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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「あの日から」を生きる、すべての人へ。『あの日からの或る日の絵とことば 3.11と子どもの本の作家たち』 荒井良二さん、筒井大介さん インタビュー

子どもに対する、大人の役割

───荒井さんは震災後に被災地へ行かれていて、絵本作家ができることをどのように感じられましたか。

荒井:震災直後、山形から行く学生たちは泥かきや片付けを手伝っていて、僕もやろうかと言ったんだけど、違うことをやりましょうと言われて……絵を描いたりするワークショップを続けてきましたけど。
実際の現場に行くと「ワークショップなんかやっていいんだろうか」と思ったこともありますしね。実際やらなかったこともあるし……。でも子どもとか大人とか関係なく、おじいさんおばあさんや、赤ちゃん抱っこした若いお母さんとか、ワークショップをやるといろんな人が集まってくれて、全然知らない人同士の情報交換の場になったりして。それはそれでいい場だったのかなと思いました。

荒井:毎回ワークショップ後に「きょうはどうだった」と学生たちと話し合うんだけど、アート的な支援やこんな活動ってどうなんだろう?どんなことができるんだろう?と彼らに問いかけたりしながら……僕が話したんだよね。僕たちができるのは、朝になったら窓を開いたり、カーテンを開けたり。夜になって暗くなったら窓を閉めたり……それだけだよねって。そのままの言葉が『あさになったので まどをあけますよ』のタイトルになっているんだけど。

当時夜が怖いとか、暗いのが怖い、水に触れられない、お風呂に入れない、水の近くに行きたくないとか、そういう声をたくさん聞いて。じゃあ「朝」の連続の絵本だったらいいだろうと思ったんです。地球上ではつねにどこかしら朝で、朝を追っかけてるっていうことは生きていることの連続と一緒だから。

でも同時に朝の絵本を描いているときから、夜の絵本もいつか描きたいと思っていました。『きょうはそらにまるいつき』(偕成社)は、僕にとっては『あさになったので まどをあけますよ』と、対になる作品のつもりで描いたんです。朝と同じように夜も自然に来るものだし、受け入れないといけないんだろうな、と。
やっぱり夜があるから朝が輝くんだし、両方ある一日のリズムこそが、自然がおしえてくれることだから。何年後に描けるかわからないけど、夜をいつか描こう、と思って……、いつ出版したんだっけ。『きょうはそらにまるいつき』は2016年……震災の5年後か。

筒井:『あの日からの或る日の絵とことば』の中でも、牧野千穂さんが、絵本の海のシーンをどう描いたらいいのかわからなくなってしまったということを書いていますね。

荒井:僕も『あさになったので まどをあけますよ』を描いたとき、「海、描いていいかなあ」と躊躇しました。でも海は人間が誕生する前からあったものだから。自然に対するリスペクトをなくしちゃいけないと、そんな思いもありましたね。そのときも船を描きたかったんだよね。

───『あの日からの或る日の絵とことば』のカバーに描かれている絵は、ふたりの子どもと小さな犬とねこが……草原の中で舟に乗っているのでしょうか。

荒井:説明しろって言われたらできるのかもしれないしできないかもしれないけど……。舟は描きたかったですね。カバーでは一場面だけ切り取って描いたから、ふたりしか乗っていないけど、俯瞰したらこんな舟がいっぱいあるんだよ、きっと(笑)。

子どもって、表には出さないけれど、ぐるぐるエネルギーのかたまりみたいなものが日々体の中を回っていて、大人のように言葉で処理できないマグマが煮えたぎっていると思うんだよね。その出口や糸口は、スポーツだったり、誰かと出会うことだったりして、年齢を重ねながら少しずつ紐解かれていくのかもしれないけど……。震災から時が経って、表面的に復興したり風化したりという反面、内面的な傷は深まっていっているように感じることがあるんですよね。


きくちちきさんの絵(『あの日からの或る日の絵とことば』より)

