───えがわさんは、お話を書かれているんですよね。どんなお話ですか。

えがわ:小学校低学年の女の子が、ひとりで電車に乗って、おばあちゃんに会いに行くお話です。10こ目の駅に着くまでに、ちょっとしたハプニングが起こったり、いろいろな感情を経験したりするんですよ。
───主人公の「みさきちゃん」には、モデルがいるんですか。

でんしゃで10こ目の絵コンテえがわ:はい。当時小学生だった娘がモデルになっています。経験値の少ない子どもたちにとって、ちょっとしたことがおもしろかったり、不思議に思えたり、慌ててしまったりすることって多いですよね。10こ目の駅までという時間の中で、いろいろな感情をみさきは経験するのですが、二人の子育ての経験から、子ども目線になって「でんしゃで10こ目」を書き上げました。
また、この絵本は結婚前に亡くなった母への思いも託しているんです。孫の顔を見ることなく他界した無念な気持ちをこの絵本を通じてかなえてあげたかったんです。娘もできあがった本を読んで、感慨深そうにしていました。
───最後の場面「今日もやさしい笑顔のおばあちゃんが、みさきを待っていてくれました」の「おばあちゃん」は、えがわさんのお母様がモデルなんですね。
えがわ:はい。ストーリーは10年くらい前から温めていたのですが、絵本を制作するのであれば今の時代に合った新しい絵本を出したいということで、ARとのコラボが実現しました。
ストーリー絵本としても楽しめるだけではなく、実はコンテンツが埋め込まれていて別の角度からも絵本を楽しむことができるなんて、ちょっぴりわくわくすると思いませんか?
私自身、童心に返った気分で楽しみながら作ることができました(笑)。ストーリーとゲームは連携こそしていませんが、各コンテンツにはそのページのイラストと共通するキーワードがあるんですよ。
───たとえば、どんなところでしょう?
えがわ:電車の窓から野球場が見えるシーンのページでは、「野球盤」のゲームが出てきたり、外国人の仲良しカップルを見つめるページでは、世界の国旗と地形をあわせる「国あわせ神経衰弱」、おばあちゃんに勇気を出して席をゆずり5円玉のお守りをもらうページでは、「5円玉鉄道ゲーム」が出てきます。
絵本はみさきを主人公にして進行していきますが、そのなかに関連性のあるゲームがさりげなく隠れているというわけです。

お父さんやおじいちゃんには懐かしい野球盤ゲーム
世界の国旗と地形をあわせる「国あわせ神経衰弱」
───キーワードはつながっているけれど、絵本は絵本、ゲームはゲームで、それぞれ独立して楽しめるのですね。
ところでえがわさんは、この『でんしゃで10こ目』がはじめての絵本制作ですか?

3Dの「ごりりん」登場!興奮するとすぐ胸をたたくゴリラの女の子。
かざし方で、いろんな方向から見ることができます。
うまくいけば後ろ姿も見える!?
えがわ:絵本の制作は、今回がはじめてです。これまでのキャリアは絵本とは関係のない分野でしたが、小さい頃から絵本やキャラクターが大好きで、いろいろなキャラクターの小物を集めていました。AR部分で飛び出してくるキャラクターたちも、私がイメージしたものから生まれているんですよ(笑)。

落書きからはじまるキャラクタースケッチ。
ここからピンクのクマ「じゅのん」が誕生(下段、中央)
幼い頃の娘さんのお気に入りがピンクのクマだった
ことが、イメージの原点となっているそう。
ピンクのクマ「じゅのん」は、絵本の中にもさりげなく
登場します。どこにいるのか探してみるのも楽しそうですね。
───ちなみに、Junaio(ジュナイオ)という無料アプリは、この絵本だけに対応しているのですか。
すわべ:いいえ、いろいろなものに対応しています。検索してみればすぐ見つかると思いますが、「東京地下鉄エレベーターマップ」など、多くの広告印刷物で使われています。そのため弊社の絵本で遊ぶときには、最初にQRコードをスキャンする必要があるのです。テレビでチャンネルを合わせるのと同じ感覚です。Junaioは、App StoreやGoogle Playストアからインストールできます。
現在、弊社のホームページで、ARのクリスマスカードを手作りするイベントを開催しています。ぬり絵になっていて、自分で塗ったキャラクターの「じゅのん」や「ごりりん」にスマートフォンをかざすと、クリスマスソングなどクリスマスならではのARが登場しますので、是非ともお友だちへのクリスマスカードに使用してみてください。
<「Junaio」ダウンロードURL>
◆App Store:
◆Google Play:
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