●虫が苦手な人も楽しめる「昆虫編」
───「昆虫編」は、ページをめくると、リアルでありながら美しい姿の昆虫たちが登場して、とても楽しめました。
「昆虫編」はこの「美しいイラスト自然図鑑」の中で一番、編集に苦労した巻なんです。というのも私自身、昆虫が大の苦手で、昆虫の和名を調べる時には、画像検索結果が出るたびに悲鳴を上げました(苦笑)。でも、この図鑑じたいは昆虫の標本写真ではなく、適度にデフォルメされたイラストで昆虫の生き生きとした姿が描かれているので、昆虫が苦手な方も美しいイラスト集として見ていただけると思います。
───昆虫もほぼ原寸大で描かれていたり、サイズが違う場合は、シルエットで実際の大きさを表していたりと、図鑑としてのクオリティを維持しているところも見どころだと思いました。特にオススメのページはどこですか?
オススメと言っていいのかわかりませんが(笑)「ナナフシの一種」はとてもインパクトがあります。ここに載っているオーストラリアに棲息する巨大ナナフシは約30pにも達するものがいるそうで、イラストの2倍の大きさです。イラストでもかなりの大きさで描かれていますが、さらに2倍もあると想像すると……。
───現実では絶対に会いたくないと思ってしまいますね(笑)。
p40-41
●すべての巻をちょっとずつ楽しめる「動物編」
───最後は「動物編」。通常は分類学別に紹介されているのが一般的ですが、「美しいイラスト自然図鑑」シリーズでは、「北極や南極にいる生き物」や「温帯の森にいる生き物」など、生息地別に分かれて紹介されているのがとてもユニークだと思いました。
そうですね。これも、その動物のくらす環境に注目してほしいという著者の思いによるものです。そのため、同じセクションに哺乳類や魚類、鳥類などが入り混じって登場します。一般的な動物図鑑ではカニやタコと、ゾウやキリンが一冊にまとめられることはまずないんじゃないでしょうか。それに、この「美しいイラスト自然図鑑」シリーズは学術的な解説以外にも、著者のフィルターを通した雑学に近い解説が載っていますが、特にこの「動物編」は最も雑学的な内容が多いと思います。
───著者の人となりをより感じたい方にオススメですね。
はい。解説以外にも、絶滅危惧種である「トラ」や「チンパンジー」、絶滅寸前種の「クロサイ」や「モンクアザラシ」、そしてすでに野生では絶滅してしまった「シロオリックス」などが掲載されているのも特徴だと思います。このことについて著者は、「はじめに」の部分で、この図鑑を通して動物たちを保護したいとか、関心を持って尊重したいと思ってもらいたいと読者に語りかけています。
───小野さんのオススメを教えていただけますか?
「動物編」は、原書のシリーズの1冊目ということもあり、内容がかなり多岐に渡っているんです。「動物編」なのに、「昆虫」もいますし、「海の生き物」も載っている。ほかの巻とのつながりを確認してみるのも面白いと思います。
───この「美しいイラスト自然図鑑」シリーズは、シリーズ名にもあるように、イラストの美しさがとても目を惹く図鑑だと思います。とてもクラシカルな手法で描かれているので、古い時代のイラストのように感じますが、絵を描かれたエマニュエルさんはまだ若い方なんですよね。
はい。エマニュエルさんは、著者であるヴィルジニーさんと組んで『おやすみなさい』(アノニマ・スタジオ)という絵本を出版しています。その絵本では「美しいイラスト自然図鑑」シリーズとはまた違ったタッチの絵を描いているんです。
───とても才能豊かな方なんですね。
そうですね。「美しいイラスト自然図鑑」シリーズでは、古風な図鑑をイメージして、伝統的な手法をあえて使って描かれています。
───先程、フランスでは9冊ほどシリーズが出版されていると伺いました。もし、「美しいイラスト自然図鑑」シリーズで5冊目以降を出版することになったとしたら、どの巻を手掛けたいと思いますか?
まだ全ての内容に目を通していないので判断できませんが、「世界の驚異」は、個人的にはちょっと気になります。「七不思議」というと日本では怪談だと思われそうですし、今では簡単に検索したり実際に出かけたりできるので、あまり珍しいものでもなくなっているかもしれません。でも、かつての人々がどんな建物や現象に驚き、素晴らしいと思ったのか、さらにそれらが「美しいイラスト自然図鑑」シリーズに見合う古風なタッチでどのように描かれるのか、見てみたいですね。
───とてもロマンのある内容のような気がします。今日はいろいろなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。
この「美しいイラスト自然図鑑」シリーズで一番感じていただきたいことは、作者という他者の視点を通して自然を見なおすと、すでによく知っているはずの動物や植物に対しても、こんなに新しい発見や気づきがあるんだということです。それに、普段私たちの身近ににいる生き物だけではなく、見たこともないような世界各国の生き物も登場します。読んでいるだけで、世界中を旅した気分になれるのもオススメです。
───本で見ると、実際に本物を目にしたくなりますね。
はい、「観察が楽しくなる」というタイトルはそこからつけました。ここに描かれている光景は、世界のどこかにきっとある思うので、ぜひ探しに行っていただきたいです。たまたま行った旅行先で、「この木、見たことある!」と気づく瞬間もあるかもしれませんし、あるいは意外と家の近くで見つかるということもあると思います。図鑑という学習的な付き合い方だけでなく、いろいろ想像を膨らませながら楽しく読んでいただけると嬉しいです。
クリスマスや入学入園のギフトにもピッタリの「美しいイラスト自然図鑑」シリーズ。ぜひ、多くの方に楽しんでもらいたいと思います。
───ありがとうございます。
取材・文/木村春子
写真/所靖子
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