荒井:2011年の震災直後、宮城から被災地に入っていったとき目にしたものを前に、「これって、いつまでかかるんだろう」という思いがありました。「日常に戻るまでいったいどれくらいかかるのかなあ……」「復興するって言ってるけどいつになるのかなあ……」と、どの場所に行っても思いました。

日本はがれきを片付けたりするのがわりと早いから、時が経てばきれいに片付けられていく部分はあるんですけど、もちろん地域差があってなかなか片付かないところもありましたけど……。
目に見えるところは徐々に片付いていっても、被災所の雰囲気には、「止まっている時間」を感じるし、気持ちの行き場のなさが感じられました。子どもたちは意外と元気だったふうに見えましたけど、大人が元気ないと、子どもはものすごく気をつかうし、大人の背中を見て励ますみたいなところがあるのかなあとぼんやり思ったり……。
いくつもの場所でワークショップをして、子どもたちは一見ふつうの元気な子に見えるのに、ひとりひとりの姿がなかなか見えてこないことがあるんだよね。地元に愛着を持って頑張っている彼らに、「自分の人生だから」「自分のことを考えるっていうのも復興なんだよ」って子どもたちに言いたかったけど……励ましたかったけど……言えなかったなあ……。

やっぱり遊びとかワークショップとかアートの支援は、即効性はないけど、時間がかかる傷や修復に対しては有効性があるのかなと。とにかく長い時間をかけて続けていくしかない、と、学生たちと何となく話したのを覚えています。


長谷川義史さんの絵(『あの日からの或る日の絵とことば』より)

荒井:僕たちができるのは、朝になったら窓を開けるくらいのこと。でも『あさになったので まどをあけますよ』は、被災された人のために作ったわけじゃないんです。最初はそんな意識が強かったですよ、現場に行くと。「何かしてあげたい、作ってあげたい」という変な意識が……。でも何回も行ったり来たりしている間に、いや、被災していない人に向けてこの本は発表するべきなんじゃないか、というふうに気持ちが変わっていきました。

筒井:『あの日からの或る日の絵とことば』もそうですね。自分は全然関係ないや、被災もしてないし、震災なんかもう8年も前で……と思っていても、もしかしたら大なり小なり受けている影響に気づいていない人もいるんじゃないかと思うんです。
この本には「あの日からを生きるすべての人へ」というコピーが付いていますが、被災された人たちのことを考えながらも、「被災していない」と思っているすべての人にも心の奥底に抱えているものがあるはずだ、そんな人たちに届いてほしい、という気持ちでこの本を作りました。

───荒井さんは、どうして自分が傷ついているのかわからないまま、どこか傷ついているけれど、それを口に出せないという経験はありますか……?

荒井:うん。だからこうやって絵を描いたり絵本を作ったりしているんだと思うんだけど。筒井くんから『あの日からの或る日の絵とことば』のことを聞いたときね、子どもに対する大人の役割として、こういう大きな出来事を言葉や絵にして残すのは、必要な作業だな、と僕は思いましたね。
子どもは、すぐ言葉にしないで、いろんな感情を持って生きていってもらいたいけれど。でも大人は、「言葉にして伝えていく」という方法論は使わなくちゃいけないと思いますね。

筒井:長期的な視点を持ちながら、言葉にする、考えるということは、大人はやりつづけていかなくちゃならないと。だから終わりが見えないですよね。

荒井:僕が震災翌年の2012年に出した『なんていいんだぼくのせかい』(集英社)なんて、このタイミングで出す本かって思うでしょう。2015年の『じゅんびはいいかい』(学研)、2016年の『そりゃあもう いいひだったよ』(小学館)も。
でも、この世の厳しい現実とか本当のことを伝えようとすると、子どもは不安ばかりになってしまって、「こういうことをするなよ。こんなことをすると、こうなるぞ」という立場で導こうとするばっかりじゃ、大人の役割としては何か足りないんじゃないかと思うんです。

