●梅干し、ひょうたん、やかん……。独特で愛らしいキャラクターたち
───『うめじいのたんじょうび』を読んであらためて思ったのですが、漬物たちが主人公の絵本なんて、しかもそれがこんなに可愛いなんて、かがくいさんってすごいです!(笑)
キャラクターの立て方が独特ですよね。クマくんとかねずみくんとか、いわゆる一般的に絵本でよく出てくる可愛いキャラクターではなくて、やかんや、まくらが主人公になる。

『もくもくやかん』『みみかきめいじん』のラフ。
───『みみかきめいじん』の「ひょ・うーたんせんせい」には笑っちゃいました!
弟子の「ひょうすけ」が愛らしい〜〜〜!
しかも意外な登場人物もいて……。
『みみかきめいじん』はクリスマス前に“ちょっと意外な絵本”としても読み聞かせしたいですね。
透明人間の耳かきをしてあげていたら、くしゃみで、見えないはずの人が見えちゃった! 透明人間の正体、それは……というちょっとしたユーモアのネタですね(笑)。
ひょ・うーたん先生のみみかきが気持ちよすぎて、ぞうさんはこんな顔。(『みみかきめいじん』)
「おおきく いきを すってー。」す〜〜〜う〜〜。(『もくもくやかん』)
「たいへんです! でまえをたのんだのに、からのおさらとどんぶりがきてしまいました。」(『ふしぎなでまえ』)
───ところで、デビュー作『おもちのきもち』は、出版にあたって一部改稿されたと聞きました。
後半部分を少し変えました。おもちが自分のことをはふはふと食べる場面、応募の絵のままでも可愛かったのですが、まるく固まってしまうまでの絵の数を一枚減らして、そのぶん絵が少し大きく展開できるようにしました。
『おもちのきもち』のラフ(手前)と最終的に描かれた場面は……。↓
ラフの左の絵を、前のページにまとめることで、右の絵を一枚に大きく展開。
カバー周りのカットを検討したときのスケッチ。左端の絵が背表紙に決定!(編集者の手元に残るカラーコピー)。
───わーっ。スケッチも仕上がりも両方たまらない可愛さです(笑)。
2003年に入賞した「はっきよい畑場所」は野菜たちが主人公。『おもちのきもち』のあと出版されていますが、かがくいさんとやりとりされる中で変えた部分はあったのですか。
「たまね錦(にしき)」に「にんじん若(わか)」、「きゅう竜(りゅう)」に「なすび里(さと)」。しこ名がおもしろい!
ラストだけ変えました。「だいこのあらし きりかえした〜」と、大根が「すい海」(すいか)を投げ飛ばすシーンで「おちるとわれてしまう〜 だいじょうぶか〜〜」というシーンがあります。
ここ、「われるのか、われてしまうのか!?」とドキドキする場面ですよね。応募時は、投げ飛ばされる絵と、他の野菜たちがはっしと受け止める絵が同じ見開きでした。でももったいないので、受け止める場面を次のページにしませんかとかがくいさんにご提案しました。
絵本として最初に描き、2003年に応募した『はっきよい畑場所』2008年出版。
この作品は、原画の紙自体に、背景の色を相当下塗りしてあって、その上からキャラクターの絵を描いているので「新しく描きなおすことはできない」とかがくいさんに最初に言われたんですね。たしかに、他のページから浮くようでは良くないし、どうしても無理だと言われたらこのままでいくしかないかと思っていました。
でも場面変更をご提案すると、かがくさんは「うーーーん」と悩んで、「たしかにそのほうがいいかもしれないから、同じように描けるかわからないけどやってみる」と言ってくださって、こうなりました。
───木目みたいな背景の模様は、かがくいさんがフリーハンドで塗った刷毛のあとだったのですね!
ほわっとしているのにずしっと重みがある存在感、奥行感は、手がかかっている絵だからこそですね。