───このシリーズは、触れ合いのあたたかさを肌感覚で感じられる絵本だと思います。おーなりさんの著書『だんだんおかあさんになっていく』(PHPエディターズ・グループ)の詩の中にある、「言葉よりもたしかなもの」という言葉が、この絵本に繋がっているように思いました。
おーなり:だっこしたり、触ったり、声を聞いたり、わらったり。あったかいとかつめたいとか、そういうことは、ほんとうは、人間にとって、言葉よりもたしかなんじゃないかと思うんです。わたしは、言葉の通じない赤ちゃんを育てているとき、そこを鍛え直されている気がしました。だから、初めて赤ちゃんに絵本を読んだとき、犬とかサルに文字を読んでるような、なんだか変な感じがしたんです。絵本にしても、葉っぱや水とおんなじ。読むというよりも物として面白がってるなあ、って。
───たしかに絵本を投げたりかじったり、物としても遊びますよね。
おーなり:そうなんです。だから、赤ちゃん絵本って、いるのかな? なんて、本を書く身なのに思ったりしていました。
でも、あるとき自分に熱が出て、本当に何もできない! というときに、絵本に助けられたことがあって。ダウンしているわたしのふとんに「あそんであそんで」と来る赤ちゃんに、これならできる、と絵本を読んでいたら、じーっとわたしの声を聞いていて。そのときに、「そうか、赤ちゃんは言葉や絵を楽しむというより、おかあさんを楽しんでいるんだ!」って。今更ですが(笑)思ったんです。赤ちゃん絵本って、言葉を話せない赤ちゃんと、心をやりとりする道具だったんだって。
───絵本で、おかあさんを楽しんでいる・・・。
おーなり:赤ちゃんのいるおかあさんは、日中、ふたりですごすことも多いと思うのですが、一人の目で子どもを見るってとても大変なことだと思うんです。この絵本が、そういうときに、助けになったらいいなと思います。
───おかあさんも赤ちゃんも、うれしい絵本ですね。
編集:このシリーズは、おかあさんにも人気で、読者ハガキでもいろいろなコメントをもらうんですよ。
さっき、絵本の赤ちゃんのモデルがご自身の息子さんておっしゃっていましたが、いただいたご意見で面白いなと思うのが、「うちの子に似てる」という声がたくさんあったことなんです。「表紙にうちの子どもと同じ子がいて、本を買いました」というおハガキもありました。
はた:ぼくも何人にも言われました。うちの息子の赤ちゃんのときにそっくりとか、うちの子と同じ顔!って。
───みんなが赤ちゃんに望むかわいさが、この絵本に詰まっているんですね! 最後に絵本ナビ読者にメッセージをお願いします。
おーなり:おかあさんと赤ちゃんが笑ってくれるといいな。おかあさんひとりで大変なときに、お手伝いの道具のひとつとして使ってもらえたらうれしいです。
はた:赤ちゃんといっぱいいっぱい遊んでほしい。赤ちゃんといっぱいいっぱい笑ってください。
───ありがとうございました!
●編集後記
シリーズ全体のデザインも、はたさんが手がけてられているのだそう。 どの巻も本当に可愛くて、裏表紙、背表紙や、カバー袖・・・、本の隅々まで見るのがとっても楽しい!
無防備な後姿がたまりません・・・!
もっともっとこの赤ちゃんの笑顔が見たくなってしまいますね。

インタビュー・文: 掛川晶子
撮影: 所靖子