反対に「人生、けっこういいものだよ」って、これからを担う子どもたち、これから大人になって子どもを生んで育てていくかもしれない子どもたちへの伝え方として、「人生、悪いもんばかりじゃないんだ」というメッセージと共に事実を伝えていくことも大人の役割だと思うんですよね。
だから、「気づいてほしいなあ」と思いながらいつも絵本を描いていますね。


荒井良二さんの絵本。左から『なんていいんだぼくのせかい』(集英社)、『じゅんびはいいかい』(学研)、『そりゃあもう いいひだったよ』(小学館)

筒井:荒井さんの思いや背景を何も知らずに、『あさになったので まどをあけますよ』を開いて味わって、それがすべてでいいと思うんですけど、2011年という発行年の奥付を見たときにハッとする人がいるかもしれない。

───あれから様々な土地で震災が起こっていますが、『あの日からの或る日の絵とことば』を読むと、32人それぞれの中に言葉があり記憶があり、「3.11という出来事」が心の中にあることを感じますよね。

筒井:自分は何も被害を被ってないと思っている人であっても、これだけの大きな出来事に、何かしらの影響を受けていてもおかしくないはずなのに、自覚がないまま、語らないまま心に沈殿していっている何かがあるとしたら……。このまま10年、20年経ってしまったらどうなるのか、沈黙したまま時とともに風化して、昔話になってしまってはいけないという危機感がありました。

───語らないまま、沈黙したままでは、そのことにどう向き合ったらいいかわからないということもありますよね……。

筒井:震災の当事者でないのなら口をつぐむしかないような、「話しづらさ」の雰囲気があるように感じています。でも、どんな出来事だって、1つの言葉、1つのものさしでは計りきれないですよね。どんな些細な、個人的な気持ちでも「あ、こんな風に感じているって言っていいんだ」と思ってほしいです。

───被災された方々のことを考えながら、直接被災していなくても語ってもいいし、沈黙してもいい……。何をしても間違っているということはないんですね。

荒井:間違いは、ないよね。だから何度も言うように、繰り返すしかない。いろんな大人のいろんな伝え方の例を見て、反省しながら、工夫しながら、個人の言葉で言いつづけていくしかないと思う。

筒井:「あの日」を体験した人たちがそれぞれの個人的な気持ち、体験を語り続けること。そしてそれを形にして伝えていくことが大切だと思います。『あの日からの或る日の絵とことば』の中に、自分自身の気持ちと重なることばやイメージを、少しでも見つけてもらえたら嬉しいです。

───ありがとうございました!



編集後記

取材前に『あの日からの或る日の絵とことば』の原稿を絵本ナビ編集部内で読みました。今まで読んだことがある絵本も、あらためて3.11前後の作家さんの思いをわずかでも知ると、また違って見えてきたり、作家さんの心の動きを感じたりすることができました。32人の絵本作家さんの「絵とことば」が詰まった本を、どうぞ一度手にとってみてくださいね。


飯館村で見た風景から着想を得た、町田尚子さんの絵本『ネコヅメのよる』(左)と、2011年に出版された牧野千穂さんの絵本『うきわねこ』(右)。あらためて絵をあじわいたくなりました。

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文・構成: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所 靖子



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荒井良二(アライリョウジ)

  • 1956年山形県生まれ。『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったので まどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を、『きょうはそらにまるいつき』で日本絵本賞大賞を受賞するほか、2005年には日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど国内外で高い評価を得る。また、NHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを担当、「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」芸術監督に就任するなど、その活動の幅を広げている。

筒井大介(ツツイダイスケ)

  • 1978年大阪府生まれ。絵本編集者。担当した絵本に『うちゅうたまご』(荒井良二)、『ブラッキンダー』(スズキコージ)、『オオカミがとぶひ』『オレときいろ』(ミロコマチコ)、『ネコヅメのよる』(町田尚子)、『えとえとがっせん』(石黒亜矢子)、『やましたくんはしゃべらない』(作・山下賢二 絵・中田いくみ)他多数。水曜えほん塾、 nowaki 絵本ワークショップ主宰。
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