
今年はどれを選ぶ?課題図書紹介 低学年『かあさんのしっぽっぽ』

夏の宿題のお悩みでよく耳にする「読書感想文」。
まず最初の難関は、どの本で書くかという本選びではないでしょうか。
今回紹介するのは、いそがしいお母さんと娘の結衣とのすれちがいとふれあいを温かくユーモラスにえがいたお話。一番身近な家族がテーマです。読みながら、自分の家族のことが思い浮かんで、いろいろな気持ちがわきあがってくるのが感じられるかも?
●かあさんのこわーいこわいおこり顔。もしかしたらかあさんはキツネなのかも?!
「かあさんのしっぽっぽ」
作:村中 李衣
絵:藤原 ヒロコ
出版社:BL出版
働くおかあさんと、まだおかあさんに甘えたい年齢の娘とのやりとり。すれ違ったり、反発したり、心を通わせたり…。
和菓子屋「はごろも堂」を切り盛りする結衣のかあさんは朝から晩まで大忙し。お店の目玉はふっくらした塩大福と豆大福。大なべでねりおわったあんこを、ゴムべらでボウルにうつしこむかあさんの姿はたくましい!けれども、娘の結衣が学校から帰ってきて「ねぇ、かあさん」と声をかけても返事がないし、きらいなお風呂そうじは頼まれるし、夕飯も一人で温めて食べ、まだ二年生の結衣はさみしくて仕方がありません。寝る前に、学校の発表会でやることになった「しろぎつねのおんがえし」の民話を読んでいると、キツネに飲みこまれて体をのっとられてしまったおかみさんが出てきました。そのお話を読んだ後、お風呂そうじのことでかあさんにこわい顔でおこられた結衣は、本物のかあさんはきっとキツネに食べられてしまって、目の前のかあさんはキツネが化けているに違いないと思い込みます。そしてなんとかキツネのしっぽをつかもうとするのですが…。
物語と現実の間で揺れる子どもの心情がよく表されていて、ぐっとひきこまれます。大人でもそうなのですから、子ども達が読んだらもっとひきこまれて、結衣と一緒に結衣のかあさんがキツネなのではないかと、ハラハラすることでしょう。
さて、結衣とかあさんは、離れかけた心をどんな風に通い合わせるのでしょうか?その通わせ方には、ことばを超えた深い母子のつながりを感じると同時に、かあさんがもつ大きな愛情に圧倒されてしまいました。絵本から読みものへの架け橋となる低学年向けシリーズ「おはなしいちばん星」の第5弾です。
●気になる選定理由は・・・?
「お母さんはいつも忙しく働いています。私のことを全然見てくれていないと感じる女の子が主人公。心の中は不安や不満でいっぱいです。お母さんを思う女の子の心を軸に、親子のつながりや家庭の温かさを描いています。」
親子で一緒に読んで、感想を交換しあうのもさまざまな発見がありそうですね。
●お話を書かれたのは・・・
作者の村中李衣さんは、大学で教鞭をとる傍ら、絵本を介したコミュニケーションの可能性を探っておられる児童文学作家さん。子どもたちや大学生、お年寄りの方などさまざまな年齢の方とあらゆる場所で読みあいを続けていらっしゃいます。そんな村中さんならではの、子どもの心の動きや気持ちの揺れが丁寧に描かれた本書は、読めば読むほど深みが増す作品です。大人が読んだら、お母さんの気持ちの方に共感してしまうかもしれません。
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