しばわんこの和の行事えほん しばわんこの和の行事えほん しばわんこの和の行事えほんの試し読みができます!
絵・文: 川浦 良枝  出版社: 白泉社 白泉社の特集ページがあります!
お正月、節分、夏祭り...季節に縁のある遊びに触れながら、親子で楽しめる日本の行事をご紹介。

連載

岩崎書店 えほんができるまで 作家インタビュー

岩崎書店様

2018/03/22

【連載】『たぬきの花よめ道中』最上一平さんインタビュー

【連載】『たぬきの花よめ道中』最上一平さんインタビュー

森や川がほとんどなく、コンクリートで覆われた都会にも、野生動物が生息していることを知っていますか?
例えば、ネズミ、ハクビシン、そして、たぬき……。緑豊かな山奥から、「大、大、大、ヘンピ」な大都会へ嫁入りすることになった、たぬきと、その一家のドタバタ珍道中を描いた『たぬきの花よめ道中』(岩崎書店)が出版されました。
文章を担当した最上一平さんに、20年近く温めてきたおはなしが生まれたきっかけや、「町田尚子さんに、どうしてもこの作品の絵を描いてほしかった」という、町田さんの作品との出会いについて伺いました。

たぬきの花よめ道中 たぬきの花よめ道中」 作:最上 一平
絵:町田尚子
出版社:岩崎書店

山奥に暮らすたぬきが、大都会に住むたぬきのもとへお嫁入り。人間に化けたたぬきたちは、初めて電車やレストランを経験します。花嫁道中は目を回すようなことばかり!

●「都会に生息するたぬき」をニュースで見たことが、すべてのはじまりでした。
最上さんが、今回のおはなしの構想を考えたのが、今から約20年前。きっかけは、子どもの数が減って閉校になった都会の小学校のニュースでした。
最上:私は山形県の山の中で生まれたのですが、ずいぶん昔から過疎の町でした。だから、過疎化というものは、都会には縁のないものだとばかり思っていました。なので、閉校のニュースを見て、東京にも過疎があるのかとビックリ。さらにそれから十数年経って、今度は東京のど真ん中、皇居にたぬきの一族が住んでいるというニュースを見ました。そこから、人間にとって都会でも、たぬきなど野生動物側からすると、過疎化が進む辺鄙なところという見方もできるかも……と思ったんです。この2つが自分の中で合わさって、『たぬきの花よめ道中』の土台が生まれました。
作者の最上一平さん。
都会への嫁入りが決まった、花嫁の「あさぎり姉さん」は、親せきと一緒に人間の姿に化けて、一路都会へ向かいます。

電車、高層ビル、エレベーター、レストラン。すべてはじめて尽くし。

「これが電車か。こりゃあ たまらん。目がまわる」
「まったく、山も川もなくて、みなさん どうやって 方向が わかるもんですかな」
「『ハンバーグ』とは、どんな具のはいった のみものでしょう?」


