世の中があっと驚くような秘密を、あなただけが知っていたとしたら、どうしますか? それは、どんなにワクワクすることでしょう。
優等生でいることにも、家の中でがまんしてばかりなのも、うんざり! もうすぐ12歳になるクローディアは家出をすることにしました。相棒は弟のジェイミー。彼はお金をためる驚くべき才能があるのです。
家出したあとの隠れ場所にクローディアが選んだのは、なんと、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館です! ふたりは守衛の目をごまかしながら、スリルに満ちた生活を始めます――。
想像してみてください。大きな美術館が自分の部屋になるなんて、まるで夢のよう。本の巻頭についているメトロポリタン美術館の見取り図を見ると、ワクワクします。国宝級の絵や展示品も見放題です。とは言っても、隠れ住んでいるふたりには、苦労がたくさんあります。常に守衛さんに見つからないように気をつけなくてはなりませんし、食べ物を手に入れるのも一苦労。おふろや洗濯も難題です。次々と降りかかってくる予想外のできごとを、ふたりはどうやって切り抜けていくのでしょうか?
そして、物語の最大の謎、美術館に展示された美しい天使の彫像は、ミケランジェロ作かそうでないか――大人の専門家がよってたかって調べてわからないことが、はたして子どもにわかるのでしょうか? 彫像に魅了されたクローディアは、真正面から謎に取り組み、調べはじめます。知らないことを学ぶって、すごく楽しくて、しんどいことなんですよね。この過程は、まるでミステリーを読んでいるみたいにスリリング。そして、彼女の行動力と努力に、大きな拍手をおくりたくなります。情熱と創造への心からの敬意は、時や年齢を超えて人の気持ちをつなげるのだなと思いました。
この本を読んだら、「クローディアみたいに夢中になって調べたい!」と心から思える謎を、探したくなるにちがいありません。とびっきりの謎と冒険が大好きなすべての少年少女たちに、ぜひ読んでもらいたい1冊です。
(光森優子 編集者・ライター)
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