成や展開まで含め、えがわがすべて決めていますが、人物とペイント担当の方、背景担当の方と、別々のイラストレーターだったりします。ARに出てくるゲームのイラストは、また別の方にお願いしているんですよ。
───大人数! ふつうの絵本とはぜんぜんちがう作り方ですね。

えがわさんのいちばんのお気に入りのページえがわ:そうですね。想像以上に多くの人が関わっていて、それぞれの能力・技術がAR絵本『でんしゃで10こ目』の中にぎゅっと詰まっています。手に取った絵本の表面には見えない部分に多くのお金を費やしたので、外見はハードカバーという豪華な仕様にすることはできませんでした。
ただ、荷物の多い母親の立場になって考えてみると、重量が増すハードカバー本よりも軽くて便利かもしれません(笑)。気軽に外出のお供としてこの本をバッグにしのばせていただき、お子様が飽きた時のお助け本として役に立てれば、よりうれしいですね。

たくさんの人の手がかかったイラスト。
このページを先ほどの手順にそってアプリ「Junaio」でスキャンすると、読み聞かせムービーを見ることができます!
───この本を体験された方からの感想は届きはじめていますか。
すわべ:発売してまもなく、repicbookのホームページに「読み聞かせムービーがよかったです」というメッセージをいただき感激しました。でも、絵本として楽しむだけでなく、ゲームを含めて一冊まるごと遊び尽くしていただけるとさらにうれしいです。
30ページには、テーマソング「でんしゃで10こ目」のムービーが隠れています。
こちらは、えがわさんが作詞作曲を手掛けており、明るく楽しい曲に仕上がっています!
repicbookのホームページに譜面や歌詞がアップされてますので、親子で一緒に歌ってみてくださいね。
───実物の絵本にスマートフォンやタブレットをかざしてARコンテンツを楽しむスタイルは、これからどんどん広がっていくかもしれませんね。
えがわ:そうですね。世の中がますます進化していくなかで、古き良き絵本のイメージを損なわずして、新しい風を吹き込むスタイルはひとつのチャレンジだと思っています。ユーザーの方にどのように受け入れられるかはまだわかりませんが、「楽しみの詰まったお得な絵本」「絵本だけど、それだけじゃない絵本」として浸透してもらえたらいいなと思っています。ARという言葉もまだまだ認知度は低いと思いますので、この本でAR体験をすることでもっと身近にARを感じていただければと思います。そして、この本について楽しかったことやわかりづらかったこと、今後の希望など、ユーザーの方から教えていただけると大変ありがたいです。対戦機能で遊べるゲームもありますので、ぜひご兄弟で楽しんでくださいね。
───実際にAR体験をしてみて、新ジャンル絵本の可能性に驚きを隠せませんでした!さらなる展開に期待します!
きょうはお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。


記念にぱちり。
<編集後記>
はじめて知るAR絵本の世界。大人が思う以上に、子どもがデジタルに慣れ親しむ時代が来ていることを、実感するインタビューでした。
AR絵本『でんしゃで10こ目』は絵本ナビで全ページためしよみ実施中です。
なんと、ためしよみの画面にスマートフォンをかざして、実際にARを体験できるのだとか!!(事前にアプリの準備をお忘れなく〜)
みなさんもぜひ一度ためしてみて、AR絵本の世界をのぞいてくださいね。
(絵本についているハガキに感想を書いて送ると、うれしいプレゼントが当たる太っ腹キャンペーン実施中です!)
★工作コーナーやキャラ弁など、楽しい企画が盛りだくさんの repicbookのホームページはこちらからご覧ください。
インタビュー:竹原雅子(絵本ナビ編集部)
編集協力:大和田佳世(絵本ナビライター)
撮影:所靖子