立派な木の箱にブラウン管とアンテナ、何だかとっても懐かしい風貌のそれは「家具調テレビ」。
昭和の茶の間で大活躍、「ゴールデンタイム」になると家族が集まりにぎやかな時間を過ごしたのでございます。
ところが時代は移り、気がつけばテレビは廃品置き場に。まわりにはガラクタばかり。途方にくれていると、背中に大きなぜんまいのついているねこのぬいぐるみに出会います。
やがて、ブラウン管を抜き取られ、とうとう空っぽの木の箱になってしまったテレビはいよいよ元気がなくなります。
そんな時、じしゃくのクレーンが真上にやってきて・・・「もうだめだ!」
いえいえ、あなたは「家具調テレビ」。木で出来ているんですよ。
ふと気がつくと、ぜんまいがなくなって動かなくなったねこのぬいぐるみが倒れているではありませんか!
「家具調テレビ」とガラクタ仲間たちの交流をユーモラスに描いたこの物語。
空っぽになったテレビはその後どのような運命をたどったのでしょうか。
舞台が廃品置き場、そして登場するのは捨てられてきたガラクタばかり。ところが、あたたかな灯りに照らされたそのノスタルジックな風景は、美しささえ感じ、心に深く残ります。さらにキャラクターたちは、重厚な趣をどこかに残しながらも愛嬌がたっぷり。魅力的なのです。
それもそのはず。この絵本、第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門「優秀賞」ほか各賞受賞をした短編アニメーション「ゴールデンタイム」から誕生した作品なのだそう。
アニメ「ゴールデンタイム」の他にNHK BSのキャラクター「ななみちゃん」のキャラクターデザイン等を手がけている稲葉卓也さんが改めて絵を描きおろし、絵本作家長谷川義史さんが、愛すべきテレビの運命を独特な語り口調の文章で表現しているのです。
しっかりと作られた世界観を、絵本でじっくりゆっくりと味わうことができるのは何とも贅沢なこと。年齢を問わずに楽しめる1冊、読んだ後に生まれてくる感想が聞いてみたくなりますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む