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やなせたかし おとうとものがたり

やなせたかし おとうとものがたり(フレーベル館)

アンパンマンの作者やなせたかしが弟・千尋との思い出を綴った幼物語。

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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  まめつぶみたいにちっちゃな男の子のお話『まめまめくん』翻訳者 ふしみみさをさんインタビュー

みんなとちょっとちがう子の気持ち、わかります。

───「じぶんがものすごくちいさいことにきづいたのは、がっこうにいってからだった。」「がっこうではなにをするにも、まめまめくんはちいさすぎた。」……学校の場面では、まめまめくんは小さいばっかりにいろいろと不自由です。

ふつうにいすに座っても机には届かないし、給食のお皿やフォークは大きすぎるしね……。

───個人的な話ですが、うちの娘は平均身長よりかなり低いので、この本を読んだとき「まめまめくん」の気持ちがよくわかったそうです(笑)。
ふしみみさをさん自身は学校に入って「あれっ」と思ったことはありますか。
たとえば、自分は意外とこういうことができないんだ、と思い知らされて落ち込んだり……ということは?

うーん。私、学校がものすごくダメだったんですよね。苦手でしたね。

───集団行動がですか? それとも勉強が?

集団行動も、勉強も、運動も、かな(笑)。全然ダメでした。本当にさえなかったです。遅刻、忘れ物ばっかりだったし。
たとえば、夏休みが終わって始業式になると、必ず通信簿がどこかにいっちゃってる。急いでくつをはいて出ると、右足と左足がちがうくつをはいていっちゃう(笑)。もう学校がつらくて、その頃の夢は「ふつうの子どもになること」でした。

───えーっ。いまのふしみさんからは信じられません。

絵を描きたいんだけど、色鉛筆の箱をぱかっとあけると中身がゼロ。一本も入っていなくて、はぁ……(ため息)って。自分でも理由がよくわからないんです。どこかに落としてきちゃうのか、なくしてきちゃうのか。
だから私も、学校が居心地わるいまめまめくんの気持ちはわかるかもしれない(笑)。
学校の場面は、まわりの子たちの風景がセピア色になっちゃっていますよね。まめまめくんにとって遠い別の世界みたい。

───読む私たちもだんだん心配になってきます。学校にあがる前はあんなに生き生きしていたまめまめくんなのに。
先生も心配します。「かわいそうに、このこはしょうらいどうするんだろう?」

でも、まめまめくん自身はずっと変わらないでしょう? ちっちゃいから、学校ではちょっとできないこともあるけれど。だからといってそれでへこたれているわけでもないし、淡々と自分の好きなことを見つけて、好きな絵を描いている。一貫していますよね、まめまめくん自身は。

───お母さんは「まめまめくん」のことをどう思っていたのでしょう。
お母さんたちは出てきませんが……。

どうでしょうね? お母さんたちが出てきたらまたお話の雰囲気が変わるでしょうけどね。
でもまめまめくんの家族がいる気配はありますよね。「ママにちいさなちいさなふくをぬってもらった」とあるからきっといるんだなと。石けんや、鉛筆は、じっさいにふつうの大きさで家族に使われているものでしょうし。下駄箱のくつから、お母さんやお父さんはふつうの大きさの人間なんだろうなと想像できますね。黒ネコも飼われているんでしょうね。

───黒ネコの表情が……まめまめくんが乗っているバッタを食べちゃいそうでドキドキします(笑)。

黒ネコは、まめまめくんを見守っているようにも見えるし、バッタをねらっているみたいにも見えますね(笑)。

───やがて、そんなまめまめくんも大人になります。といっても、からだはやっぱりちいさいまま。

ジャングルみたいに見える庭にまめまめくんが自分でつくった「とびきりすてきな家」があって、お気に入りのミニトマトの木も家のそばに植えられています。ビンのふたで作られた腰掛けや、マッチ棒の家具の足も見えます。
仕事場へはおもちゃの車で行きます。テントウムシをペットの犬みたいにつれて歩いて、車にものせていきます。
まめまめくんの仕事場は、大きなくつがならぶ下駄箱の中。その中の白い箱がまめまめくんの仕事場です。

───しっかり大人になったまめまめくんの生活があるんですねえ。
「ま」のマークがかわいいです。

原書では「P」マークだったので、デザイナーさんに「ま」にしてくださいとお願いしました。

───そして最後のひとつ前の場面。「えっ。まめまめくんのしごとはなあに、だって? ふふふ、あてたらえらい。それはね……。」曲芸師、レーサー、探検家、海賊、登山家、絵描き、園芸職人。まめまめくんの絵がたくさん描いてありますが、一体何になったのでしょう?
原文はどんなふうに書かれていたのですか。

ここはちょっと翻訳を工夫したところです。「まめまめくんはなにになったとおもう? ぜったいわからないよ」という原文で、そのまま日本語にすると突き放されるように感じたので、もうちょっと身を乗り出すような訳にしたい、と思いました。なので、「ふふふ、あてたらえらい。」という表現を加えました。

───最後のページ、思わず「うわ〜、かっこいい!」と声が出てしまいました。
最後のページを見てふしみさんはどう思われましたか?

「ぴったりの仕事が見つかってよかったね」と思いました(笑)。

───さあ、大人になったまめまめくんは、何になったのか!? ぜひ絵本を読んでほしいです!

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ふしみみさを(伏見操)

  • 1970年埼玉県生まれ。上智大学仏文科卒。絵本を好きになったきっかけは、子どもの頃父親が、自分や近所の子を主人公にして漫画付きのお話をしてくれたこと。20歳の時、パリと南仏エクサンプロヴァンスに留学。洋書絵本卸会社、ラジオ番組制作会社、餃子店経営を経て、海外の絵本や児童書の翻訳、紹介につとめている。ペットは、顔、頭、目、耳、鼻、性格ともに悪い、忠義心のないラブラドール。
    おもな訳書に『うんちっち』(あすなろ書房)、『トラのじゅうたんになりたかったトラ』(岩波書店)、『どうぶつにふくをきせてはいけません』(朔北社)、「せんをたどって」シリーズ(講談社)、『トトシュとキンギョとまほうのじゅもん』(クレヨンハウス)、『ホラー横町13番地』(偕成社)、『おやすみ おやすみ』(岩波書店)、「ハムスターのビリー」シリーズ、『ゾウの家にやってきた赤アリ』『大スキ! 大キライ! でも、やっぱり…』(ともに文研出版)など多数。

作品紹介

まめまめくん
まめまめくんの試し読みができます!
文:デヴィッド・カリ
絵:セバスチャン・ムーラン
訳:ふしみ みさを
出版社:あすなろ書房
全ページためしよみ
年齢別絵本セット