たぬきたちの都会への感想は、とてもユニークで、思わずクスっと笑いがこみ上げます。
こんなドタバタ道中には、最上さんのお父さんのエピソードがベースにあるそうです。
最上:私の父は、田舎者の代表みたいな人なんですけど、上京するたびに、いろいろなエピソードを落としてくれるんです。降りたい駅に止まらないに急行電車に乗ってしまって、降り損ねたなんてことはしょっちゅう。いつだったか、ケーキ屋さんだと思って入ったお店が、お寿司屋さんのチェーンだったなんてことがありました。
父のように、はじめて都会にやってきたたぬきたちから見たら、都会は変な事ばかり。きっと、いろいろ言い合いながら、にぎやかに都会を歩き回るんだろうなと思って書きました。
「大、大、大、ヘンピ」な都会にやってくるたぬきたちを、ユーモアたっぷりに描くのは、町田尚子さん。「怪談えほん」シリーズ(岩崎書店)や『ネコヅメのよる』(WAVE出版)などの、妖怪や動物のドキッとする姿を得意とする、今注目の絵本作家さんです。
最上さんは、絵詞作家の内田麟太郎さんを通じて、町田尚子さんの絵と出会ったと言います。
最上:実は、内田麟太郎さんがすぐ近くに住んでいて、月1回は声をかけてもらって、話をしたり、最近手がけた作品を見せてもらったりしていたんです。『おばけにょうぼう』(イースト・プレス)を内田さんから見せてもらったのも、ちょうどそんな風に内田さんと話をしているときでした。
町田さんの描く、濃厚で抒情的な雰囲気の絵に一目ぼれした最上さんは、『たぬきの花よめ道中』をぜひ、町田さんに描いてほしいと、切望したそうです。
最上:でも、たぬきたちのドタバタしたユーモラスな姿は今までの町田さんの作風とはずいぶん違っていて、町田さんが本当に引き受けてくれるのか不安でした。だから、編集者さんを通じて、快諾のお返事をいただいたときは、すごく嬉しかったですね。
当初、町田さんは、都会の街並みや電車、人物を多数描くことについて心配があり、引き受けることをためらっていたそうです。しかし、最上さんの熱烈なラブコールと、編集者さんの後押しがあり、絵を担当することを決心されたと言います。
それでも、最初は人物を描くことに抵抗があったのか、ラフ画の段階では都会に降り立つたぬきたちが、人間に変身した姿ではなく、仮装しただけの姿だったというエピソードもあったとか……。
町田さんのラフ画を見せていただきました。
本番では、ちゃんと人間に変身したたぬきたちが登場します。
このほかにも、絵をよーく見ると、町田尚子さんファンにはおなじみの、ネコの姿や、町田さんの愛猫「白木」の姿がそこここに描き込まれています。
よく見ると、駅名に「白木」の文字が……。
最上:こういう遊び心は私も大好き! 今回、やや控えめにしてくれたそうなんですが、私としては、もっとたくさん描いてもらっても良かったのにな〜と思っています(笑)。
町田さんからラフ画が届くたびに、文章を読み直し、より絵とマッチするように推敲を重ねていったという最上さん。作中に登場する秋田県などに伝わる民謡「長持歌」は、特に思い入れの深い一節なのだそうです。
子どもの頃、近所で結婚式があると、花嫁道具を積んだトラックが、町の中を走っていくんです。そのとき流れるのが、決まって「長持歌」でした。子ども心に、あの唄を耳にすると、「ああ、花嫁さんになる人がいるんだ」と心が浮きたつ感じがしました。そういう、めでたい感じが絵本を通じて伝わってくれたら嬉しいですね。
岩崎書店編集者の秋山将一さん(左)と最上一平さん。
インタビュー中、常に町田さんの絵を絶賛していた最上さん。「どの絵が一番好きですか?」という質問に、「どの絵もすばらしくて、ひとつを選ぶことができません……」と心底困っていた姿がとても印象的でした。
最上:私から町田さんに絵のことでお願いすることはほとんどなかったのですが、町田さんから上がってきたラフ画で、悩んだ場面が一場面ありました。それは、ラストの花嫁道中の場面。町田さんは2つの違ったイメージのラフを描いてくれたんです。ひとつは、あさぎり姉さんの横顔が大きく描かれたもの。愁いを帯びている表情が清々しくて、本当に美しかった……。でも、最終的にはどちらかを選ばなければならず、編集者と町田さんにお任せして、今の絵本に使われている絵でお願いしました。

美しいタヌキの横顔が、どんな絵になったのか……。ぜひ、絵本を手に取って確かめてみてください。
今年の春は『たぬきの花よめ道中』を持って、ご家族で夜桜見物を楽しんで見るのも良いですね。
もしかしたら、すぐそばにいるたぬきたちに出会えるかも……?
【イベント】『たぬきの花よめ道中』原画展
●ジュンク堂書店池袋本店
日時:2018年3月17(土)〜4月13日(金)電話番号 03-5956-6111
住所:〒171-0022
東京都豊島区南池袋2-15-5
営業時間:10:00〜22:00(2月より閉店時間変更)
定休日:3月無休 4月無休

●HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE(日比谷コテージ)
日時:2018年4月17日(火)〜5月6日(日)
住所:〒100-0006
東京都千代田区有楽町1-2-2 日比谷シャンテ3F
TEL:未定(2018年2月28日時点)
営業時間:11:00〜20:00

●絵本のこたち
日時:2018年5月11日(金)〜5月22日(火)
住所:〒612-8241 京都府京都市伏見区横大路下三栖辻堂町76
電話番号:075-202-2698
営業時間:1:00?18:00
定休日:水・木曜日


※期間内【2018年3月22日から2018年4月18日まで】にご回答いただいた絵本ナビメンバーの方全員に、 絵本ナビのショッピングでご利用いただける、絵本ナビポイント50ポイントをプレゼントいたします。
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