───知らないことがたくさんあって、毎日が「はじめて」であふれている。明日に楽しみなことがあると思うと嬉しくて仕方がない。「えらい」って言われたくてもう一度聞きかえす。 そんなしろうさぎの子の様子からは、たくさんの「しあわせ」が伝わってきます。 石井さんの考える、小さな子どもにとっての「しあわせ」。例えばどんなことだと思われますか?
愛してくれるひとがいること、安心して暮らせる場所があることです。
───例えば今晩早く寝れば、明日が早く来る・・・と思っていたり。お母さんからの質問に「ほんとうの答え」と「うその答え」を用意していたり。この絵本の中には、ささいな行動だけれど、びっくりするくらい可愛らしい仕種や会話がたくさん出てきます。こんな発想はどこから思いつかれるのでしょうか?
わたしが子どもだったころのこと、娘が小さかったころのこと、それからいまこころのなかに浮かぶこと、それらでできています。
───石井さんが、「子どもって可愛いなあ」と思う行動、仕種を教えていただけますか?
たったいま目にしたこと、思ったことがそのまま言葉になって出てくるとき、かわいいなあと思います。
───『しろうさぎとりんごの木』の酒井さんの絵を初めてご覧になった時の感想をお願いします!
ずいぶん待って、担当のOさんの「ご無沙汰しました。朗報です」という第一声を聞いたとき、ラフができたんだと思ったのですが、そしたら、なんと完成原画が仕上がっていて……感動以外のなにものでもありません。ああ、この子こそ、しろうさぎだ。おかあさんだ。しろうさぎの家はそうそうこれこれ。そんなふうでした。
───完成して、改めてどんな絵本になったと感じられましたか?
酒井さんの絵に対する感想と同じになってしまいますが、格調高く愛らしい絵本だと思います。
───好きな場面はどこですか?
眠れなくて、ベッドでもぞもぞしている場面。
おかあさんに抱かれてりんごの木を見上げるしろうさぎのおしり。
───最後に酒井駒子さんへのメッセージをお願いします!
ちいさなうさぎのささやかだけれど――ささやかだからこそ全き幸福な時間を、あますことなく描いてくださって、ほんとうにありがとう。
───酒井さんにとって、この作品の制作のスタートは石井さんのテキストを読まれた時だと思います。往復書簡でも書かれていましたが、改めて石井さんの書かれたお話を読まれた時の感想を教えていただけますか?
言葉に独特の調子があって、それがお話の甘やかな世界と相まって素敵だな、と思いました。
───テキストを読まれてから、酒井さんの中でどのように消化されて作品に仕上げていくのでしょうか。
また、作品のために取材をされたりするのでしょうか?
ぼんやりと、だんだんと描きはじめていきながらイメージが固まっていきます。
りんごの木を見に行ったりもしました。
───主人公はしろうさぎの女の子!どんな子にしようと思われましたか?
小さい女の子が「〇〇ちゃん(自分のこと)かわいいでしょー」と言いながら、くるくるまわってくれた事があります。
まだほんのおちびさんが、にこにこしながら言うのでちっともイヤな感じがせず、その全肯定さに見惚れました。
周りの人に大事にされながら、くるくるまわっていたその小さな子を思いながら描きました。
貴重なしろうさぎの子のスケッチを見せていただきました!
───石井さんが「ほかに考えられないくらいぴったり」だとおっしゃっていたのがしろうさぎの家。
この家や庭を描かれる時に、具体的にイメージした場所はありますか?
子どもの頃、算数教室に通っていました。その教室の玄関のまえに青りんごの木があっ て、その木の感じや玄関のことを何となく思いだしました。