───この作品の中で、しろうさぎの親子とともに大きな存在感を放っているりんごの木。特に、まだ青い実のなっているりんごが見開きいっぱいに描かれている場面は、爽やかで力強く、だけど甘酸っぱい香りのするような輝きに圧倒されます。
りんごの葉って、灰色が入ったような緑で不思議な色です。写真もたくさん撮りましたが、描くとなかなか絵にならなくって難しかったです。
───都会のお話ではなく、田舎の明るい空の下のお話、ということもあるのでしょうか。りんごの木だけでなく、お母さんの佇まいや、全体の雰囲気が力強いように感じました。この作品のために、素材や描き方を変えている部分、あるいは意識されていることはありましたか?
フォーカスがぴったり合っているというよりは、ざっくりとした全体の空気や光のようなものを描きたいと思いました。
ボール紙にアクリルガッシュで描いています。
───だっこされている場面、ジャムのついたパンを食べている場面・・・しろうさぎの子の「可愛い!」という瞬間をあげていくときりがありません。人間の子どもにくらべてうさぎの子の方が感情を表現するのが難しいような気がしてしまうのですが、不思議と雰囲気が細やかに伝わってくるのです。
このしろうさぎの子に表情や感情をどうやってつけているのか、ちょっとだけ秘密やヒントを教えていただけると嬉しいです。
うーん、どうでしょうか。表情をつけすぎないことでしょうか。
───色を塗り重ねられた深みのある絵の横に、文章と一緒に添えられている線描きの絵がまた魅力的です。物語の随所に登場する小物などがさらっと描かれていて、この絵本の世界がより近くに感じます。構成のイメージは最初から決められていたのでしょうか?また描かれている素材も教えていただけますか? (「うんととおくまで」の絵もたまらないですね!)

───子どもの好きな仕種をあげるとしたら?
ぼんやりしているところ。
───この絵本では、本物のうさぎを参考にされているのでしょうか?または、ぬいぐるみのうさぎでしょうか?
この絵本でのうさぎは、ぬいぐるみより本物のうさぎや人間の子どもを参考にしました。
───出来上がった作品をご覧になって、改めてどんな絵本になったと感じられましたか?
大事に守られながら少しずつ世界と出会っていく、幸せな頃を描けているといいなぁと思います。
───好きな場面はどこですか?
しろうさぎが、わくわくして眠れないところ。
───最後に石井睦美さんへのメッセージをお願いします!
最後の終わり方が大好きです!
●「石井睦美さん×酒井駒子さん 往復書簡」もあわせてお楽しみください!
冒頭でもご紹介しましたが、絵本ナビでは『しろうさぎとりんごの木』が完成するまでの一ヶ月間、石井睦美さんから酒井駒子さんへ、酒井駒子さんから石井睦美さんへの「往復書簡」を連載でお送りしてきました。

2013.09.10

2013.09.12

2013.09.17

2013.09.19

2013.09.24

2013.09.26

2013.10.01

2013.10.03

インタビュー: 磯崎園子 (絵本ナビ編集長)