●落語にハマって、落語の台本を書いてみたいと思いました。
───「母恋いくらげ」との出会いを伺うと、大島さんご自身もかなり落語好きだと感じるのですが、落語好きになったきっかけは?
最初のきっかけは編集者の方と一緒に観に行った公演でした。それが柳家喬太郎さんの落語会で、行ってみたら喬太郎さんがすごく面白くて、編集者さんと2人で大興奮! それまではテレビで「笑点」を見るか、ラジオで流れていたら聴くくらいだったのですが、毎月必ず落語を聴きに行くくらい、はまってしまったんです。しばらくはただ落語好きとして、寄席に通うだけだったのですが、あるとき、喬太郎さんが「落語作家への道」という落語の台本を書くための講座を一般の人にも教えていると知って、その講座を受けました。

───「落語作家への道」、とても気になる講座ですね。
喬太郎さんと三遊亭白鳥(さんゆうていはくちょう)さん、林家彦いち(はやしやひこいち)さんから半年間に渡って、落語の書き方を学ぶんです。『母恋いくらげ』を作った編集者さんも一緒に習い始めて、結局1年半以上通いました。その講座で初めて書いた落語は、落語台本コンクールに応募して最終選考まで残ったんですよ。
───初めて書いた落語が、コンクールの最終選考まで残るなんてすごいですね!
それが「当世落語風絵本」の第一弾となった『孝行手首』なんです。
- 当世落語風絵本 孝行手首
- 作・絵:大島 妙子
- 出版社:理論社
奇想天外、驚天動地の大島ワールド全開。落語絵本。
───『孝行手首』は、20年前にわが子を事故で無くしてしまった、夫婦の元へ、ある日、手首がやってくる……という、あらすじだけ聞くと、かなり奇想天外なおはなしですが、どうやって思いついたのでしょうか?
絵本作家になってすぐに、児童書出版社さんで月1回の連載を頂けたんですが、その中に夢の中で手首と出会うというおはなしを書いたんです。そのはなしをベースに、落語の原稿を描き上げました。それを編集者さんが気に入ってくださり、絵本になったのですが、落語の原稿として書いたものの、きちんと寄席で披露された作品ではなかったので、「当世落語“風”絵本」と入れてもらいました。
───本当だ! 『母恋いくらげ』は「当世落語絵本」ですが、『孝行手首』には「落語“風”絵本」って入ってる!
───これもかなりの力作ですね。 せっかくなので、読み聞かせしていただいても良いですか?
───映画の予告みたいで、続きがとっても気になりました。「当世落語絵本」はシリーズとして、まだまだ続きそうですね。

大島さんのお散歩コース、日枝神社。神の使いであるお猿さんと一緒に記念写真。
『母恋いくらげ』は私が喬太郎さんの落語と出会って、絵本にしたいと熱望した作品なので、『母恋いくらげ』の絵本が出版できたときは、ほかの落語は絵本にしなくてもいいというくらい、強く思っていたのですが、落語の中にはまだまだ面白いものがたくさんあるので、いずれ作品にできたらいいなと思っています。
───大島さんがどんな落語を絵本にされるのか、これからも楽しみにしています。あらためて『母恋いくらげ』をどういう風に楽しんでほしいですか?
編集後記
「落語絵本を作っているから、きっと落語好きな方なんだろうな……」と取材前に思っていましたが、おはなしを伺い、落語作家を目指すほど落語愛溢れる方だということにビックリしました。でも、落語だけでなく、子どもの頃は琴を習っていたりと、和事全般が好きだという大島さん。そんな大島さんだからこそ描ける絵のファンになり、自分の文章に絵を描いてほしいと希望する文章家さん達も多いんだろうなと思いました。取材では現在進行中の絵本の原画も見せていただきました。七三分けの鬼のサラリーマンが大活躍するおはなし。これからの新刊がますます楽しみになる作家さんです。
